第15話:取り戻した記憶
「行くよ、ミル」
「頼むぞ、時雨」
俺たちはそれぞれの召喚獣を呼び出した。いつでも、攻撃できる・・・・・けど、ノアは召喚獣を出さない。それが不思議だった。
「ふふふ・・・・力づくね・・・・」
その刹那、体中に悪寒が走った。
(なんだ、これ・・・・これが殺気ってやつか・・・クソ、体が・・・)
今までに味わったことのない感覚に、体がゆうことをきいてくれない。
「そこまで、言うならいいでしょう。お相手いたします、もちろん手加減いたしませんよ、今回は・・・」
「あっ・・・・当たり前だ・・・」
言葉がうまく出てこない。となりを見ると雅人も恐怖で足がすくんでいるようだ。
「でも、ここで戦うのは環境によくありませんね。場所を用意しましょう」
そういって、ノアは右手を空に突き出した。すると、右手に光が生まれて広がっていった。
「なっ、何だ?何した!?」
「私の魔力で特別に場所を作りました。ここなら、回りの被害をきにしなくてもいいのです」
「では、参ります。出てきなさい、インス」
ノアが呼び出した、召喚獣はハンマーヘッドシャークだった。そいつは、出てきた瞬間地面にもぐった。
「地面にもぐるなんて・・・・・」
顔を引きつらせながら言ったのは、雅人だった。確かに地面を海のように泳ぐインスを捕まえるのは、正直きつい。でも、記憶を取り戻すためには、やるしかない。
「雅人、気をつけろ。今までで、一番やりにくい相手だぞ」
「うん・・・わかってる」
「決心は固まりましたか?」
「あぁ」「はい」
「いいでしょう。では・・・・行きます!」
ノアが叫んだ瞬間、地面からインスが飛び出してきた。狙いは、時雨だった。
しかし、すんでのところで
「よけろ!」
なんとかよけきれたと思っていたが、次は間をおかずに上から襲ってきた。今回は避けれないと思っていたが、
「ブルームウィンド!」
雅人のミルオウルの攻撃によって、インスが軽く吹き飛ばされて、攻撃は当たらずに済んだ。
(くそ・・・さすが隊長ってか・・・)
「すまない、雅人」
「いいよ。それより今は・・・・・ビルアロー!」
次の技は空高くから、位置エネルギーを利用した体当たりだ。しかし、インスはまた地面にもぐってしまった。
(どうする・・・どうすれば、あいつを倒せる?)
「ちっ・・・思いうかばねぇ。適当に試してみるか」
「このまま攻撃が当たらなければ、勝負は終わってしまいますよ」
「行け、ブリザードハリケーン!」
時雨の羽を激しく動かして氷系の風で相手を凍らせる技なのだが、そう簡単には当たらない。
攻撃は外れて、代わりに地面が少しの範囲凍ってしまった。
「残念でしたね。次はこちらの番です、トルンバイト!」
インスがものすごい勢いで横に回転しながら、突っ込んできた。
「今だ、ブルームウィンド!」
攻撃が外れた直後のインスをミルの強風が当たった。吹っ飛ばされたインスは、ブリザードハリケーンで凍った地面に激突して地面の海に沈んでいった。その時だった、
(何だ・・・もぐらせないには地面を凍らせればいいんじゃんか)
「見たか、雅人?」
「うん、あれならいけるよ」
「よし、次にあいつが出てきたときに、地面をほとんど凍らせてやる」
俺たちが相談している間、ノアは腕を組んだまま少し嬉しそうに微笑んで(?)いた。
(記憶と力をなくされたおかげで、前よりもたくましくなられましたね、アデル様)
しばらくたっても、インスは出てこなかった。
「どこいったんだ?」
「さぁ、分からない。けど」
「油断は禁物、だろ?」
「うん」
二人は背中合わせに立っている。
「ふふふ・・・・」
「何がおかしい?」
「いいんですか、そんなに回りだけ見ていて、足元をすくわれますよ?」
ノアがそう言った瞬間、雅人の足元からインスが飛び出した。雅人は、跳ね飛ばされながら叫んだ。
「誠!今だ!」
「おう!時雨、ブリザードハリケーン!」
そして、地面の大半は凍ってその上にインスは、落ちて身動きがうまく取れなくなった。
「焼き魚にしてやるぜ!時雨、炎の舞だ!」
途端に時雨の体が真っ赤に燃え、まさに火の鳥にった。そして、動きが取れないインスの体を炎の矢のように、貫いた。
「・・・・・勝ったぜ」
「やったね、誠」
俺はすぐに倒れていた雅人の肩を担ぎ上げた。
「二人がかりだったとはいえ、やこやりましたね」
「約束は守ってもらうぞ、ノア」
「はい、では少し失礼します」
そういってノアは、誠の頭に手を置いて言った。
「封印されし、記憶と力よ。我が主、ジャック・エルムの名において今こそその封印を解き放て!」
途端に頭の中に向こうでの記憶がよみがえってきた。両親の顔・妹の顔・自分のこと・・・・。
「終わりました。ご気分はどうですか、アデル様?」
そう言ってノアは、誠の前に片ひざをついて頭をたれた。
「今までの記憶とごちゃごちゃになって気分がわりいな」
「誠?」
雅人がそう呼んで、振り向いた誠の目は真っ赤だった。
「そういえば、この世界の人間だったな、雅人?」
「えっ?・・・・うん」
(目が真っ赤ってことは、アデルってこと?)
「改めて自己紹介をしておこう。俺の名は、アデル・エルム。エルム帝国の魔王ジャック・エルムの息子だ」
そして、アデルは言ったのだった
「次期魔王になる男だ」
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