41-2 LOST EDEN (失楽園) ソレは呪いか?それとも罰か?後編(挿絵あり)
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1
魔女の配るリンゴと言えば毒リンゴと相場が決まっている。
口にすればたちどころに毒がまわり死に至る。
(でも王子様のキスで生き返るのよね?)
泉 穂波は広場の赤い頭巾の魔女に恐る恐る近づいた。
さっきは気づかなかったが後ろから見てもかなり露出度の高い衣装だ。
(ちょっとーー!異世界感出てるじゃないの?)
穂波は少しワクワクしながら注意深く魔女を観察した。
5分……10分………
割と人通りの多い広場で誰もリンゴを受け取っていない。
よく見ると魔女の後ろにギッシリとリンゴの詰まった段ボールが山積みにされている。
アレがノルマだとすると全部配り終えるのにどれくらい時間がかかるのだろうか?
相当キツそうだ。
アレは呪いか?それとも罰か?
穂波はそんな言葉を口にする。
ある意味、ティッシュ配りよりもキツそうだ。
さっきは無意識に手渡されたリンゴを簡単に受け取ったが見るからに怪しい。
(そう言えばあのリンゴはどこに?)
そんな事より…チラリと見えた魔女の顔。
黒い布で目隠しをされている。
呪術?
ソレは呪いか?
銀髪ではなく亜麻色の髪。
おしい!
狩りでもするかの様に穂波は魔女の様子を伺った。
「先生ーー!」
穂波の後ろから声がした。
(先生?)
もしや堂島先生が近くに?と思い穂波はその声の方を振り返る。
!!!!!
死神?
黒い大きな翼!ギョロリとした目玉、耳まで裂けた口!
身長2メートルはありそうな羽の生えた魔物がこっちに向かって来ている!
しかも走って!
あれだけ大きな黒い翼を持ちながら飛ばずに走って来る姿が逆に怖かった!
穂波は慌ててその場から全速力で逃げ出した。
「おーい、先生!」
「……………」
「先生、大慌てで行っちゃいましたね……」
「そうだね…梶くん、多分、その姿に驚いたんだろうね……」
「これ?魔王の姿……先生に喜んでもらえると思ったんですけどね……」
(魔王っていうより死神な…)
三原は大人の対応で何も言わなかった。
広場には赤い頭巾の魔女が誰も受け取らないリンゴをただひたすら差し出す行為をまるで呪いの様にずっと続けていた。
「梶くん、あそこでリンゴを配ってるみたいだよ」
三原は梶にそう言うと
「⁈⁈すごい、スゴイですよ三原さん!」
梶はそのリンゴを配る魔女の姿が異世界モノっぽくて興奮している。
「やっぱり梶くんはリンゴしか食べないのかい?」
「???」
梶は三原の言ってる事を理解しないまま赤い頭巾の魔女の方へと駆け出していった。
――――――――――――――――――――――――
2
アリの女王2が口にした果実は彼女に知恵と罰を与えた。
彼女は異種族間での交配による出産はほぼ無理だと確信しながらも受胎することに喜びを感じてはいた。
しかし、禁断の果実は彼女のお腹の中の子の遺伝子を安定させる。
つまり出産が可能となった。
つわりがひどくなる。
禁断の果実を口にした原罪により彼女は出産による痛みという罰を与えられた。
さらに知恵を得た事により一つの疑念を抱く様になる。
異種族である人間の駿の思考を読み取り、彼の望む姿となる代わりに思念による会話が出来なくなった彼女は慣れない言葉を口で発音する。
その口調もまた駿の望む女子そのものだった。
では私の……私自身の存在とはなんなのか?
この先ずっと彼女と同じ姿、同じ話し方で擬態を続けるのか?
その様な疑念が女王アリ2に湧き上がった。
「コレは呪いか?」
女王アリ2の発したこの言葉に「なりきり変身棒」が反応する。
なりたいものになれるこの棒の能力は否定や拒絶により失われる。
それにより駿と女王アリ2の着ていた服が消えた。
アリの女王2と駿は再び元の裸となる。
だが禁断の果実を口にした彼女は羞恥心が芽生え自身が裸であるのが恥ずかしいと感じる様になった。
これまで見られる事に喜びを感じていた彼女の心に変化がおこる。
咄嗟に胸を手で隠し「なりきり変身棒」の先についている葉っぱをむしりとり下を隠した。
葉の形は「無花果」に似ていた。
原罪により呪いと罰の両方が与えられた。
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3
「魔族が私に何の用だ?」
赤い頭巾の魔女は黒い翼の魔物の姿に動じる事なくそう言った。
「おお!ぼくの姿ってやっぱり魔族って事でオッケーなんですよ!」
(死神な!)
三原は黙っていた。
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「人間だと?その姿でか?だとするとソレは呪いか?それとも罰か?」
「いや、貴女こそ、そのリンゴの大量の山は何ですか?ソレこそ呪いか?何かの罰ですか?」
「フッ、両方さ」
赤い頭巾の魔女の顔が見える。
黒い目隠し!
しかも目隠しの真ん中に奇妙な一つ目の模様!
キターーーーーーーーーッ!
異世界キターーーーーーーーッ!とガッツポーズをする。
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金木猫商会から広場までは走って5分とかからない距離にある。
月斗と堂島の2人が情報屋に会う為、広場へ向かう。
少し小高い場所から広場が見え緩やかな傾斜の階段を降りるとが広場へとたどり着く。
広場にはアリの衛兵や街を行き交う異界の住人の姿も見えた。
その中に一際目立つ大きな黒い翼を背中にした魔物の姿が月斗の目に飛び込んだ。
魔物の横には人間?
上下青のスーツにポケットが白。
髪の毛は茶髪の青年がいる。
「アレは⁈」
手には黒いノートの様なものを持っている。
「先生?死神です!あそこに!」
「!!!」
相手の死神もどうやら月斗達に気付いた様だった。
「先生!向こうが何かしようとして来たら魔法を使います!」
そういって月斗は拳に炎を集めると赤い頭巾の魔女もそれに反応した。
「いや、ノートに名前を書かれたら一瞬で終わりだぞ!やれるのか?」
プレッシャーが半端ない!
んん?
「先生!なんか手を振ってません?アレ」
「そう言えばセンセーイって声も聞こえるな…」
「先生、死神にお知り合いでも?」
月斗は尋ねてみた。
――――――――――――――――――――――――
恐る恐る2人は階段をゆっくりと降り、広場で手を振る死神の元へとやって来た。
死神は無言でニヤリと笑う。
ノートのページが開かれそこには堂島 海里の名前がハッキリと書かれていた。
「なっ!何?」
「先生?コイツ!やります!」
そういって月斗が死神に向けて炎の球を放とうとする!
魔力に反応した赤い頭巾の魔女がそれを制した。
「待て少年!その炎の魔法⁉︎どういう事だ?」
赤い頭巾の魔女は被っていた頭巾を脱ぎ、目隠しを外す。
「いいから黙ってコレを食え!」
「妃音…さん?」
目の前の女性の素顔をみた月斗はそう呟いた。
失楽園 コレは呪いか?それとも罰か? 完
to be continued 。




