第50話:休息の時間
更新が遅れて大変申し訳ございません。
ティアの特訓が始まって今日でちょうど一週間がたった。最初の頃は、ティアにいいように遊ばれていた雅人も最近はマシになってきていた。この一週間で雅人はすっかりとボロボロになってしまった(擦り傷や捻挫、打撲etc)が・・。そんな日常が今日も訓練場で繰り返されていた。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁっ」
「そう・・ここで」
「はぁっ!」
ガキィィィィィン!!
ティアと雅人の組み手。もちろん、自己の武器を使ってだ。二人は、止まったままの格好で数秒何かを語り合うように見つめあった後、ゆっくり離れて対峙した。その様子を少しはなれた長いすに座って見ているものたちがいた。竜二・アデル・アリシア・香奈・麻耶の五人だ。竜二は退屈そうに欠伸をしながら、俺は二人の成長具合に感心しながら、アリシアは優雅に紅茶を飲みながらもやはり退屈そうに、香奈は「すごいすごぉ~い!」などと拍手喝采、麻耶はときおり俺をチラ見してきていた。俺の顔に何かついているのか?・・
「今日はこれでおしまい!」
「ありがとうございました」
訓練終了の合図と同時に雅人は礼をした。ティアはそれを確認するとすぐにこちらに向かって全力疾走。到着と同時に俺にダイブ。危うく椅子から落ちるところだった。雅人も汗を拭きながら到着。
「ちょっとティアさん!!」
「なにー?アリシアお・ね・ぇ・ちゃん」
「うっ・・・コホン、と・・とりあえずあまりお兄様にベタベタしないでください」
ティアの突撃にアリシアが怒鳴った。対してティアはどこか挑戦めいた視線を向けた。アリシアはすこし怯んだ顔になりながらも、さわるなと注意した。これには竜二以外の全員が目を点にした。それに気づいたアリシアは慌てて「つ・・つまり、人前であまりしないでくださいと言うだけであって」と早口に言った。これを聞いたティアは悪魔のような微笑を浮かべて、
「わかったぁ~!」
「「「あっ!」」」
「うっ・・・・」
さらに抱きつくという暴挙に出た。アリシア・香奈・麻耶の三人は軽い悲鳴めいた声を上げ、俺は三人のティアに対するさまざまな視線にだじろいだ。竜二はまた欠伸、雅人に至ってはいつの間にか眠りについていた。ティアは今だ挑戦的な笑みを三人に向けていた。俺はその間にティアの拘束を解こうとしたが、残念ながら無理だった。そんな俺の様子に気づいたのか竜二がティアを俺から引き離してこういった。
「そんなに争うんだったら間を取ってうちがもらうよ?」
「「「なっ!!??」」」「・・・・・っ!?」
アリシア・香奈・ティアは驚愕のあまり口をパクパク。麻耶は顔を真っ赤にして俯いてしまった。俺は何か身の危険を感じて急いでみんなとの距離を取った。
「竜二っ!お前何を言っている!?」
「そっ・・・そうですわ、竜二さん!」
「りゅ・・竜二君って、そっち系・・?」
「未知の領域です・・・・」
「なにおー!お兄ちゃんは渡さないぞ!」
「「「こらこら、最後の・・・」」」
俺たちが驚いているのとは別のことを反論したティアに同時に「それはおかしい」発言が飛ぶ。対する竜二はキョトンとしていた顔を微笑に変え軽く「あははは」と笑った。
「冗談だよ、冗談!みんな必死になりすぎだって」
「変なこと言うな・・・」
とりあえず、俺を含む全員がほっと胸を撫で下ろした。そして訓練場からの帰り道。竜二が俺の隣にやってきて、肘で俺をつつきながら、
「ほんっと、アデルってモテモテだねぇ~。くぅ~、うらやましいぃ~!」
「なっ・・・馬鹿なことを言うな」
「あっははは!ごめんごめんって」
夕日の映える帰り道。竜二の笑い声が響いた。
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