第５９話：刀の覚醒
「もう一度言います・・・彼に手出しはさせません」
静かに・・しかし、はっきりとした意思が伝わってくる言葉だった。それに対してタウは、
「・・・何？私の邪魔しないでくれる？」
と、怒りをギリギリ我慢している感じだ。タウは今動きを止めている、攻撃するなら今しかない。唖然としていて動けなかった体に力を加えようとした瞬間、タウと麻耶が同時に俺の方を向いて、
「「動かないで！！」」
それから俺はなぜか動けなくなった。肉体的ではなく、精神的にストップがかかってしまったのだ。そして、二人はまたにらみ合いに戻ってしまった。
「どうしても邪魔をするの？」
「えぇ・・・！」
「なら・・・・死ね！！」
消えた。誰もがそう思った瞬間、麻耶は軽くうめいてすばやく後に下がった。その時には麻耶が立っていた場所にタウの逆手にしたナイフが深々と突き刺さっていた。麻耶が避けたと見るやすぐさま殴るようなポーズで追撃した。対して麻耶は、バック宙で回避しながらタウの顎を蹴り上げた。
「ぅぐはっ！？・・・このぉぉ！！」
突然、タウの怒りに呼応するかのようにナイフが赤黒い輝きを放ちだした。麻耶の目にも今まで以上の警戒の色が宿る。そして、今まで以上の殺気を放ちながらタウが動き出した。それと同時に麻耶も飛び出した。
「邪魔しないでよ！！」
「邪魔なのはあなたの方です」
麻耶が普段とは違う本心全開のような話し方をするのにも、場違いだが驚きを隠せない。俺の目の前では、普通の人にはまるで見えないだろう高速ラッシュの戦いが行われていた。しかしなぜ、麻耶がこんな力を持っているのかがまるでわからない。それに、あの小刀。俺は今まであんなものを見たことがない。果たして、最初からか、それとも最近手に入れたものなのか。でも、俺が一番気になるのは、あの小刀の力がだんだんと強くなっていることだ。そのことが俺をもっと不安にさせる。
「あんた・・・・アデルの何なの！？どうして、私の邪魔なんかするの！？」
タウの叫びと同時に二人が一度大きく距離を取った。タウの質問に麻耶は答えない。いや、答えたくとも答えられないような表情をしている。それを読み取ったのか、タウが不敵な笑みを浮かべた。
「あれぇ？もしかして、答えられない？あはは、そっかぁ。答えられないんだぁ」
「・・・・っ」
「なら・・・邪魔すんなぁ！！」
再び、タウの猛攻が始まった。しかし、ペースが崩れた麻耶は防戦一方になってしまう。戦場に金属同士が激しくぶつかり合う音とタウの嘲笑だけが響く。
「ほら！ほらほら！！何か言いなさいよ！」
「・・・私が・・・」
ずっと押し黙っていた麻耶が口を開いた。その間もタウの攻撃は続く。麻耶はその一つ一つを受け止めたり、受け流しながら続きを口にする。
「私があなたの邪魔を、彼を守る理由は、あなたを倒した後に言います・・！」
麻耶の言葉とともに小刀が強い光を放ち始めた。誰もが唖然とする中、麻耶は先ほどのタウ並みの猛攻を始めた。麻耶の力が強くなっているのか、タウの体のあちこちに小さな傷ができ始めた。このままいけば勝てる、誰もがそう思った。
「くっ・・・この力・・は！？」
「そろそろ終わりにしましょう」
麻耶が小刀を一閃。タウはガードしたが吹き飛ばされて、岩壁に叩きつけられた。
「かはっ！」
「終わりです・・！」
麻耶は、跳躍して動けないタウの胸に向けて弓を引くようにして小刀を引き、一気に突き出した。後少しで刺さる、そんなときだった。
ドックン・・・・！
「あっ・・・！？！？」
麻耶の手が止まった。タウも驚いているようだ。麻耶は小声で「どうして・・・？」と呟きながら、小刀を持っている右手を見たそこには、
「なに・・・これ・・・？」
俺や他のみんなも思わず呟いてしまう。
「何だ・・あれ？」
麻耶の右手。そこには、小刀の柄から根が生えて手と同化してしまっていた。そして、驚きの中、手の甲に赤い目が開眼した。
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