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伝説へ


「ところでおまえよーーー誰に断ってここで商売してるわけ?ああっ?」

そう言ってリーダー格の男が派手に植物を蹴りあげようとする。

すぐさまマリーが植物をつかみ男の蹴りから守ろうとする。

が、男の蹴りはマリーにあたり思いっきり壁へと吹っ飛ぶ。


「はは、こりゃいいや。自分よりも植物ちゃんを守ろうっていうんだな?それよりよ・・・わかるだろ?なあ?ここで商売してるんだからさ。税金よこせや?どこにある?」


「売り上げはない。今日はまったく売れなかったんだ。だからどこを探しても金はないぞ!」

マリーは口から流れる血を拭い、勇気を振り絞る

当然相手は大人8人だ。体格も筋骨隆々でまして武器も持っている。

万が一にも勝ち目はない。


それに、このお金は大事なお母さんを直すためのものだ絶対に渡さない!


「あーーまあいいや。どうせどっかの箱にでも隠してんだろ?おい、探せ!」

そういってリーダー格の男が首で他の仲間に合図を送る。


「まあ、この辺ぶっ壊すしゃでてきますよ!」

仲間の男が薬草の箱を壊そうとする。


やめろ!あれは家族で一生懸命育てた植物だ。それにあのお姉さんに申し訳ない、もし傷がついたら売り物にならなくなる。


死に物狂いで男に体当たりする。

ドンっ

マリーの渾身の体当たりは思いの他強力で仲間の男と一緒に反対の壁までふっとんだ。

「痛って・・・このくそガキが」

男が捕まえようとするが素早くマリーが逃げる

その間にも他の仲間が商品を破壊する。


・・・「あっ?なんだこれ?」

フッと気がついた仲間の男がコインを拾う


「ボスっっっつ、これ!・・・フロックっすよ!間違いなく。」


しまった、さっき体当たりした際にポケットから落としたのか!

素早くポケットを探るが当然ない


「何?」

ボスが仲間のものを確認しようとする





「やめろおおおおーーーーーーそれに触れるなああーーー」

マリーが全力で奪い返そうとするがひらちとボスに躱される。


「・・おいガキ、おまえには色々きかなきゃならないみたいだな?なあ?どこで手に入れた?とりあえずこれはもらうが・・渡したヤツもしりてぇーなーー?。」


そういって羽交い締めにされたマリーに近寄る

「っつて・・・ボスこのガキすげえ力っすよ。俺ら身体強化魔法かけてるのに・・・3人がかりでやっと押さえました・・」

バタバタと暴れるマリーを必死の形相で仲間が押さえる。


「別にもらったわけじゃない。さっきたまたま綺麗なコインだなと思って拾っただけだ。」

お姉さんがあと少しできてしまう。

どうにかお姉さんだけでも逃げてもらわないと。


「なあ、ガキ・・俺らにそんなこと通用すると思ってんのか?ああ?・・おい、あれよこせや?」

そういっって仲間から剣のさやを受け取る。


「まあ。知らないならそれはそれでいいぜ。臨時収入も入ったしな。だけどおまえがフロックについて何か知ってたら俺たちこまるからなーーとりあえず体に聞いてみることにするわ・・言いたくなった話た方がいいぜ・・・まあ死ぬ前に話してくれや。。なあ?」


そういって仲間の男達とともに笑う。

素早く剣を抜くとマリーに切りつけようとする。


「まずはどこがいい?そうだなまずは足の方から聞いてみようかね」

ヒタヒタとリーダー格がマリーの暴れる足を軽くたたく。


殺される。マリーは瞬時に理解した。

くそっこんなとこで・・・せっかく、せっかく。薬を買うお金も手に入ったのに。

こんなとこで負けていいのか?

負けるな。力を振り絞れ。

なんとか抜け出せ。

いつも見守ってくれたお母さんが目に浮かぶ。

死んだら終わりだ。絶対にお母さんは悲しませない。

無理じゃない。動け動け母さんのために動け。


「くそっおまえらしっかり押さえてろ。動いて狙いが定まんねえだろうが!?」

「いや、今全員の7人がかりですよ。・・魔法発動させてる感じでもないし、たぶん素でこれですよ・・・くっ!おとなしくしろこのガキ異常に力つええ。。」


「まあ、いいや。じゃ・とっとと話たくなりますように急所でも狙いますか・・・俺らのことがばれても困るしな・・あばよ。」


そういってマリーの腹めがけて剣を出す。

これは避けられない。瞬時に思った。

時間がゆっくりに感じる。避けろ!なんとか避けろ!すぐそこまで来てるぞ。

なんとかよ避けるんだ。




ボンっ


その瞬間羽交い締めにしている。仲間7人が吹っ飛んだ。

何が起きたかマリーにはわからなかった。

ただ天上と地面が回ったと思うと優しい暖かみとともに女性の声が聞こえてきた。

「大丈夫ですか?どこか痛いところは?何か他にされませんでした?」


上を見ると女性の顔が見える。

一瞬母親に見えてしまった。それほど暖かな感じがした。

すぐに先ほどのお姉さんと気がつく。

「・・・お姉さん」


「ごめんなさい。席をはずさなければよかった・・・よく今まで頑張ったね・・・」

そういってぎゅうっとマリーを抱きしめる。

マリーもぎゅっとしがみついた。

おそらく露天でマリーの分のお弁当を買ってきてくれたのだろう。

それで殴ったのか吹っ飛んだ仲間に弁当の袋がついている。


「なんだなんだ・・母親の登場ってか?ああ・・・手間が省けてマジよかったわーーおまえらいつまで寝てるの?さっさとこの女ふん縛って、金巻き上げるぞ・・ああ?どうした?」


