10. There are 8 people(8人いる)
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10 . There are 8 people(8人いる)
助手席から降りて月斗が近くに停車したマイクロバスの方に向かう。
派手なマイクロバスのボディには黄色に象の絵が描かれていて吹田山手幼稚園という文字が見えた。
マイクロバスの扉が開き20代半ばくらいの女性が降りて来た。黒い髪を一つくくりにしていて派手さも化粧っけも無いが可愛い顔をしている。
「大丈夫ですか?」
月斗がその女性に声を掛ける。
「ありがとうございます。」
と言うとマイクロバスの中に戻り
「みんな!もう大丈夫だから泣かないで!」
と声を掛ける。
月斗が中の様子を伺うと園児たちが泣いていた。
「トリさんかわいそう!」
「トリさん死んじゃった!」
と言って月斗の事を睨んでいる子もいる。
「みんな!このお兄ちゃんが助けてくれたのよ!」
「トリさんと追いかけっこしてたのに!」
追いかけっこというよりも明らかに巨大な鳥にマイクロバスが襲われていた。
が…咄嗟に火球を放った月斗が完全に悪者になっていた。
「みんな!ちょっと待っててね!」
その女性はそう言うとマイクロバスを降りて来た。
「すみません、助けていただいたのに…」
「いえ…子どもたちが乗ってるんですね。」
「ええ、昨日の朝、家から幼稚園に行くのに乗った子どもたちなんですが…かわいそうに…スマホも圏外になっていて…連絡がつかないんです。」
と言ってスマホを見つめる。
女性の持つやや小さめのスマホにかじられたリンゴのマークが付いていて月斗と同じメーカーだと気付く。
しかし随分と形が違うのが気になった。
「いえ、僕らも今朝バスに乗ってたらココに着いたので何とも…スマホ!随分小さいんですね!」
と言って月斗が自分のスマホを女性に見せる。
「ええ、同じメーカーなのに大きさが随分違いますね。私、先月この機種に変えたばかりなんですけど…その大きい画面…いいですね。」
「先月ってMphone14ですか?」
「いえ…5…です!」
「5って3Gじゃ…??先月発売で6Gのはずじゃ…確か第6世代???」
月斗のところへ駆けつけた堂島がマイクロバスをじっと見つめている。
「先生?」
月斗が声を掛けても暫く堂島が微動だにしなかった。
「………」
「どうしました?先生!」
「吹田山手幼稚園⁈」
と堂島が呟いた。
「???」
堂島はマイクロバスを品定めするかの様に一周りしたあと月斗の横にいるその女性に話しかけた。
「吹田山手幼稚園の先生ですか?」
そう切り出し
「確か…泉穂波さん?」と続けた。
「はい!泉です。でもどうして私の名前を?」
初対面の男性に自分の名前を告げられた泉は困惑の表情を浮かべる。
「なんか近くに市役所と警察署がありそうな名前だなって思って覚えてました。」
「吹田の幼稚園なので父兄の方にも良く言われます…あの…もしかしてこのマイクロバスが行方知れずになってますってニュースでやってました?」
「ええ、今朝もピックアップされてました…」
堂島のその言葉に月斗が反応する。
「あっ!今朝の!でもそれって…」
月斗が言いかけて堂島がそれを制した。
「???」
「泉さん、あなた方がここに来てどれくらい時間が経ちましたか?」
「えっと…出発したのは昨日の朝のはずなんですげど、ここで2回短い夜を迎えたので…スマホの日付では今が9月14日になってます。」
と言って泉は自分のスマホを2人に見せた。
泉の持つスマホの画面には
『2014.9.14 pm17:47』
と記されていた。
「2014年…」
月斗が日付に驚いて呟いた。
「先生…これってどう言う事ですか?」
「ああ、その前に泉先生に俺たちの事を話そうか。」
そう言うと堂島は自分が高校の物理教師である事、今朝、部活の合宿で西宮を出発してここに着いた事を伝えた。
………………………………………………
しばらく沈黙が続く
「それと信じられないかも知れませんがこれを見て貰えませんか?」
と言って自分のスマホの画面を泉に見せた。
そこには
『2024.9.13 』と記されている。
「えっ、どう言う事ですか?」
「驚かれるのも無理はありません、私も信じられませんが、この日付は間違いない事実です。」
「そんな…ここに来てそんなに時間が経って無いのに元の世界では10年も過ぎているなんて…あの子達になんて説明すれば…」
「ええ、ただ…私たちの方がこの世界の10年前に来た!という可能性もありますし。いずれにしても我々の元の世界ではあなた方「7人」は10年前から行方不明になったままです。」
「えっ…先生、今7人とおっしゃいました?」
「ええ、運転手と付き添いの教員と園児5人を含む「7人」と…」
「おかしいわ…人数が違います…大人2人と、子供たち6人の間違いでは?あのマイクロバスには子どもたちを含めて「8人」が乗ってます。」
「8人?1人多い…大人はあなたとバスの運転手さんで2人だけ…子どもが1人多い…」
堂島海里はそう呟くと少し離れた園児たちの乗るマイクロバスを見つめた。




