34. I will be the Fairy King !(妖精王にオレはなる!)(挿絵あり)
34. I will be the Fairy King !(妖精王にオレはなる!)
「始まりの巨人?始祖ユミル?」
堂島はそう言って鏡の様なサングラスをクイッと直した。
「それより!妖精の民ってのは何です?妖精王が不在ってどういう?」
梶が堂島の言葉を遮って女王1に質問をする。
「まさか!堂島ようせ…先生みたいな30を過ぎてなお童貞を頑なに守り続けている様な人たちの集団なんじゃ?」
月斗が呟く。
月斗はちょっとアホやから本気でそう思ってる可能性が高いと空太は考えていた。
『魔法の使える種族で…』
「30過ぎても童貞だと魔法使いになれるってウチのばぁちゃんが言ってた!やっぱりそうだったのか!」
陸が割って入る。
陸もちょっとアホなのとおばあちゃん子なので祖母の話を本気で信じている可能性が高いと空太は考えていた。
「妖精王が不在って?まさか堂島ようせいの事じゃ?」もう先生とも言わないのか!と空太は思う。
『イヤ…森の妖精と呼ばれていて彼らは精霊魔法と言う魔法を使う。』
「森の妖精!精霊魔法⁈それってつまり!妖精の民ってエルフの事なんじゃ無いですか?」
梶が細い目を輝かせて言う。
梶、食いつきすぎ!と空太は思った。
「来た来た来た来た来たーーーーーツ!やっと異世界展開来たーーーーーツ!イヤ、これまで散々アリとかロボとか全く異世界感が無かったんですけどやっと!ついに来ましたよ!」
怖いよ!そのテンション!と空太は思った。
『妖精の民は長寿のうえ…』
「そうそうそうそう!エルフは長寿!人間の何倍!何十倍と長生きなんですよ!」
食い気味すぎるよ!梶!と空太は感じた。
『男女共、美しい容姿をしている。』
「堂島はイケメン!やっぱり妖精王なんじゃ?」
もう呼び捨てのうえにようせい呼ばわりだな!と空太は思った。
「イヤ!エルフは金髪で長い耳!美男美女なんですよ!」
梶!、語るなぁー!もっと女王の話聞けよ!と空太は思う。
『イヤ、全員金髪とは限らん…妖精王は黒髪だと言う噂だ!』
噂か!ハッキリしてないのか!女王しっかりしろ!と空太は感じた。
「堂島は青みがかった黒髪!やはり妖精王⁉︎」
もう堂島と書いてようせい確定だし!妖精王と書いてどうじまって呼び捨てな!
「もはや先生とも言わないんだな!」
「お帰りをお待ちしてました妖精王さま!」
「長旅ご苦労様でした!妖精王さま!」
月斗のあとに陸が続く。
「凄いなお前ら!これ見よがしにディスって来るな!容赦無いよ!プレースタイルそのままのランアンドガンだよ!オレは妖精王じゃ無いし、妖精王にオレはならない!」
「なったらいいんじゃ無いですか〜?」
「言っちゃえばいいんじゃ無いですか〜?妖精王にオレはなる!って」
ヘーイ!イエーーーーーツ!月斗と陸がハイタッチをする。
どうやら堂島先生は妖精王になった様だ。
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『続けていいかな?………私はココから外へ出た事が無いので働きアリ達のAOSから拾った映像から説明をしよう…』
そう言って女王1は玉座の横にあるリモコンの様なモノを操作した。
すると一面に張り巡らされた計器類が消え大画面のスクリーンが現れる。
「AOS?」堂島先生がそう言うと
『ああ働きアリたちが着ている作業服みたいなものだ。』
「作業服!」
『ああ、巣外での活動を安全かつ円滑に行う為に私が開発したArmed outer shell(武装外殻)の略だ。
「AOS」と呼んでいる。』スクリーンいっぱいに黒くて硬そうな外殻の衛兵達の姿が映し出される。
『働きアリたちが着ている黒い武装外殻!通称AOSは頭部のマスクのゴーグル部分に高性能ズームカメラが内蔵されていて索敵は勿論のこと録画機能も備わっている。カメラは前方はもとより後方と昨今多いとされる煽り運転や迷惑行為などにも対応する為、360°高画質撮影を可能とし夜間のナンバープレートもハッキリと録画。不確かな記憶より確かな記録で確実な証拠として残せるのだ。どうしても事故にあった時は気が動転して記憶が曖昧になり不利な状況に陥ることがある。そんな泣き寝入りをしない為の機能と言える。さらに録画機能は急停止や強い衝撃を受けた際なども自動で録画が開始され、前後数十秒間の映像が保存される。なお、動画の保存容量には限度があるため、内蔵メモリーの限度を超えると上書き保存されていく仕組みだ。その為、常に最新の映像が残される様になっている。この映像はARIと呼ばれる(アームド.リアクタブル.インターフェイス)を介して個々のアリ達とこの操縦席のマザーコンピュータと連動している。』
「途中ドラレコの説明してましたよね?コレもエエ感じに変換されてるんですかね?」
「なるほど…それで俺たちがあのトリの群れに襲われている時に助けてくれたのか…?」
『ああ…アレはあなた方が我々の狩場でギガントモーアに襲われてる時だったな!』
「ギガントモーア?ああ!あのトリの事か?」
『あぁ、さすが妖精王!察しが良いな!』
「あの!さっきの赤いクーペの話だけど」