仲間はすでに気絶しているのか動かない。

7人を一撃で?こいつらは元Aランク級の冒険者だぞ?

称号も全員が上級だ。このメンバーなら高ランクのモンスターと戦ってもほとんど勝てる。

それをたかだが凶器でも何でもない弁当で?

辛うじて仲間の一人から一瞬声が聞こえた。

なぜか仲間が震えている。


「・・・ボス・・・」

その仲間の声もすぐに消える



・・・・


・・・・


【・・・おまえがこの子を傷つけたのか・・・・】




はじめて聞く声だった。後ろから声が聞こえる

心の芯まで氷つくような声だ。まるで心自体に会話しているかのように。

地獄から這い出た声と行ったほうが良いだろう。



【・・・植物も・・これが育つのがどれほど大変か・・・】




体が動かない。無意識に体が震えているのがわかる。

あたりも暗闇に包まれていくかのようだった。


【・・・・あの子の気持ちを踏みにじったことを地獄でわびろ・・・・・】


そこで見てしまった。

この世のどんなものより恐ろしいとか、そんな考えすら消え去るものだった。

気づいた時には視界は消えていた。




・・・


あれからどれだけ時間がたったのだろう?

マリーがお姉さんに抱かれてから意思が薄くなった。

だが途中あの男達がバタバタと倒れていくのは目にした。

きっとお姉さんが倒してくれたんだろう。



「もう大丈夫よ」

あたりは大通りのようだった。日は暮れ所々に灯がついている。

丁度今近くの大きな橋の上にさしかかった水面に家の灯が反射する。

あの男達は衛兵を呼んだからもう今頃捕まっているとのことだった。




しまった。商品をぐちゃぐちゃにされて渡すものがない!

すぐに渡せるものだけでも見繕わないと

「ありがとうお姉さん。でも商品だめになっちゃったんだ。でもせっかくだから持っていってよ花たちもお姉さんに貰われた方が嬉しいだろうし、すぐに大丈夫そうな植物取りに戻るね。」

そう言ってマリーはお姉さんから降りようとする。

あたりに人はもういない。お姉さんの足音だけがに響く。


「大丈夫よ。ちゃんと持って来たから。」

そう言ってゆっくりとマリーを地面に下ろす

後ろの方には見知ったリヤカーと商品が見えた。


お姉さんが引いてきてくれたのか?

お姉さん強いな、結構重たいはずなのに。


ん?

あれ?


だが、ここで異変に気がつく。

なんで普通にリヤカー引けるんだ?

ボロボロに壊されたはずなのに?

商品の箱も植物も綺麗なままだ。


あれだけ踏みつけられたのに。お姉さんが直したのだろうか?この短時間で?

100歩譲っても植物たちが元気そうなのは納得できない。


「はい。これが代金ね。家はどこかしら?この辺から近いのかな?」

そういってフロックが差し出される。


「受け取れないよ。お姉さんに迷惑かけちゃったし。なんで元に戻ってるのかはわからないけど、品質だったよくなくなっちゃった・・・と思うし。」


「受け取りなさい。あの植物や商品はそれだけの価値があるのよ?特にマリー草あれは本当に価値のあるものなのよ?良いマリー草を育てるのは難しいの。品質を保つのはなおさらね?私の知ってる神がかった称号の持つ道具屋さんでも難しいのよ?」


なんで道具屋さん?そこは植物屋さんとかじゃないのだろうか?

何にせよ・・・ありがとうお姉さん。

いつでも私を励ましてくれる。お世辞でもとても嬉しい。

お姉さんの行為に甘えて、ちょっとここから家が遠いいことと、お母さんのために来ていることや経緯を話した。


「そうだったのね。すぐに向かいましょう。お母さんの状態が心配だわ・・・方向はどっちかな?」

マリーが家の方向を指指す。

「でも、結構遠いよ。私でも2日はかかるし・・・おわっ」

お姉さんがマリーを再び抱える。


「しっかり捕まっててね?」

そういってお姉さんが飛んだ。言葉通り飛んだ。

数百m下に夜の都市の輝く灯が見える。

自分とお姉さんが浮いていることに気がつくのにしばらくかかった。

お姉さんが微笑んでる


「じゃっ行くわよ」

お姉さんが宙を蹴る

たぶんものの5秒程度だったと思う。

だがマリーにはそれが何時間にも感じられた。

実際にそれだけかかっていたのかもしれない。


急にあたりに星々が現われ、遠くに幾つもの銀河が渦巻いているのが見える。

それがもの凄い速さで流れるのだ。とても綺麗なところだった。

夜空の上を飛んでいたのかな?

