第29話:墓参り
翌朝、起きると香奈、他二名は、食堂に呼ばれた。そこには、すでに誠がおり、食事もほとんど終わっていた。誠は、香奈たちに気づいて、声をかけた。
「起きたか」
「早いのね、誠」
「ふぁ〜・・・誠、おはよぉ〜」
「おはようございます」
雅人は、少々寝ぼけているようだ。すかさず香奈が、「もう!しっかりしなさいよ」と頭を叩いた。
「雅人、今日の訓練はノアにしてもらえ」
「誠は?」
「俺は、用事がある。香奈たちはどうする?」
「ん〜・・・・誠の用事ってなんなの?」
「・・・・母さんの墓参りだ」
「そう・・・なんだ」
聞いちゃいけなかったかな・・・。香奈は少し後悔した。しかし、誠は大して気にした様子もなく
「あぁ。それでどうする?」
「・・・・付いて行っちゃだめかな?」
「・・・・べつにかまわん」
「ありがとう・・・・麻耶ちゃんはどうする?」
「わ・・・・私も一緒に行きます」
「なら、朝食のあとに行こう」
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「ねぇ?誠のお母さんってどんな人だったの?」
「・・・・やさしい人だった。いつも俺たち兄弟に優しくしてくれたよ」
誠の母、ロザリア・エルム(通称・ロザリー)は、誰にでも優しく、皆に好かれていた。だから、ロザリーを失った、国民の悲しみは計り知れないものだった。
「そう・なんだ」
「着いたぞ」
ーーーーロザリーの墓の前ーーーー
お墓に着いた三人はまず、手を合わせた。誠は、帰国や向こうでのことの軽い報告。香奈と麻耶は、自己紹介を無言で行った。
「写真みたいなのはないの?」
「写真はないが」
そういいながら、誠は手のひらを上に向けて二人に突き出した。すると、手のひらの上に立体映像の感じで、ロザリーが現れた。
「きれいな人・・・・」
「とても優しそうな感じです・・・・」
二人は、ロザリーの姿を見て第一印象を口にした。誠は、軽く微笑んでいるだけだった。
ロザリーの姿を消して、三人は帰路についた。
そのころ、城では雅人がノアから訓練を受けていた。
ーーーーエルム城ーーーー
ノアの武器は、サーベルだった。ノアと雅人はお互いの武器を構え、対峙している。ノアが一番最初の誠との訓練もように、試しに戦闘をやってみましょうと言ったからである。と、ここで雅人が先に仕掛けた。
「行きます!」
ロングカリバを一閃、ノアはそれを軽く受け流して、鋭い突きを放った。間一髪、雅人は避けることができたが、服が少し切れてしまった。
「ちっ」
「まだすこし甘いですね。次はこちらから行きます」
軽い評価と共に、ノアが突進してきた。雅人は、右に軽く飛んで避け、そのまま反撃しようとしたが・・・
「っ!?」
ノアがサーベルを切り返し、横向きに薙ぎ払ってきた。カキィィィィン!左手のショートカリバで、受け止めたが勢いは殺しきれず、数メートル飛んで着地。
「受け止めましたか」
「はぁ・・はぁ・・・誠との特訓のおかげですよ」
「なら、これはどうですか?」
また、あの突進。雅人は、さっきのように横にくるのかと思ったが、違った。雅人の前に来ると、サーベルを軽く引いて
「アバタリアアタック」
ノアの攻撃を一言で言うなら、北斗百列拳(?)といったところだ。無数の残像をともなった攻撃。雅人の全身を切り刻んだ。まぁ、訓練だから全て大した怪我ではない。これも相手がノアだったからだ。雅人は、さっきよりも吹っ飛んだ。
「くっ・・・・」
「今日はこれくらいにしましょう。あまりやりすぎるとアデル様に怒られます」
雅人は立ち上がって、ノアに一礼した。
「はい、ありがとうございました」
この後雅人は、ノアの指揮する第一部隊の訓練を見学した。内容は、雅人の予想以上だった。
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