第25話:香奈の想い
あの日から、誠と一言も話をしていないなぁと、香奈は自室で思っていた。
(魔王の息子・・・・か)
(最近の誠は、前と正反対だし、雅人君ともこそこそ何かしてるし)
「はぁ・・・・・」
香奈は、最近誠と雅人が二人っきりで、何かをしているのを知っていた。けど、何も聞かなかった。聞けなかった、聞いたらまた何かを知ってしまいそうで、怖かったのだ。
(やっぱり、ちゃんと聞かなきゃだめだよね)
「明日二人にきいてみよう」
そして、決意と共に香奈は眠りについた。
ーーーー学校ーーーー
翌日、香奈はいつもより少しはやくきて、二人を待っていた。さきに現れたのは、雅人だった。香奈は、意を決して話しかけた。
「ねぇ、雅人君。ちょっといい?」
「ん、何?香奈ちゃん」
ここで、軽く深呼吸。
「最近、誠と何をしてるの?」
「えっ・・・んとねぇ・・・」
雅人は返事に困った。正直に答えるべきか・・・・。話したら話したで、ついてきそうだしなぁ。危ないから、それは避けないと。
「あ・・新しいゲームの話だよ」
「・・・あのアデルとかいう誠と?」
「うっ・・・・」
「・・・もう、正直に言えよ。雅人」
「「!?」」
誠の声がしたきがしたので、振り向くと案の定、そこには誠が立っていた。
「いいの、誠?」
「あぁ、どうせいつかは、知ることになるだろうからな」
「・・・わかった」
「それで、なんなの?」
「僕も誠の故郷、アクセルに行く」
「えっ・・・・」
「香奈ちゃんも聞いたんじゃないかな?二つの世界の融合の話」
(まさか・・・・)
「そ・・それと、何の関係があるのよ?」
「僕もその手伝いをしたいんだ、だから、向こうでやっていけるように鍛えてもらってたんだ」
「本当なの・・・・誠?」
「本当だ」
香奈は、唖然とした。まさか、二人の間でそのような話がされていたなんて、思っていなかったのだ。
(誠と離れるのは・・・)
「わ・・・私も」
キンコンカンコーン
そこで、時間切れを表すかのようにチャイムが鳴って、教師が入ってきた。
「時間か・・・」
「・・・・放課後話すわ」
「わかった」「わかったよ」
そして、放課後、場所は屋上。
「それで、さっきの続きなんだけど、さっき言いかけたことって何なの?」
「私も・・・・連れていってほしいの」
「えっ?」
「私も誠の手伝いがしたいの!」
「だめだ」
そこで、さっきからずっと黙っていた誠が口を開いた。
「どうして!?」
「・・・・・・・」
「ねぇ・・・どうしてよ」
香奈の声は、少し泣きかけの感じだ。誠は、黙ってしまった。ただ、まっすぐに香奈の目を見つめているだけだ。
「・・・香奈ちゃん。わかってあげてよ」
「う・・・うぅ・・・」
とうとう我慢ができなくなったのか、泣き出してしまった。その香奈をそっと誠が、抱きしめた。そして、囁いた。
「分かってくれ。お前は・・お前だけは、無事でいてほしいんだ」
「でも・・・私・・は、誠と離れたくないの」
「頼む・・・」
(誠・・・・)
そして、そのまま香奈は泣き続けた。誠は黙って、抱きしめ。雅人は、二人を見守っていた。
その様子を屋上の戸の隙間から、見ている人影があった・・・・・委員長の神宮麻耶だ。
(何なの?誠さんたちは、何の話をしているの?)
ふと、誠と目が合った気がした。麻耶は、驚いてすぐに階段を駆け下りた。
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