緑の未来へ
アドゥとミスティ……クローチェお姉ちゃんが光にのまれて見えなくなってから、わたしを捕らえていた枷は、カラン…と音をたてて取れた。
「あっけなかったな…」
…うん。……本当に。
「悪魔が敵なんて、もっと壮絶な争いになってもおかしくなかった……」
……そうだね。でも、きっと。
「うん?」
アドゥとお姉ちゃんにとっては、長い、戦いだったんじゃないかな。
光が収まると、そこはもとのリビング。
わたしさっきまでここでお姉ちゃんとごはん食べてたんだ。
欲しいと思っていた幸せは、ついさっきまでここにあったと知った。気づいたときにはもうなくなってるなんて、信じたくなかった。
……っく……ひっく……うぅ。
「ティア、声を出せ。泣くときは声を出した方が、すっきりするぞ」
……でも、声の出し方なんて……。
「姉さんが、封を解いてくれたんだろ? 大丈夫。腹の底から叫ぶんだ!」
カプリに言われて、わたしいっぱい泣いた。カプリも、泣いてた。
「ふっ……あ……あ、わあぁぁぁん!!」
カプリに抱きついて、しがみついて、喉が痛いと感じるまで、すっきりするまで。
アドゥを、クローチェお姉ちゃんを、内緒にしていたときのミスティを想って泣いた。
自分がこんなに感情を出せるなんて、枷を付けられたときには思ってもみなかったな。二人も、こんなふうに泣くことがあったのだろうか。
カプリは自分も泣いているのに、背中をずっと撫でていてくれた。それがとても、心地好かった。
ふと目を開けると、そこはいつものわたしの部屋。わたしのベッド。
いつの間に移動したっけ?
となりにはカプリが寝てる。
カプリも疲れてたんだよね。でもずっと、そばにいてくれたんだ。
カプリの寝顔を見ながら、わたしは魔法を使う前のお姉ちゃんとお話ししたときのことを思い出していた。
『いろんな世界を、人を見てみたいな』
『誰と外に出たいですか?』
『やっぱりわたしは、カプリが良い』
あの時のお姉ちゃんのすごく綺麗な笑顔。まだ、鮮明に思い出せる。お姉ちゃんも予知とかするのかな?
あの時なったらいいなって思ったことが、今本当になってる。カプリはきっと、朝になったら外に出るつもりなんだと思う。もうさすがにそのくらい分かる。
もう一回、寝よう。今度は朝までぐっすり寝て、カプリを起こさなくちゃ。
「おやすみなさい、カプリ」
でも早く起きたのはカプリで、起こされたのはわたしでした。
「起きろティア! 出発だぞ!」
はっ! 失敗した!!
大きなカバンに二人分の着替えやら何かを詰め込んで、わたしたち二人はおうちから出た。玄関を出て、庭へ。ジャラジャラしていた鎖はない。
でも、わたしの瞳から涙が勝手に流れてきた。
「え? あれ?」
昨日あんなに泣いたのに、まだ出てくるの?
カプリを見ると、やっぱり優しく笑ってる。
「これも、涙なんだよね?」
「そうだな。嬉しいときも悲しいときも出てくるよ。あと笑いすぎたときも出るらしいぞ」
……いっぱい出てくるんだね。
「いっぱい笑おう、ティア」
「うん! 一緒に笑おうね」
カプリと手を繋いで門に向かう。一度振り替えって、お家に手をふってみた。
さようなら。
嬉しいことも、悲しいことも、苦しいこともあった。だけど、いつかまた、会えたらいいな。
カプリと一緒に門の外へ出る。ビクビクしたけど、あっさり出ちゃった。
「どっちに行くの?」
「どっちでも良いさ。ティアが行きたいところに、全部行こう!」
「二人で?」
「そう、二人で!」
うん! 行ってきます!
これにて完結です。
少なくとも五年前に書き終えたお話ですが、楽しく編集できました。
ありがとうございました!




