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異界探訪機動巨神ユミルギガース Re:cross WORLD1st  作者: LA note
シュレーディンガーの猫編
39/49

37.And become a father (そして父になる。) (挿絵あり)

            1

 巨大な塔の中にアリの女王の姿を模した女王アリロボの残骸が地面に散らばっている。


 それを数台の(アームド.リアクタブル.インターフェイス)と呼ばれるARIが回収して回る。


挿絵(By みてみん)


 硬い外殻を持たない下半身は脆くも崩れ去り、操縦席(コクピット)のある胸部から上が辛うじて形を残していた。


 アリ特有の大きな眼は光と色を失い灰色に近い黒に染まっている。


 かすかに()いた操縦席(コクピット)の扉から計器類の青い光が静かにモーター音を出して唸っていた。


 その中でアリの女王1が座席に横たわった娘の女王アリ2に目を向けている。


 彼女の傍らに淡路(あわじ) 駿(しゅん)が両腕をダラリと垂らし(こうべ)を垂れながら椅子に座り込んでいた。


 明るめの栗色の髪の毛は全て白髪(はくはつ)と化している。


 女王アリと交尾する為だけに存在するアリの(オス)の生涯は短く、そして儚い命だという。


 (オス)アリは背中から生えた(はね)で巣から飛び立ち同じく他の巣から飛び立った女王アリと空中で交尾をした後、短い一生を終える。


 女王アリと交尾が出来る(オス)アリはまだ幸運な方で、それすら叶わない(オス)アリも多い。


 アリの種類によっては、結婚飛行と呼ばれるこの行為で女王アリは(オス)アリを交尾したまま巣へと戻り、巣にいる働きアリ等が一斉に交尾中の(オス)の体を引きちぎり、(えさ)とする。


 行為の最中(さなか)に身体を引きちぎられながらも(オス)アリの腹部はそのまま残され交尾が続けられるという。


 そして彼の体が完全に解体され、働きアリや産まれてくる幼虫の餌となる。


 自然界において(オス)よりも(メス)の方が体格的に恵まれているものが多い。


 元来、生物学的にも精神的にも(オス)は逆立ちしたって(メス)には勝てないのだ。


 日本に於いて長く続いた男尊女卑(だんそんじょひ)といった考え方も、その考え方や思想、思い込みによる失言で退陣を余儀なくされたお偉方も元を正せば赤ん坊として母親から命を授けてもらったのだ。


 幾つになっても男は母親からすれば子どもであり、幾つになっても男からすれば母親は母なのだから、男が潜在的にも遺伝子的にもすぐれた女性への劣等感から来る反発心と母親に対する愛憎やらから生じたものだといえないだろうか?


 男は自分の子がオギャーとこの世に生を受けるまで父親になるという自覚が無く、逆に女性は胎内に子を宿した時から既に母親への一歩を踏み出すのだから意識に差が生じ覚悟に差が生まれるのだ。


 仲間や産まれてくる我が子の糧となる事が幸せというのなら自然界に於ける多くの昆虫の(オス)の存在意義とは子孫繁栄の為の自己犠牲に他ならない。


 虫たちに自己犠牲といった精神があるのかどうかは疑問だが女社会のアリの世界には「()()()()」なるものは存在しない。


 そして父になるという感覚も無く命が終わる。


 女王アリ1は数時間前に「アリの王にオレはなる!」と言った物言わぬこの少年に目を向け想いを巡らしていた。

挿絵(By みてみん)


