16. the first team to the farm(1軍から2軍へ) (挿絵あり)
16. the first team to the farm
「先生!ここは異世界って事でいいんですか?」
「わからん!そもそも異世界転移とか異世界転生って何?って話やから!」
「異世界転生ってのは、主人公が死んで、ファンタジーな世界感のあるところで前世の記憶を持ちながら生まれ変わるんですけど、主人公は大体願望満載の能力を持っているんで無敵です!異世界転移は、別世界へそのままの姿のまま迷い込む!みたいなものなので僕たちはソレっぽいですね!」
1年の梶が解説をする。
「まぁここが我々のいた世界と時間軸が違うと言う事は間違い無いな!」
「先生?時間軸が違うって事は、どういう事ですか?」
「ああ、平行世界と言う言葉を知っているか?」
「聞いた事があります!SFなんかの映画や小説なんかに出てくる。」
「そうだな!物理学、いや量子力学と言う学問では割とパラレルワールドの解釈が出て来る。と言うのも我々の日常的な常識を飛び越えてSF的な想像さえしてしまうんだ。量子論での基本的な概念として状態の重ね合わせと言うのがあって、その重なった数の分だけ世界が分岐しているという考え方だ。」
「それってSFぽいですね!」
「ああ、1932年、数学者のジョン・フォン・ノイマンと言う学者が『波の収縮は、物理世界ではなく、人間の意識の中で起こっている』と主張をした。2重スリットの実験の事はみんな知ってるな?」
「………」
『知らんけど』
今橋の思考が漏れる。
「あの…」
生徒たちが黙っている中、運転手の三原が手を挙げた。
「先生、間違ってたらすみません…確か、中学校の授業の時に聞いてすごく不思議だなって思った印象があったんですが…確か…スリットの間を光が通り抜けていったとき、壁に光の干渉縞が出来るってやつでしたっけ?」
「そうです!三原さん、凄いですね!それまで光はニュートンの光の粒子説が支持されてたのですが、トマス・ヤングがおこなったこの実験によって光に波の性質があることが証明され光の波動説が唱えられました。驚く事に光は粒子としての性質と波としての性質を併せ持ち結果として…」
「先生!この話まだ続きますか?学校の授業みたいでみんな疲れてて…」
月斗が長々と講義をする堂島を制した。
『よく言った!月斗!』
今橋の思考もだだ漏れている。
「すまん…そうだな…ついこの世界の理に興奮してしまった…」
「先生!この世界で俺たちの武器になる魔法の事についてもっと話合いませんか?」
月斗がそう切り出すと
「月斗!お前の魔法って断然1軍だよな!」
「1軍?」
「それに比べて俺のちょっと地面が盛り上がるって何?コレ?なんなん?って感じなんですけど!」
陸がそう言うと
「俺のも1番嫌な魔法だな!」
堂島が鏡の様なサングラスをクイッとしながらそう言った。
「指から塩水が出ますからね…」
「でも塩分補給って大事なのでそれはそれで良くないですか?」
月斗がフォローすると
『指から出た水を飲むの嫌だな…』
「………」
「でも先生!俺の火球にしても先生の海水にしてもどこから?て言うか身体の中から作られて放出されてるんですか?どういう仕組みなんだ?」
「うむ…我々の世界では、「エネルギー」と言う言葉は、物理学的には物体に変化を引き起こすことのできる潜在能力を表しているんだが…エネルギー保存の法則からは説明が付かない…ここが異世界だから…と言ってしまえばそれまでだが…」
「異世界だからっ!って事でいいじゃないですか?昼と夜が短いのも、重力が弱いのも、魔法が使えるのもみんな異世界だからって事で!だから僕たちはこの魔法を使いこなす必要があるんです!」
1年の梶がそう言うと
「まだ僕と三原さん、太さん、あと
道修先輩と淡路、博労 先輩の魔法がまだわかって無いですね!みんなの魔法やその使い道を把握するのが大事じゃないですか?」
「おお梶!凄いな!」
「道修 空太…絶対アレだ!」
「そうですね!」
「道修、お前はきっと空を飛べるはず!」
「1軍だ!」
「1軍すね!」
皆が一斉に、短髪で背丈も高く体格もスマートな道修の方を見る。
道修が両手を合わせる仕草をすると、直立したまま地面からフワリと20センチほど浮かんだ!
「舞空術か!」
「思ってたのと違うな…」
「2軍か…」
みんなのガッカリ感を感じて道修は、1人その場を離れた。
「淡路 駿!淡路は絶対アレだな!」
「アレっすね!」
「めっちゃ足が早そうだな!」
「1軍だ!」
「1軍すね!」
皆が一斉に昭和のアニメキャラを想像させる風貌の長い前髪で、片目を隠した淡路の方を見る。
運転手の三原に関しては彼に対して既視感しかなかった。
絶対足の速いサイボーグの人だ!と決めつけていた。
「………」
と皆の視界から淡路が一瞬消えたかと思うとまた同じ場所に現れた。
「???」
一瞬の事で皆わからなかったが手には堂島の鏡の様なサングラスと竹刀を手に持っていた!
「なっ!」
堂島が思わず声をだす!
「おお!想像を越えて来たー!」
「足が速いどころか瞬間移動?想像以上だ!」
「1軍の中の1軍だ!」
「1軍すね!」
皆が歓喜していると淡路は肩を震わせながらその場にへたり込みうずくまりながら
「…これめっちゃ疲れます…」
めちゃくちゃ小さい声で呟いた。
「2軍…かな…?」
「2軍…すね。」
「ギリ、1軍…ベンチ…じゃないですか…?」
「豆を植えて稗だな!」
「………」
「陶犬瓦鶏だな!」
「イヤ!2軍のことわざ使われても!」




