第33話:捕らわれの香奈
香奈がさらわれた後、誠をどうにか連れ帰ったが、誠はすぐに自分の部屋に引きこもってしまった。その誠の部屋の前で、雅人が立ち尽くしている。
「誠・・・・・・・」
そんな雅人の肩にノアが手を置いて、
「今は、そっとしておきましょう」
「・・・・・・・はい」
二人は、そっとドアから離れた。部屋の中で誠は、ベットに倒れこんで香奈のことを考えていた。初めて出会った思い出、そして、今までのことを・・・。
そのころ、さらわれた香奈は、
ーーーーデビルカウンターのアジトーーーー
「それでこの娘をどうするつもりだ?」
「はい。ここは、デルタの出番かと・・・・」
(・・・・誰・・・?)
意識が覚醒してきた香奈の耳に、誰かの話し声が聞こえてきた。
「う・・・・」
「気が付きましたか?」
目を開けて、始めに見えたのは、香奈をさらったシータだった。隣にも誰かいるが、もちろん知らない。
「ここは・・・・・?」
「ここは我々のアジト、ヤマトリアです」
「どうして、私を・・・」
「それはですね」
「おい、その辺にしておけ、シータ」
「はっ、申し訳ございません。オメガ様」
さらった理由を話そうとすると、隣にいる人物がそれを止めた。名前は、オメガというらしい。今の感じでは、シータよりも偉いようだと香奈は思った。
(なんとしても、帰らなくちゃ・・・・)
動こうとする香奈を止めるものがある。香奈がはりつけにされている十字架だ。
(誠・・・・助けてよ・・・・)
香奈は、心の中で必死に誠に助けを求め続けた。
しばらくして、この場にひとりの青年が現れた。
「オメガ様、ただ今参りました」
「デルタか・・・。話は聞いているな?」
「はい、お任せを」
その青年、デルタが香奈に近づいてきた。香奈は、恐怖の目で見つめた。
(な・・・何をするき・・・)
「そう怯えることはない。すぐにアデルのところに帰してあげるよ」
「えっ・・・」
帰れる、それは香奈がずっと思っていたことだった。デルタは、香奈の目を正面から見つめた。その瞬間、デルタの目が光った。
「あ・・・・」
香奈の心がみるみる闇に覆われていった。それと同時に心のなかにある誠のことも闇に消えていく。
(だめ!消えないでよ、誠ぉ!待っ・・・・・)
香奈の正気も失われて、無表情になった。
「くくく、さぁ、君の好きなアデルを殺しに行こうか」
束縛が解かれた、香奈はデルタに向かって、
「はい・・・・・デルタ様」
ただ、無表情にそう答えた。
「それでは、オメガ様。行って参ります」
デルタが香奈を連れて行こうとすると、
「待て」
と、突然オメガが止めた。
「どういたしました?」
「その娘にコレを飲ませよ」
そう言って、オメガが渡したのは、一つの木の実のようなものだった。
「コレは?」
「我の魔力が入っている」
「おぉ、それはすごい」
ゴクッ
香奈にそれを飲ませて、今度こそデルタたちは出て行った。
シータはオメガに、
「オメガ様、あれは本当に・・・」
「くくくく、きっと面白いことになるぞ」
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