――――――――――――――――――――――――

            2


「なぁ月斗(げっと)!こんな状況で何なのだが……今、目の前で怒ってるネコを持って帰ったらダメだろうか?」


 小声で千里(ちさと)が隣を歩く月斗(げっと)に話かける。


「エッ?ダメに決まってるでしょ!どういう思考してるの?持って帰るって?」


 同じく月斗(げっと)の隣を歩く心愛(ココア)が小声で言い返す。


「いや心愛(ココア)ちゃんならわかるだろ?あのトコトコ歩く姿とかキュンです!じゃないか?」

 千里(ちさと)がやってみせた指のポーズは「キュンです」では無く「エンガチョ」の形になっていた。


「ホントにこんな状況で何なの?バカなの?」


 若干6才にして正論だ。


「うしろでゴチャゴチャうるさいニャ!黙ってついてくるニャ!」


 そう言って前を歩くのはさっきのカレー屋の店員の黄色いネコ(仮)だ。


「ワァ!怒られた!でっ!でもこの小さくて可愛いいモノとか人とかネコ(仮)とかに怒られるって言うのも何だかワクワクするな!」


 また千里(ちさと)の変なスイッチが入り

「ワクワクするニャ!ってニャに?」

 黄色いネコ(仮)にまた怒られた。


「しばらくこの部屋で待っとくニャ!」

 そう言ってネコ(仮)は部屋から出て行く。


 部屋は畳10枚分くらいの広さで奥には先客が4人いた。

――――――――――――――――――――――――

            3


 10畳の部屋に前の列に3人、後ろに4人が1ヶ所に集められている。


 その前にネコ(仮)の人が立って(わめ)いていた。


「あのね!自分達の立場ってモンをわかってるニャ?無銭飲食とかお金持たずに買い物とか、ほんとにあり得ないのニャ!もうすぐ社長がここにやって来るニャ!大人しくしとくニャ!」


 ♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎ ♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎ ♢♦︎♢♦︎♢


「社長……まだかニャ…」

 ソワソワ

 ……………………………

 ソワソワ

「社長……遅いニャ。」

 

「ええっと!そこニャ!そこ!うるさいニャ!何待(なにま)ちかって?社長待ってるニャ!」


 ♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎ ♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎ ♢♦︎♢♦︎♢


「エッ?クレーム対応ニャ?社長クレーム対応してるのニャ……」


 何やら他のネコ(仮)との話し声が聞こえその場が騒がしくなった。


「エッ、きみ達、さるぐつわされて口塞がれてるのわかってるニャ?この状況わかってるニャ?説教されてるのホントにわかってるニャ?何でそうなってるかわかってるニャ?…こっちが黙ってたらピーチクパーチクと騒がしいから口塞いで喋れない様にしてるニャ!別にこっちも好きでやってるわけじゃ無いニャ!」


「見てないニャ!前に座ってる子のパンツをチラチラ見て無いニャ!言いがかりはよすニャ!」


「ゴメンにゃ!見苦しいモノを見せてしまったって!逆に謝らないで欲しいニャ…なんかゴメンにゃ!実にいいもん見させてもらったニャ!」


挿絵(By みてみん)


「エッ、ニャに?このみどり色のさるぐつわだと全員、()()()()()妹みたいニャ?って?鬼にされた妹みたいってニャ?」


「ニャンなの?鬼にされた妹ってニャンなの?知らないニャ!」


「そりゃ、そうニャ!鬼にされたら無惨(むざん)って言うかそりゃ無念(むねん)だニャ!」


「エッ、無念(むねん)じゃニャくて無惨(むざん)

無惨(むざん)にされたってニャにを?」


「されたって(なん)ニャ?エッ?サマ?サマってニャに?コワイコワイ!きみらの言ってることがわからなすぎてコワイにゃ!無念(むねん)サマ?無念じゃニャくて?ニャんで無惨(むざん)にサマって付くニャサマってなにニャ?」


「そんなん知らないニャ!」


「ニャに?そのちょいちょい挟んで来る画風が違うって何ニャ?」


「エッ?この姿のコトにゃ?知らないニャ!こっちから見たらきみらの方が画風が違うニャ!ーーーーって画風ってニャんにゃーーー⁈!!!」


「ていうかそこ!説教中(せっきょうちゅう)ニャンだからうるさいニャ!」


「何でネコニャのにチューって?そりゃネコだって(チュー)とか言うニャ!説教中(せっきょうチュー)を説教ニャンとか説教ネコとか言ったらおかしいニャ!まぁ説教してるネコだから説教ネコには違いニャいけど!ってうるさいニャ!」


「そこニャ!そこニャ!あまりにも緊張感を感じれないニャ!」


「てゆうかニャンなの?てかニャンなのニャ!きみらは!さるぐつわで(くち)を塞がれてるのにニャンなのさっきから!きみらの心の声がガンガンこの頭の中に次から次へと入って来てうるさいニャ!口塞(くちふさ)いでても全く意味無いニャ!」


