第17話:迷い
あの後、誠たちはノアと離れた。今、記憶と力を取り戻した誠と雅人の二人だけだ。
二人は公園のベンチに座っている。
「・・・何か言いたそうな顔だな」
「え・・・うん。記憶と力を取り戻した誠は、これからどうするのかなって」
「俺はアクセルに帰って、世界の融合を企んでいる奴らをかたっぱしから潰す」
「アクセル?それって・・」
「あぁ、言ってなかったな。俺たちは、ここからしたら向こうの世界のことをアクセルと呼んでいる」
「終わったら、帰ってくるんだよな?」
「それは・・・わからない」
「そんな・・・・こっちのことは?香奈ちゃんは?」
「お前も知っているはずだぞ、俺はもともと・・・」
「そんなの関係ないよ!誠のばか!」
「おっ・・・・おい!」
雅人は怒って走り去ってしまった。一人残された誠は、悩んでいた。さっき言ったように、本当にどうすればいいかわからないのだ。どちらの世界にも、誠としてそれぞれ過ごしてきたのだから、記憶が戻らなかったままなら、こっちを選んでいるだろうが・・・。
「こんなことを悩むなんて俺らしくないな・・・」
そして、誠も公園を去った。
翌日、学校で雅人と出会った。けど、お互い声をかけることはなかった。・・できなかった。
「どうしたのよ、誠。雅人君と喧嘩でもしたの?」
「いや・・・・べつになんでもない」
(そういえば、まだ香奈にもちゃんと話していないな)
「そう?ならいいんだけど」
ーーーー授業中ーーーー
「・・・・・・であるからして」
今、目の前では理科の教師が授業をしているが、まったく耳にはいっていない。誠は、ずっと窓の外を見ていた。授業の時間が残り半分ぐらいになったときだった。
<退屈そうですね、アデル様>
頭の中にノアの声が流れてきた。魔法を使ったテレパシーのようなものだ。
<まぁな、今は何を言われても頭に入らない>
それは、本当だった。雅人のこと、香奈にどうやって話すかなどで、頭がいっぱいなのだ。
<いつごろアクセルの方にお戻りになられますか?>
<準備ができているのか?>
<はい、いつでも行けます>
<今どこにいる?>
<天の川公園の近くのファミレスですけど、どうしました?>
<今から行く。待ってろ>
「先生、少し頭が痛いので早退します」
そういい残して、誠は足早に教室を出た。
ーーーーファミレスーーーー
カランコロン
店のドアを開けるとこんな音がした。ファミレスについているものなのかと思ったが、すぐにどうでもいいと思った。
「あっ、こっちですよ」
声のしたほうを見ると、ノアがこちらに軽く手を振っていた。
「どうしたんですか?急に」
「いや、アクセルはどうなっているかと思ってな」
「あまり変わっていません。しいて言うなら、魔王様の怪我が回復したくらいです」
「そうか・・・・・」
そういって、誠は右耳の耳たぶを指でいじった。それを見たノアは、
「何か相談事があるのですね?」
「!?・・・・なぜわかった?」
「アデル様は、何か相談事があるとすぐに、耳たぶをおさわりになりますから」
(こいつ・・・・)
誠は正直に驚いた。まさか、そんなことを知っているとは思っても見なかったからである。
でも、思い出してみればそうかもしれない、昔も同じようにノアに相談しようとしたら、すぐに何かあったのか聞いてきていたのだから。
「昔の俺ならこんなことで悩んだりしないのだがな」
そういって、誠は悩んでいることを打ち明けた。
ここまで、読んでくださってありがとうございました。何か感想がありましたらよろしくお願いします。