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第54話:新たなる敵



試合が終わって、見ていた俺たちはすぐに雅人の元に駆け寄った。


「やったわねっ!雅人君」


「すごいです・・・・」


「やったな・・・・」


「すごいじゃん!」


「見直しましたわ」


香奈、麻耶、俺、竜二、アリシアが駆け寄ると同時に口々に雅人を褒めた。雅人は、頭を掻いて照れくさそうにしながら、


「いやぁ~、そんなことはないよ。これもティアちゃんの特訓のお陰だよ」


みんながティアの方を見た。ティアは一瞬ビクッとなって、俺の方を見てきた。俺はとりあえず、頷いた。すると、ティアは頬をほんのちょっぴり赤くしながら腕を組んで雅人の前に立って、


「ふんっ、まだまだね」


「そ・・そう?」


雅人は残念そうな顔をしたが、すぐに


「でもま、よくできました。褒めてあげる・・・・ちょっと頭、出しなさい」


「?」


雅人は言われた通りにした。すると、ティアは雅人の頭の上に手を置いて、軽く撫でた。顔を上げた雅人はとても嬉しそうな顔だった。それを見たティアはすぐに下を向いてしまって、その表情を伺うことはできないが、俺たちは暖かい眼差しで見つめていた。と、下を向いていたティアの肩が小刻みに揺れだした。


「お・・おい、どうした?」


心配になってすぐに声をかけて、顔を持ち上げてティアの表情を見ると・・・・・何というか自分の世界に入っている感じ?だった。眼はトロンとしていて、口は笑っている?と、中々ヤバイ状況だ。俺はすぐに両肩を掴んで、激しく揺さぶった。


「おい!ティア!何考えてるんだ!?」


「・・・ほへっ!?・・・・・お兄ちゃん?」


ようやく向こうから帰ってきたか。正気に戻った顔を見て、そう思った。下手したら帰ってこないかと思ったからな。他のみんなはまだ何が起こっていたのかよく理解していないようだった。意を決した様子の雅人が聞いてきた。


「ティア・・ちゃん。今、え~っと・・何考えていたの?」


「いやぁ~、ちょっとお兄ちゃんに言うお願いを考えていたシュミレーティングの」


「うっ!?」


さっきのティアの表情を見たときの悪寒の正体はこれだったのか!すっかり忘れていた。俺のおかしな反応に目ざとく香奈やアリシア、麻耶がつっこんできた。


「お願いって何のことかな?」


「詳しく聞きたいですわ、お兄様」


「わ・・私も知りたい・・・・です」


俺が返事に困っていると、ティアが空気を読まずに俺に抱きついてきて、三人に対して上の者の眼を向けた。そう例えば、有利な立場・・・・・を見せ付けるような眼だ。その眼を前に三人は露骨に態度を変えた。


「うっ!?」


「なっ!?」


「っ!?」


俺にはその反応がよく理解できなかった、こんなのいつものことだと思ったからだし。そして何より、そのお願いとやらのほうが恐ろしかったからだ。三人に対するティアの精神攻撃は止まらない。


「雅人がノアに勝ったら、私のお願い何でも・・・聞いてくれるの」


「なん・・・」


「で・・」


「も」


三人で驚きの言葉をみごとに分担していた。三人の顔に絶望や敗北感などの感情がにじみ出し始めた。青ざめた顔を見回した後、ティアはまたトロンとした眼になって、


「何にしよっかなぁ~」


と、とても幸せそうな顔になって、何かを言おうとした瞬間


「アデル様ぁー!」


一人の兵隊が大慌てで走ってきた。ティアはすぐに俺から離れて真面目な顔になって、直立した。この切り替えの早さには尊敬の念を覚えざるをえない。


「どうした?」


「ブグパツーロ周辺にいた一個中隊(歩兵約200人)が壊滅・・いたしました」


「なんだと?」


200人なんて数こちらに連絡が来る前に壊滅に追い込むなんて、向こうはそれなりの数だろう。


「敵の数は?」


俺はてっきり200近くは最低でもいるだろうと思っていた。だが、兵の報告はそれを見事に打ち砕いてくれた。


「ひ・・・・一人です」

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