「何がネコの(ひたい)くらい狭い頭ニャ?何ニャ?何ガンガンガンガン次から次へとディスって来るニャ?」


「エッ!コレって魔法(アニマ)ニャの?こんな魔法(アニマ)ってあんの?ニャに?ディスり殺しでもすんの?メンタル破壊しに来てるのニャ?」


「そんでソコ!その金髪のきみニャ!」


「きみに関してはアレだニャ…反省どころかさっき完全にこっちのタマとりに来てたニャ?全力でニャ!」


「ネコだけにタマってかニャ?タマとりにってかニャ?」 

「うっせーニャ!今どきそんな名前のネコは居ないニャ!」

「エッ?名前は?てかニャ?」

「名前はてかニャ?…恥ずかしいニャ…」

「絶対笑わないニャ?」

「て言いながら絶対笑うニャ……」

「エッ?ホントかニャ?ホントかニャ?」


「ランスロット…ニャ…」

「ハイ、全員コロすニャ!」

――――――――――――――――――――――――

           4


 ♢♦︎♢金木猫商店(マネーきねこしょうてん)♢♦︎♢


 建物の入り口に看板が立ててある。


 部屋の中には色とりどりのネコ(仮)が前後2列に並べられ前の列に3匹、後ろの列に4匹が全員正座をさせられていた。


 その前に白衣姿で片手に竹刀を持った人物が立っていた。


 応徳学園高等部(おうとくがくえんこうとうぶ)ハンドボール部顧問にして物理教師の堂島(どうじま) 海里(かいり)は手にした竹刀で床をガンガン叩きながら


「エッ!あったかい温泉に浸かって汚れと疲れを取ろうと思って入ったら水って!ほとんど水ってどういう事?風邪ひくでしょ?!」


 かなり怒っている様子が見て取れる。


 他のネコ(仮)から社長と呼ばれるネコ(仮)は他のネコ(仮)たちよりも更に一回り小さく色は白かった。


「それはホント申し訳ニャいと思ってるニャ…」

前列の真ん中にいるネコが土下座をする。


 それに合わせて他のネコも一斉に頭を下げる。


「それにニャって?ニャって何?人と真剣な話をしてる時に語尾にニャって?それに変な着ぐるみなんか着て?ホントに反省してるんですか?」


「着ぐるみって何の事ニャ?」


「そのネコの様な感じの!」


「コレかニャ?コレはみんなこんな感じニャ!」


「こんな感じ…だと?あなた方はみんなこんな感じなのか?」

 堂島(どうじま)の後ろに居た(かじ) 大作(だいさく)

(堂島(どうじま)が顧問を務めるハンドボール部の1年)がさらに輪をかけた様に怒っていた。


「急に?エッ?怖いニャ!急に天パで目の細い子がめっちゃキレてくるニャ!」


「天パとか目が細いとか言うな!人猫(ワーキャット)だとか人狼(ワーウルフ)とか人虎(ワータイガー)って聞いてちょっとワクワクした自分が馬鹿みたいっすよ!何コレ?着ぐるみ?あざとい可愛いさとか演出してんすか?全部の中の綿を抜いてやろうか?⁈」


 異世界や、ファンタジー好きの(かじ) 大作(だいさく)にとって余りにも自分の思い描いていた世界観とのギャップに怒りが頂点に達した様子だ。


「エッ!お腹のはらわたを抜かれるかニャ?勘弁して欲しいニャ!それにこんな怒られる事かニャ?とんでもないクレーマーにゃ!」


「あったかい風呂に浸かろうとして水風呂に浸からされたら怒るでしょ?普通。」


 堂島(どうじま)はさらに竹刀でバンバン床を叩く。


「そりゃそうニャ!でもまだお代をいただいて無いニャ……どうすれば許してもらえるニャ?全く今日はお金を持ってない奴らばっかりニャ!!」


「んん?……」


「小さい子どもも混ざってたニャ!親の顔が見てみたいニャ!お金が足りない分働いてもらおうにも子どもだから親の了承がニャいと無理ニャ…早く親に来てもらってキッチリ払ってもらうニャ!」


「んん?お金?」


「お金ニャ…ウチも商売でやってるニャ!お金貰わないと商売あがったりニャ!」


「ちなみに……お金はどういう単位…ですか…ね?」


「お金はお金ニャ!マネーに決まってるニャ!」


「マネー?…………エッと、それは念のために聞きますけど、日本円にするとおいくらくらいでしょう……か?」


「日本円?日本円て何ニャ?」


「で…ですよ…ね…ちなみに…その1マネーで買える物って何ですかニャ?」

「何で急に語尾にニャ!な?1マネーじゃ何にも買えないニャ!もしかしてアンタらもお金が無いニャ?まさか…あの連中と知り合い…かニャ?」


「ど……どうか……ニャ?……」

 堂島(どうじま)は目の前のネコ(仮)から目を逸らしながら答えた。

――――――――――――――――――――――――

            5

「覚悟はいいかニャ?」


 ネコ(仮)の雰囲気が一変する。


 目の前のネコ(仮)は身体から煙の様に蒸気を発していた。


 首輪に付いた鈴が「チリーン」と音を立てる。


「この姿になった吾輩は手が付けられ無いニャ!」


 するとネコ(仮)の身体がみるみる大きく膨れ上がる。


 マズイ!全員死ぬ!