その割には・・・上だけでなく、下や左右全ての方向に星々があるような?

たまに建物も見えるし。確認しようとするが一瞬で風景が流れる。


「ああ、そうか・・・」マリーは納得した。

ここが「星の都」だったのか・・・お姉さんはその使いだったんだね?

「・・・じゃあ、一つだけ願いが叶うなら、お母さんが治るといいな・・・・」

お姉さんには聞こえないくらいの声でつぶやいた。

カシアお婆ちゃん・・・伝説は本当だったよ



それからは瞬く間に時間が過ぎた。

あっと言う間に自分の見知った家に到着した後

お姉さんがくれた「超級病薬」をお母さんに飲ませると瞬く間によくなった。

効能的に絶対「超級病薬」でないとわかっていたが、それよりも元気になったお母さんに抱かれながら色々話すことに夢中だった。視界の片隅にお姉さんがそっと玄関から出て行くのが見えた。


「お姉さん!」

マリーが追いかける

あたりで夜の虫たちが鳴くのが聞こえる。

時期にお父さん達も帰ってくるだろう。

お父さんなんて言うかな?


「本当にありがとう・・・」


「まだ、お母さんの調子も完璧じゃないからしっかりね。油断しちゃだめだからね?」

暗がりでお姉さんの輪郭が見えない


「うん・・」


意を決したようにマリーが口を開く

「・・・お姉さん。・・・・お姉さんの名前なんていうの?」


お姉さんが近寄ってくる。

私の目線までかがむと悪戯っぽく笑う



「セリナよ・・・マリー?今日のことは秘密だからね?」


そう言って優しく頭を撫でられたかと思うとお姉さんの姿は消えていた。





後にこのマリーが「マリー商会」として誰もが知る一大商会に成り上がる。

そして以後。

子孫もろとも長く繁栄が続いたという。




・・・・・・・



「セリナさん、今日も良いのが手に入ったら届けに来たよ。」

「星霜の間」にあるセレナの薬草林までマリーが届けに来た。


「ありがとう。そこに置いといてーー。暑かったでしょ?さっきカフェの準備していたから、時間があったらよっていくといいわよ。」セリナが薬草林から出てくる。


あれから何だかんだとマリーとは長い交流が続いている。

元々マリーが育てていたのはただのマリー草ではなくフォレストエルフ独自のマリー草だった。

見た目は粗悪なマリー草に見えるが他のある薬草と混ぜると異常に良質な効果を発揮する。

当然薬師のセリナが見逃すはずもなく。以後定期的にここまで届けて貰うことにしている。


「おおーーー今日もきたのか?商会の調子はどう?」

薬草林から麦わら帽子を被ったオーガスがでてくる。


「んーーーなんとか軌道に乗ったとこかな。・・ところでお兄さんその格好意味あるの?お兄さんなら魔法で熱さも遮断できるでしょ」

ここセリナの畑は頭上に青空が広がりサンサンと日光が照らされる何ら地上の上空とかわりない。

ただお兄さんが萎えを植えるために掘った穴の底からは果てしなく続く星々がチラッと見えるので。ここが普通の場所ではないことがしっかりとわかる。


地平線も見え入道雲も見える夏の風景がいつもここが普通の場所でないことを忘れさせるので困る。


「いや、わざわざそんなの使わないよ。夏の農作業といえばといえばこの格好だろ?」

そういって三角に切られたスイカを貰う。


「いや、いいんだけどね。お兄さんすぐ格好から入るよね。それにこのスイカも伝説級の代物でしょ?ポンポン渡していいの?・・まあ・・・食べるけどさ?」

それこそ時間が経っても未だに伝説級アイテムをおやつ感覚で渡してくるのには慣れない。


「まあ、マリーが食べる分には問題ないだろ。」

お兄さん思考も体もぶっ飛んでるからなーー。

シャクシャクといい音をさせながらスイカを食べる。


「セリナ、そろそろ休憩にしようぜ?マリーもきたことだし。」

「そうね、じゃ皆で「冥土カフェ」にいきましょうか?」


素早く道具類を渦巻くアイテムボックスに投げ入れ

カフェへと向かう。


「冥土カフェ」はこれまた思考のぶっとんだ人が経営しているカフェだ。

何でもマスターのアーサーとその奥さんは昔オーガスに助けられた一般人だったとか。


「一般人って・・まあ・・信じろっていうのが無理だよね?」

そういってカフェの軒先に階段を上る。


だけどあのときセリナさんに出会わなかったら、もしお兄さんに出会わなかったら今の自分はいないだろう。


「ん。何かいったか?」

オーガスが尋ねる


「何でもないよ!いつもありがとうね。」

マリーが笑みを浮かべてカフェへと入っていく。



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