25. The Ants and the Grasshopper(アリとキリギリス)
25. The Ants and the Grasshopper
両手をあげて危害を加える気がない事をアピールする堂島の前に1匹のアリの化け物が近づいて来て、堂島の前でピタっと止まり堂島の周りをまるで品定めをするかの様にぐるぐると一回りをする。
『アラ?アールヴの民やあらへんやん!』
アリの上顎が動かないまま脳に直接会話してくる様なあの今橋の今パシーに似ている感覚を受けた。
「えっ…と」
堂島は戸惑い声を漏らす
『炎の魔法を使ってはったからてっきりアールヴの民やとばっかり…でも、アールヴの民は随分前に炎の精霊と仲違いしてはったなぁー、それによー見たらアールヴの民ほど色白やないし耳もとんがってないですもんなぁー』
「???」
『まぁでも、女王さんが持てなせっ!言うからにはお客さんに違いあらしまへん!よぅおこしやす!』
とそのアリはそう言うと片手を上げた。
その号令で他のアリ達は一斉に持っていた武器を下ろしてお辞儀をする。
『よぉ、おこしやす!』
脳に直接働きかけられる会話の為か、妙に関西なまり、というか京都っぽいアリの口調に堂島は面食らった。
『そやかて、さっきの炎の魔法!凄かったですなぁー!』
『魔法が使えるって事はアールヴの民と接触しはったんやろか?』
『見た目は、巨人族やのになぁ〜』
「アールヴの民?巨人族??」
聴き慣れない単語に疑問を抱きながらも、人間サイズのアリ?に関西なまりで話かけられさっきまでの緊張感が一気に吹き飛んだ。
『さぁさぁ、皆さん、降りて来てください!』
見た目の威圧感と口調のギャップに戸惑いながら、生徒達に続いて最後までバスに残っていた三原は降りて来るなり、アリに似た乗り物の大顎に掴まれたバスの車体を確認しに行った。
上顎に掴まれたバスの車体には、相当深い傷が付いていると予想していたが車体は全くの無傷だった。
『あぁ、心配いりまへん!作業前にしっかりと養生しときましたからなぁ!』
不思議がる三原にアリが説明をしてくれた。
『大事なお客さんの乗り物、傷付かんよぅ、しっかり養生しときましたからなぁ!』
2回言った!
見ると上顎が掴んでいた部分がブルーシートっぽい素材のモノと養生テープの様な物でしっかりと養生が施されている。
『まごころ込めて運んでますさかいなぁ!』
「引越し社か!アリさんマークの!」
とツッコミたくなったがこの心遣いはありがたかった。
「三原さん、車両大事にしてはるんですね!」
梶が三原に声を掛ける。
塔の前の広場に皆が降り立つと、どこからともなく弦楽器の様な音色の音楽が聴こえて来た。
音の方向を見ると、バッタをモチーフにした正義のヒーローみたいな格好をした人物?が弦楽器の演奏をしていた。
『ああ、彼は以前、働くのが嫌でずーっと遊び回ってはったんですよ!そんで冬のある日、野垂れ死にそうになってたところ、ウチの女王さんがココへお連れセェー言うて!ほんで、それからずーっとここで暮してはりますわ!』
「えっ?あのヒーローみたいな人?キリギリスなの?しかもあの風貌で怠け者なの?てかアリとキリギリスなの?」
『よっぽど居心地がいいんですかね?』
『へぇー、あなた達って見た目はアレですけど、優しいんですね。』
今橋のテレパシーが流れて来た。
『ヤダなぁ!私たちからしたら、あなた方の見た目もアレですよ!てかそんな事言われたら乙女ゴコロが傷ついちゃいますよ!』
「えっ!今橋、今、会話してるよね?てか乙女ゴコロって?メスって事?」
『いやいや!ここに並んでおる者たちみんなオナゴでござるよ!かくゆう拙者もオナゴでござるよ!』
「確かに働きアリはメスって言うからな…それにしてもみんな口調がバラバラすぎて統一感が無いんだが…」
『そらそうだす!こんなみぃんなおんなじ格好させられて見分けがつかんのやからせめて口調でそれこそ個性を出してるんだす!』
「えっ!同じ格好させられて!ってソレって制服なの?」
『当たり前ですやん!今は仕事中なんでこんな格好しとるんですわ!オフの日はこんな格好だぁれも好き好んでやりまっかいな!』
「えっ!オフの日って⁈休みがあんの?」
『当たり前ですやん!えっ?休み無いわけないですやん!休み無かったら死んでまいますわ!そりゃー!昔は、ずーっと働き詰でそれこそ馬車馬の様に働かされてましたけど!ってププっ!馬車馬て!アリやのに!馬車馬て!ププっ!』
大阪のおばちゃんの様に笑いながらバンバンッと堂島の肩を叩いて来る!しかも手が鉤爪みたいなのですごく痛い!
「……イタタタ」
『えっゴメンゴメン!堪忍な!それこそ!働き方改革でっせ!』
『もー今日も早よ帰って制服脱ぎたいわぁー!』
『そやねー、これごっつい重いし!』
『めっちゃ涼しいけど!』
『そうそう!このファンが内蔵される様になって、夏とかはめっちゃ涼しいなぁ!』
『ホンマホンマ!』
『体型がちょっとマッチョになるけど!』
『ソレなぁー』
『わかる!』
とアリ達の会話が流れて来る。
「てか!ワークマンか!」
『ん?ワークマンてなんでんの?寅壱やったら知ってるけど!』
「イヤ、むしろ寅壱の方がマニアックすぎる!」
『えらいこっちゃ!外で立ち話して、お客さん早よ女王さんとこ連れて行かな!女王さん激おこプンプン丸でっせ!』
『えらいこっちゃ!』
『早よ早よ』
そう言ってアリ達は、蜘蛛の子ならぬアリの子を散らした様にその場を離れ持ち場に戻る。
そして案内役のアリが一行を手招きして塔の中へと誘導した。
塔の入り口は、バスを縦にしてもすっぽりと収まるほど大きい。20mはありそうだ。中へと進むと吹き抜けになっていて天井は更に高くなっていた。
奥へと進むと中は先ほどの広間と違い吹き抜けの割に薄暗く、とても静かで更に奥へと進むごとに暗さが増して行った。
月斗達一行は、堂島、月斗を先頭にして、園児達を取り囲む様に固まって奥へと進む。
しばらくゆっくりと一向は案内係のあとを奥へと進むと、円形の塔の中央に円錐状の建物がそびえ立ちその中央にある大きな扉の前に差し掛かった。
扉は、荘厳な飾りを施されルビーやエメラルドといった類の宝飾品が埋め込まれ大層立派な造りになっていた。
塔に入ってからずっと無言のままだった案内係が、中央に備えられたその大きな扉の前で立ち止まり
『この奥に女王様がお待ちです。』
と告げた。
先ほどまでのくだけた感じの会話では無く、やや緊張気味の口調で案内係はそう言うと、扉が内開きにゆっくりと開き、月斗たち一行を中へと招き入れた。