 コイツは狼に変身する獣化人(ライカンスロープ)ならぬ獣化猫(ガートスロープ)とでもいったところか?


 いや!「ライカンスロープ」とはギリシャ語の狼を意味する「ライコス」と人間を意味する「アンスロープス」を組み合わせた言葉として「狼に変身する人間」だとするならば「猫に変身するネコ」だとギリシャ語で猫を意味する「ガートス」と人間を意味する「アンスロープス」で「ガートスロープ」「ガートスアンスロープス」だとおかしくないか?……だとすると「ガートスガートス」もしくは「ガートガートス」???ウェアウルフは「人」を意味する「Wer」と、「狼」を意味する「Wolf」を組み合わせた言葉だから半狼人!


 とすれば「ウェアキャット」もしくは「ワーキャット」!


 でも着ぐるみみたいなネコ(仮)だから着衣を意味する(Wear)って事で「服を着ているネコ」!


 即ちウェアキャットでいいか!


………と空太が考えを巡らしている間に目の前のネコ(仮)は獣化を完了していた。


「なんかすごいいっぱい難しい単語が頭の中にガンガン流れ込んで来て獣化に専念出来なかったらニャ!」


 と言って元の愛らしい姿に戻っていた。


「なんかすごい角度からの攻撃をしてくる魔法(アニマ)ニャ……」


「とにかく…きみらが働いて返すにしても、両親とか保護者に払ってもらうにしても社長に来てもらって判断を仰ぐしかニャいにゃ…」

――――――――――――――――――――――――

            6

「それで?きみらの世界ではお金がニャくても物が買えたりサービスを利用したりする事が出来るって事かニャ?」


「ええ、まぁ割と電子マネーやアプリ決済なんかが日常化して普及はして来てます…ね。」


「だからココでもそんニャ感じでガンガン買い物をしたとでも言うニャ?」


「エッと…蟻都市(アントシヤネン)っておっしゃいましたっけ?この都市の運営はアリの女王の管轄下なんじゃないんですかね?」


「都市全体はアリの女王達の管轄だニャ!でもこの辺り一帯の娯楽施設や飲食、商店などは我々、金木猫商店(マネーきねこしょうてん)が牛耳ってるニャ!ネコだけど牛耳ってるニャ!」


 この世界特有なのだろうか?……アリだけに…だとかアリなのに馬車馬…だとか…。


「アリの女王達?あの2人以外にも女王アリが?」


「ニャ??そんな事も知らないのニャ?蟻都市(アントシヤネン)は幾つものアリの(コロニー)が集まって出来た一つの巨大都市ニャ!ここの女王さんはその中の1人にすぎニャいニャ!」


「幾つもの(コロニー)?」


「コロニーが幾つも集まってサイドと呼ばれてるニャ!」


「サイド⁈」

 運転手の三原さんがやけに食いつく!


「ちなみに…サイドに番号とか付いてたりします?」


「もちろんニャ!ここはサイド7と呼ばれてるニャー!」


「来たーーーーーー!」

 何故か三原さんがテンションMAXに!


「もしかしてサイド3とかが独立しようとしてたりしてません?」


「⁈⁈⁈……ニャ⁉︎ ……何故(ニャゼ)…ソレを?」

「やはり…」

「コレはこの(コロニー)ではあまり知られてニャい事ニャのだが…いくつかの(コロニー)がサイド3に攻め落とされたって噂ニャ…」


(コロニー)が攻め()()()()()⁈ですと?正に!「巣落(コロニーお)とし!」」


「ニャ!ニャぜソレを?」


 なんか三原さんとネコの社長の2人が盛り上がっているどうやらアリの社会も色々あるようだ。

――――――――――――――――――――――――

           7


「なぁ月斗(げっと)!こんな時に何なんだが目の前の黄色いネコの人よりも、さっきチラッと見た青いネコの人の方が私は好みだ…私はアッチの方を持って帰りたい。」


挿絵(By みてみん)

