第27話:帰国
ーーーーアクセルーーーー
「きゃぁぁぁぁ!」「うわぁぁぁぁぁ!」
スタッ・トンッ・ドシャッ
ノアと誠は、静かに。雅人は、途中で誠に腕を離され、着地に失敗。香奈は、誠にしがみついていたので、雅人のようにはならずにすんだ。
「ま・・・誠ぉ〜、何で手ぇ離すんだよ」
「特訓したお前なら大丈夫だと思ったのだが・・・」
「離すなら言ってよぉ・・・・ケホッケホッ」
特訓する前ならともかく、今の雅人なら大丈夫だとおもったのだがな・・。雅人の件がかたずいたと思い、誠は香奈に、
「一つ聞いていいか?」
「ん・・・・何?」
「いつまで引っ付いている?」
「っ!?」
そう、さっきからずっと香奈が、誠に引っ付いたままだったのだ。指摘されて、香奈は顔を真っ赤にして、すぐに離れた。
「ごっ・・・ごめん、誠!」
「誠・・・ここは、アクセルのどの辺なの?」
誠は、少し離れたところにある山を指差して、
「あの山をこえた向こう側に、エルム帝国・・・・俺の故郷がある」
「そうなんだ・・」
「・・・行くか」
「えっ・・・ちょっと、誠」
「何だ?」
「もう日が落ちそうなんだから、今日は野宿しましょう?」
「その必要はない。俺が全員一気に連れていってやる」
「どうやって・・・?」
「そんなの転移魔法に決まっている」
「えぇ〜!普通一人か二人が限界でしょう??」
「クスクス・・・普通はな」
香奈には、信じられないのだろう、疑惑に満ちた目でこちらを見ている。その反応が、面白くてしかたがなかった。そして、詠唱を始めようとして誠は、何かに気づいて穴を見上げた。
「どうしたの、誠?」
「何か来るぞ」
「な・・何が?」
(この気配・・・人間か)
そして、穴の中から出てきたのは・・・・・・麻耶だった。雅人と香奈は、目の前のことを信じられないようだ。
「きゃぁぁぁぁ!!」
ガシッ
誠が麻耶をお姫様抱っこの形でキャッチ。麻耶は、無事だ。
「大丈夫か?」
「あぅあぅ・・・私は・・」
「どうしてここに、麻耶ちゃんがいるの?」
「大方、リストレインに巻き込まれたのだろう。まぁ、あそこにいた理由は知らんがな」
誠は、麻耶を下ろした。麻耶は、下ろされてからようやく抱っこされていたことに気づいたようだ。顔を真っ赤にして、またあぅあぅと混乱しているようだった。
「落ち着いて麻耶ちゃん」
「・・・はい、すみませんでした」
「どうしてあそこにいたの?」
「この間、みなさんが屋上で話しているのを聞いて・・・それで、気になって・・・」
「そう・・なんだ」
「どうする、誠?」
雅人が口を開いた。
「連れていくしかないだろう」
「よかったね、麻耶ちゃん」
「えっ・・・あ、はい」
「着いたら全て話す」
「じゃ、行くぞ・・・・・オルストレイン」
全員が瞬時に転移した。効果音を付けるとしたら、シュンッあたりだろうか。
ーーーーエルム帝国、城前ーーーー
「へぇ〜・・・・これが・・」
「大きい・・・・」
「・・・・・・」
「そう、エルム城です」
そこで、ここにきて初めてノアが口を開いた。そして、ノアは城門にある受付(?)に言って、アデルが帰ってきたことを告げた。門番は、驚いて一瞬固まったが、すぐに門を開いた。
「行くぞ」
アデルにつづいて、残りのみんなも門をくぐった。突然の帰国なので、みなで歓迎というわけではないが、数名の兵隊が一列に並んで、頭を垂れていた。そして、
「お帰りなさいませ、アデル様」
先に入っていたノアが、挨拶をした。
「今、帰った」
雅人と香奈と麻耶は、兵隊の態度や城のすごさに唖然とし続けていた。
「それでは、城の中にまいりましょう」
ーーーー城の中ーーーー
「へぇ〜、中も結構すごいじゃん」
「そうだねぇ」
「・・・すごいです」
三人が口々に感想を言っている。誠とノアは、先先進んでいて、誠が角を曲がると、
「あっ!お兄様っ!」
突然、妹のアリシアが飛びついてきた。雅人はもちろんだが、香奈と麻耶はものすごく驚いているようで、声も出ない。
「アッ・・・アリシア?」
「お帰りなさいませ、お兄様」
「ふっ・・・ただいま、アリシア」
そういって、誠はアリシアの頭を撫でた。
「おっ・・・お兄様ぁぁぁぁ!!??」
香奈がすごい勢いで叫んだ。雅人は、固まったまま。麻耶に関しては、またあぅあぅ言っている。
「ん?あぁ、紹介しよう。俺の妹、アリシア・エルムだ」
「初めまして、皆様。アリシア・エルムです」
そして、優雅に一礼した。
「アリシア、親父は?」
「お兄様がくるのを首を長くして、待っています」
「じゃ・・行くか」
そして、一同は誠の父、ジャック・エルムのいる部屋に入った。
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