第46話:何か悪いこと言ったか?
戦いは、指揮官のイオタが敗れたことにより敵軍の士気が下がったことによって、こちらの勝利に終わった。戦いが終わって、ノアと雅人がアデルたちの元にやって来た。そんな二人を竜二は、先ほどの雰囲気など跡形もなく消した笑顔で迎えた。
「やっ、お久しぶり。お二人方」
「竜二!?」
「竜二さんがどうしてここに?」
当然、驚くだろうな・・・・。俺は内心苦笑した。自分でも最初は信じられなかったからだった。ノアの必然的に思う質問に対して、竜二は
「いやぁ、強い魔力を感じたから見にきたら、アデルがやられそうだったんでね」
「それは本当ですか、アデル様!?」
「あ・・・あぁ、ちょっと油断した・・・というか・・・」
「怪我はないの、誠?」
「あぁ、治癒魔法を使ったから大丈夫だ」
「そうかぁ、よかった・・」
「すまない、心配させて・・」
今のままで香奈たちを守り続けることが本当にできるのか?・・・・。雅人たちに謝りながら、アデルは内心こう思った。と、ここでまるでアデルの心を読んだかのように竜二がこういった。
「大丈夫だよ」
「・・・・あぁ」
まぁ、今のところは大丈夫だろう。だが、竜二のことは正体が分かってない以上完全に信用するのはやめたほうがいいだろうな。ルナやカルヴィナのことがあるし・・・。
アデルがこう考えているとき、竜二は、さすがにまだ完全には信用してくれない・・か・・・。まぁ、もう少し時間を掛ければ大丈夫だろうな。
と、ここでノアが兵が揃ったことを告げた。
「アデル様、そろそろ帰りませんか?ここはもう大丈夫なようですし・・・」
「あぁ、そうだな。よし、帰るぞ!」
「竜二はどうするの?」
「ん~・・、今回は一緒に行くよ。いいよね、アデル?」
「あぁ、いいぞ」
「わぁーい」
そして、アデルたち一行プラス一名はエルム城に帰りだした。
ーーーーエルム城ーーーー
「香奈様、麻耶様。アデル様たちが帰ってきましたよ!」
「えっ、ほんと!?」
「香奈ちゃん、待ってぇ!」
アデルたちが帰ってきたことを聞いた瞬間、香奈は速攻で部屋を飛び出した。麻耶も急いでそれに続いた。二人を見送ったメイドさんは、「・・・・青春ねぇ・・」と呟きながら仕事に戻った。
「お帰りなさいませ、アデル様、雅人様」
「あぁ、ただいま」「ただ今戻りました」
「お邪魔しまぁ~す」
「アデル様、こちらの方は?」
「俺の友達だ、雅人たちと同じように接してやってくれ」
「大岩竜二です、よろしく」
「かしこまりました」
竜二の軽い紹介がすんだので、俺は城の扉を開けようと手を伸ばした。すると、
バァァン!
扉が勢いよく開け放たれて、向こうから香奈が飛び出してきて、そのまま俺に抱きついてきた。抱きつかれた俺はもちろん、残りの雅人・ノア・竜二たちは唖然とした。後から麻耶もやってきたが、反応は皆一緒だった。すなわち・・・・・
何だこの状況は・・・・・と
しかも香奈は目元に薄く涙を浮かべているではないか。全員何がなんだかさっぱりだった。とりあえず俺は落ち着いて香奈の頭に手を置いて事情を聞いた。
「何があったんだ?」
「誠のコップが割れたときに、何か感じて、ね・・それで・・不安になって・・」
「・・・ふっ・・・そんなことか、深刻なことかと思ったぞ」
「そっ、そんなことって何よ!これでも心配したんだからね!」
香奈は本格的に涙目になって叫んだ。そのとき俺は後ろから刺さる不思議な視線を感じて振り向くと、雅人たちが、じーーーっと俺を見ていた。そして、その目たちはこう言っていた。
「香奈ちゃん可哀想・・」「アデル様、女心が分かってませんね」「なぁ~かしたx2」
「うっ!?・・・」
俺そんなに悪いことをしたのか?麻耶に目で問いかけた。彼女は、ゆっくりと首を立てに振った。まさか、麻耶にまで言われるとは思わなかった。事情はよく飲み込めなかったが、俺は香奈をどうにかしようと、軽く抱きしめながら頭を撫でてて、
「俺は・・大丈夫・・・大丈夫だから・・・」
「・・・・うん」
これで一件落着。香奈は泣きやんで笑顔になり、俺たちは城の中に入っていた。
一方、急速にエルム城に向かってくる一つの影があった。一人の少女だった。髪は水色の髪をツインテールにして、格好は少し違うが簡単に言えば忍者だった。彼女はあと少しで見えてくるであろう、エルム城の方を見つめて、こう呟いた。
「もうちょっとでお兄ちゃんに会える・・・。あぁ~、早く会いたいなぁ」
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