第19話:苦戦
先にしかけてきたのは、ハリマグロのほうだった。どうやらこいつはインスのように地面にもぐったりはせず、空気中を海のように泳ぐようだ。魚類ならではの、力強い泳ぎの突進だった。
「・・・・・・なっ!?」
(速い!?・・・・けど、攻撃が直線的だ)
先端に槍のような針を持っているので、攻撃は突進系だと思っていたが、その速さが予想外だったので、避けるのでいっぱいだった。
「誠!?」
「大丈夫だ!心配せずに、隠れてろ!」
そう、香奈だけは守らなくてはいけないのだ。そのためには、目の前の敵に集中しなくてはいけないと、改めて気を引き締めた。
そうこう思案している間にもう一撃きた。今度は、少し余裕を持って避けれた。
「あまいんだよ!時雨、炎の舞・火炎弾だ!」
攻撃を避けられ、もう一度攻撃しようと振り返ったマグロに時雨の攻撃が強襲する。しかし、先ほどから動かなかった亀が、突然動いた。亀はマグロの前に動いて、甲羅をこちらに向けたと思うと、時雨の攻撃をすべて防いでしまった。
「なっ!?・・・まじかよ」
次は亀の攻撃だった。甲羅に手足をしまうと、高速で回転しながら突っ込んできた。それに、亀の攻撃はマグロと違って、直線的ではないのがやっかいだった。
誠は、避けきれずに、わき腹を甲羅のトゲで切られてしまった。
「くっ!?・・・攻守完璧ってか?え?」
(せっかく記憶も力も戻ったってのに、肝心なときに・・・)
切られたわき腹を抑えながら、時雨に指示を出す。
「時雨、炎の舞飛翔騎!」
時雨の体が真っ赤に燃え、亀に体当たりを食らわす。しかし、甲羅を破ることはできなかった。逆に、例の回転で時雨は吹き飛ばされてしまった。
「時雨!」
一方、戦闘の様子を香奈は、じっと見守っていた。なんでか、胸が苦しかった。誠が戦ってるのに、自分は何もできないことを悔いていた。
(お願い、誠。無事に帰ってきて)
誠は、正直苦戦していた。本来の力がうまく使えない上に、相手の連携がすごいのだ。マグロを狙うと亀が防ぎ、その隙にマグロが突進してくる。
(やっかいだな)
相手の連携に、誠も時雨も体力を消耗していた。でも、そんなこと相手はしったこっちゃない。また、亀が来た。
「くそ・・・・」
亀の回避はできた。しかし、避けたところにマグロが突っ込んできた。これには、体力を失っている誠には、避けれなかった。針が誠の腹を貫いた。
「・・・・・・ごふっ!」
「誠おぉぉぉぉ!!!」
ドゴォォォォン・・・・
誠は、大きな木にマグロごと激突した。マグロの針が木に突き刺さって、誠は木とマグロに挟まれてしまった。そこで、誠の意識は途切れた・・・・。
「いや・・・・誠・・・・いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
その時だった、誠のいる木に雷が突然落ちたのだ。そして、誠が動き出した。
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