第37話:香奈の帰還
「香奈、止めろ!」
(くそ、あいつはまだか・・・・・?)
アデルは、竜二がデルタを倒せば、香奈が元に戻るというのを信じていた。その時間を稼いではいるが、まだいっこうに戻る気配がない。もう何度目の交錯だったろうか、急に香奈が頭を抱えて苦しみだした。
「あぅっ・・・・あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「香奈!?」
俺は急いで香奈に近づいて、両肩をつかんだ。さっきまで濁った感じの目が、徐々にもとの澄んだ目に戻ってきた。俺は、安堵した。
「あぁぁ・・・・あ?・・・誠?」
「香奈!元に戻ったんだな、よかった!」
香奈が元に戻ったのを確認した俺は、嬉しさのあまり香奈を思いっきり抱きしめてしまった。一方、当の香奈は洗脳されていたころの記憶がないのか、少々戸惑っているようだ。
「え?誠・・・何?」
「なんでもない」
俺は少々はにかんだ感じで答えた。そんなところに竜二がやって来た。
「ふふ、元に戻ったんだね?」
「あぁ。助けてくれてありがとう」
「いやいや、困ったときはお互い様だよ?」
竜二は、クスクス笑いながら答えた。香奈はこいつは誰だという顔で、俺を見てく来ていた。そういえば、初めてだったな。
「こいつは大岩竜二。こいつのおかげでお前を助けることができた」
「え、そうなの?それは、ありがとう。大岩・・さん?」
「竜二でいいよ。それにうちは当然のことをしただけ」
「何か礼がしたい、俺たちのところに一度きてくれないか?」
助けてもらったのだから、お礼をするのは当然だ。しかし、竜二は少しの間考えて、
「いや、うちは今忙しいからまた今度にする」
「・・・・そうか、ならまたの機会に」
「うん。んじゃ、そろそろ行くよ」
「もう行くのか?」
「うん。それじゃ、二人ともお幸せに・・・・」
別れの言葉を告げて、竜二はどこかに行ってしまった。最後の言葉は何を意図して言ったのかは、分からないが、よけいなこと言いやがって・・・・・。俺がこんなことを考えている間に、香奈は顔を真っ赤にさせていた。
「あ・・・あの人何言ってるんだろうね、あは・・はははは・・・・・・」
香奈・・・・顔が引きつってるぞ・・・・・・。まぁ、もちろんこの言葉は口には出さないが。とここで、戦いが終わったのか雅人とノアがやって来た。
「香奈ちゃん、元に戻ったんだね!」
「よかったですね」
「うん。なんだかよくわからないけど・・・・」
「覚えてないの?」
「うん・・・・」
どうやら本当に覚えてないようだな。人を殺してたなんて言えるか・・・・。
「そろそろ帰るぞ」
「うん」「そうだね」「はい」
香奈を取り戻してとりあえずこの件は、かたづいたと言えるだろう。俺たちは、帰路についた。一方、デビルカウンターのアジト・ヤマトリアでは。
ーーーーヤマトリアーーーー
「そうか、デルタは死んだか」
「はい、オメガ様」
この声の主は、新しい登場人物だ。顔には、白と黒のカラーリングがされた仮面をしていて、素顔は見れない。
「シーデスティのことは?」
「芽吹くまで気づくことはないかと・・・・」
「だろうな」
「次は誰を出すおつもりで?」
「次は、ジータとイータだ」
「あの姉妹をですか?」
「そうだ」
「わかりました」
「くくく、今度も乗り切れるかな」
ーーーーエルム城ーーーー
「おかえりなさい、香奈さん」
ついて早々、香奈に麻耶が抱きついた。香奈は少々困惑ぎみに、麻耶の頭を優しく撫でながら、ただいまと言っていた。
「本当によかったね、誠」
「あぁ、そうだな」
そう、本当によかったのだが、アデルの中では、消えた竜二のことが気にかかっていた。いったい何者なのだろうか。そんなことを考えていると、雅人が、
「そうだ。せっかく香奈ちゃんが帰ってきたんだから、今日はお祝いしよう!」
「え!?いいよ、そんなことしなくても」
「いいよね、誠?」
こいつ、ここで俺に振りやがって・・・・・でも、今はいいか。
「いいだろう」
「やったぁ!」
そして、夜は大いに盛り上がった。雅人一人が・・・・だが。
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