「なっ!」

 その場にいるみんなに猫耳でフリフリの服を着た千里(ちさと)が青い猫を抱えてる映像が流れて来た。


「失礼!(わたくし)の妄想が、流れ出た様ですわ!」


「だが月斗(げっと)が赤い方が良いって言うのなら私は赤い方でも構わんが…」

 本人は気づいて無いようだ!話を続けている。

「…………」


「何まだそんな事言ってるの?バカなの?」


心愛(ココア)ちゃんはなかなか手厳しいな!だが可愛い子にキツく言われるのも堪らんな!」


「失礼だけどあなた本当に高校生?喋り方が女子高生っぽく無いんですけど?なんかオッサンっぽいんですけど?」


「アラ?お姉さまに対してそんな事をよくおっしゃいますわ?お姉さまはれっきとしたナイスバディの女子高生でございますわよ?」


 ナイスバディの(みなみ) 千里(ちさと)の映像が皆の脳裏に浮かぶ。


「なっ!」


「やっぱり赤が好きなら赤でもいいぞ!」

 やはり当の本人はまた気づいてないようだ。


「そう言うあなたも変な喋り方!」

「まぁ生意気ですわね!でもお子様の割に物の考え方がしっかりしてますわね!気に入りましたわ!」

「フン!お子様扱いしないで!」


 そんなやり取りがある中、突然ドアが開き青いネコの人が入って来た。


「騒がしいニャ!きみらにさるぐつわしても意味ニャいので外したら外したでうるさいニャ!」


 前列に心愛(ココア)千里(ちさと)京華(きょうか)が座り後ろに(りく)月斗(げっと)空太(くうた)の順で座らされている。


「成功ニャ!アイツの魔法(アニマ)を封じたニャ!もうすぐ社長がここに来るニャ!」


 部屋の隅っこに1人離されて今橋(いまばし) 心司(しんじ)がいた。


 青いネコの人の後ろから一際(ひときわ)小さい白いネコの人が現れる。


「か!カワイイ!」


「ありがとニャ!」

 千里(ちさと)の言葉に答えたその白いネコの人はドアの外にいる人物を手招きした。


「うわぁ!月斗(げっと)見たか?手招きが堪らん!」

 千里(ちさと)のテンションがかなり上がっていると室内に手招きされた人物が入って来た。


「よ…よう!」


 堂島(どうじま) 海里(かいり)32歳独身だった。


堂島先生(おとうさん)!」


 女の先生を「おかあさん」と呼び間違えてしまう様に堂島(どうじま) 海里(かいり)32歳独身はお父さんと呼ばれた。


 便乗するかのように面白がって他の生徒達も堂島の事をお父さんと呼んだ。


 ()()()この歳まで童貞を守り抜いた堂島(どうじま)()()()()()


「やっぱり保護者(おとうさん)だったニャ!」

 白いネコの人が怒りの感情を抑えながら静かにそう言った。

――――――――――――――――――――――――

            8


 操縦席(コクピット)内は計器類の青い光に照らされながら静かにモーターが音を立てていた。


 娘の傍らに少年は両腕をダラリと垂らし(こうべ)を垂れながら椅子に座り込んでいた。


 靴下以外の衣類を脱ぎ捨てた状態。


 親指の部分が穴が空いている。

挿絵(By みてみん)

 駿の明るかった髪色は白髪と化していた。


 女王アリ1は数時間前に「アリの王にオレはなる!」と言った物言わぬこの少年は、オスのアリの様に命を落とすどころかその魔法(アニマ)の特性によって触れたものにも自身同様の能力(チカラ)を与え、異種族間での交配を堕胎する事なく推し進めることに成功し着床から懐妊までを一気に進めた。


 シートに横たわっていたアリの女王2は眩いばかりの光を放ちながらゆっくりと足を床に下ろし立ち上がる。

挿絵(By みてみん)



挿絵(By みてみん)



 その容姿は女王アリ1の姿に酷似していたが、みるみる変化をはじめ……やがて人間の女性の様な顔立ちとなった。


京華(きょうか)…」


 その姿を見た少年はそう言葉を発し軽くガッツポーズをする。


挿絵(By みてみん)


『恐ろしい()!』


『その少年の望む姿に擬態(ぎたい)したのか…』


 人間に近い姿に擬態(ぎたい)した女王2の腹が大きくなっていた。

挿絵(By みてみん)

 ()()()()彼は()()()()()()



「そして父になる。」完


to be continued in 38.magical Love toys(魔法の愛玩具)


読んでいただいてありがとうございます。

「そして父になる」


アリの女王1の「おそろしい子!」と言うセリフは「ガラスの仮面」から引用させていただいてますが元ネタを知らなくても色々な作品でオマージュされているのでご存知の方も多いと思います。


擬態する前のアリの女王1の瞳の無い表情のイラストを描いてる時にふとこのセリフが頭に浮かびました。


アリという女性社会に於いて淡路駿の行動力が女王1にとって恐ろしく映ったのかも知れません。


次回、魔法の愛玩具もよろしくお願いします。

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