月斗が切り出す。
「そのAOSとかARIで行き先とかの記録って残って無いですか?」
月斗はアホやけど馬鹿じゃないこういう機転や咄嗟の判断力などは秀でていると空太は思った。
『それは月が出ている時か?』
「月?夜の間に行方が分からなくなったはずだから月が出てたはずだけど……でも何故?」
『夜…か。夜だと厳しいかも知れん…』
「働きアリ達は夜活動しないからか……」
『その通りだ……。』
そう答えて女王1はスクリーンに映る映像をザッピングする。
地上の色々な場所からARIを通して送られた映像が蓄積されているが、女王アリ1の言うように夜の映像はほとんど見当たら無かった。
半ば諦めかけた時、一瞬だけ車のヘッドライトが映像に映りこみ画面の右から左へともの凄いスピードで移動する車体が映り込んだ映像が見つかった。
「今、映ってた!」
月斗はそう言うと女王アリ1にスローでの再生を依頼する。
「凄いスピードで移動しているな!当日はずっと雨だったはず……夜に雨が上がっていたとしても相当ぬかるんだ地面をこんなスピードで移動出来るものか?」
堂島先生はそう言うとさらに映像に違和感を感じる。
「助手席?いや……月斗!赤いクーペの運転席はどちら側にあった?」
思わぬ質問に月斗はキョトンとしながら
「右側に俺が乗り込んだから、左側…ですかね?」
それを聞いた堂島先生はサングラスを外し再度スクリーンを見つめ直す。
二重の切れ長の目に男性らしからぬ長い睫毛と三白眼の瞳がジッと画面を見つめる。
映像は右から左へと走り去る赤いクーペを映し出していた。
月斗の言うように右側に助手席があるとすれば映像には運転席側が映り込んでいるはずである。
「運転席に人が乗っていない…それに地面から車体が少し浮いてないか?」
映像に皆が注目すると車体が地面から僅かに浮いているのがわかる。
「そこで止めて拡大してもらえないか?」
女王アリ1が堂島に言われるままに画面を拡大してみせた。
「確かに浮いてるな!」
堂島はそう言うと更にスクリーンに繰り返し映し出された映像を何度も確認をする。
「自動運転?」
陸が呟く。
「先生!赤いクーペって浮くんですか?」
月斗が堂島に質問をする。
ん?どうやら月斗のやつ、先生をいじるのに飽きたな!と空太は思った。
月斗とは中学からの付き合いで赤毛の見た目通り熱い奴だと思っていた。
炎の様に激しく感情を爆発させるがその後はケロッとしていてまさに熱しやすく冷めやすい性格をしてるんだと思う。
陸とも同じ中学からの付き合いだが、月斗同様ちょっとアホで単純なうえ、月斗に影響をモロに受けてるといった印象だ。
夏の太陽に照りつけられた地面が熱を溜め込む様に感情が保温された様な。
その点、俺と駿はあの2人と対象的で風と空気みたいな存在だな。
なるほどこの世界の魔法というものは名前と他人から見たイメージが関係すると言う事だが駿はイメージ通り俊足のうえその能力も苗字の淡路というのが更に関連してるのかもしれない。
淡=アワ=hour=時間 .路=じ=時といった具合か…。
しかし、駿のこの魔法は世界陸連を敵に回すどころか駿がその気になれば魔王にでもなれるんじゃないか……?
まぁ駿の心が世界に対する悪意に満ちる事など無いか……それよりも月斗。
日向 =ひゅうが=ひなたとも読めるのが太陽。
そして名前の月斗=月。
太陽と月。
月斗=ゲット=得る、身に付ける。
奪うといった意味か……
月斗の炎はいつか大切な何かを奪ったりはしないだろうか?……
まぁ、月斗の心が悪意に満ちる様な事は無いか……
空太が1人自分なりに考えを巡らせている間に堂島のリニアとホバーに関する蘊蓄ひけらかしが終了した様だ。
相変わらずだな…先生は。
どうやら妖精王という名誉は返上となりそうだ。
妖精王になれなかったな!堂島先生!と空太は思った。
堂島の話が終わり女王1への質問が再開する。
赤いクーペが向かった先には何があるのか?
『御伽世界……妖精王の管理する森だ。』
「そこに妃音さんがいるのか?そこに行こう!俺たちが元の世界に戻る方法がわかるかも知れない。」
『フム…あなた方の世界に戻る方法か……の事はあなた方の思考から読み取らせて貰ったが…私には元に戻る方法は詳しくはわからない。』
「だったら我々の世界について知ってる者について教えて欲しい」
『フム…この世界を色々と旅して来た吟遊詩人の彼なら何か知っているかもな!彼ならこの塔の前の広場で楽器を奏でているはずだ。
「⁈あのキリギリスか!」
『その前に…そろそろか……』
そう言ってアリの女王1は駿に抱えられた我が子に目を向ける。
『目覚める時間だな…』
「……………」
「蟻の王に俺はなる!」と空太が駿の言葉を代弁した。
今度はこっちか……と空太は代弁しながら思った。
to be continued in “Because he was a spoiled kid...”
(ぼうやだからさ……)
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35. “Because he was a spoiled kid...”(ぼうやだからさ)




