第62話:タウ覚醒
この間更新してから間が長くて本当に申し訳ございません。これからはなるべく、間を短くできるように、頑張ります。
尻尾を切られて苦痛の表情のゾプナと怒りの形相のタウが、にらみ合いを始めた。俺はそんなタウを見て初めて気が付いた。タウの武器のコンバットナイフの刃が淡い赤色の光を放ちながら、長さが刀と同等ぐらいまで伸びていたのだ。そして、その刀身からはゾプナの血が垂れていた。それを振り払ってタウは刀を正面に構えた。それを合図にゾプナが飛び出した。ゾプナの爪を刀で受け止め、払いのけて逆に胸部分を切りつける。ゾプナは咄嗟にくちばしをタウの頭めがけて振り下ろした。タウは振り下ろした刀をそのまま引き上げて、刃の反対部分でくちばしを強打した。片腕で。そして、今の強打でゾプナの下顎は砕けてしまった。これは何も強度が低かったわけではない。タウの力が強すぎたのだ。ゾプナは悲鳴を上げながら後に数歩下がった。タウはそれを嘲笑の笑みで眺めた。
「ははは、何それ?まさに、さっきまでの勢いはどこへってやつじゃない?そんなんでよく私にアデルに触るななんて命令が出きたね。アデルへの愛の力とやらはどこへ?」
この場にタウの嘲りの笑いが響いた。そして、それをかき消すほどのゾプナの叫びが響く。同時にどす黒いオーラが広がり、ゾプナの体が元通りになっていった。俺を含む全員に驚きの表情が浮かぶ中、さらにタウの高笑いが響く。
「------あぁ~おかしい。だから、それでどうするのって感じなんだよね。まさか回復しまくれば、私に勝てるとか思っちゃってる?はは、傑作!」
タウが喋っている間にもゾプナは叫び、回復する。いつの間にか切られた尻尾も復活していた。その光景の中、気づいたのは俺だけだろうか。心なしかゾプナの体が少し大きくなっている気がするのだ。そして、一際大きな叫びがあがった。どうやら、終わったようだ。
「あ、終わった?いやぁ~、長かったね♪オラ、待ちくたびれたぞ!・・・なんちって?あはは」
タウはなぜかすごく機嫌がよさそうだった。そのテンションはこの場には明らかに異質なものだった。そのタウの向こうでゾプナが血走った目で四肢を広げ、いつでもいけるという雰囲気を出していた。タウは静かに左手を上げて人差し指をクイクイと動かしてゾプナを誘い、ゾプナもそれに応じて飛び出した。タウの刀とゾプナの爪が幾度となく激しくぶつかり合う。それは他の誰も割ってはいることができないものだった。小柄なタウがその身を生かしてゾプナの巨体に傷を付けていくがどれも致命傷までいかずすぐに回復されてしまって、いつまでも勝負がつかず機嫌がよかったタウもさすがにまたキレてきた。
「・・・ちっ、いいかげんめんどくなってきた・・・・もう殺そう、すぐ殺そう」
ゾプナが飛び出す。今までで一番の速さだ。そして、前足を突き出し爪がタウに刺さるかというところで突然、その足が吹き飛んだ。立ちっ放しのタウの刀には先ほどよりも大量の血が垂れていた。
「なっ・・・・!?」
誰もが驚愕した。だって、そうだろう?俺たちにはタウが刀を振った瞬間が見えなかったのだ。そのタウの口元には薄い笑み。残った三本の足で立つゾプナの目には、俺たちと同じような驚愕と生き物全てが持っている本能からの恐怖がにじみ出ていた。その様子を見たタウは、
「はっ?何その目。今頃、勝てないことが分かった?でも、ざんねぇ~ん・・・・お前の死は確定事項なんだよね。じゃ、バイバ~イ!」
「やっやめろぉ~~~!!!!」
遅すぎた。俺が止める間もなく、刃がゾプナの・・・いや、麻耶の心臓の位置に突き立てられ、ゾプナは地面に倒れた。そして、羽毛が抜けていく感じに黒い羽が飛んでいき、そこには仰向けに倒れている麻耶の姿が・・・・。
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