8話 魔王さまは証明する⑤
「と言うことがあったんだ。」
俺はあの子との思い出をしみじみと語った。
「それってやっぱあんたが意識してんじゃない!って言うかチョロいわね!あんた!」
「はぁ?あいつが『ありがとう』とか『よろしく』とか言わなければこんなに意識することは無かったんだぞ!それなのに!」
「いや、それ、ただの社交辞令でしょ!というか聞いたことあるわ。大抵のコミュ障に対してなら『おはよう』っていうだけで落とせるって。理工学部の姉が。」
呆れた目で神凪が見てくる。
確かに社交辞令だけで堕ちたならチョロすぎるだろうが.......
「それだけじゃないからな!もうそれからと言うもの、あの子の一挙手一投足が気になって仕方ないんだ!寡黙なところとか!髪がショートながらサラッサラでそれはもう鷲掴みにしてすううううううううううううううううってしたいとか!」
「気持ち悪!?」
神凪...なんだねそのゴミを見る目は。
「もう最近なんてあいつは俺の循環器系にまでダメージを与えて来やがるんだぞ。あいつを見ただけで一時的な高血圧や狭心症に......!どこまで俺に意識させようとしてくるんだ!」
「そ、そ、そ.......それはもう.....」
急に神凪ははっと何かに気付いたような表情になった。
「それは何だよ。」
「........短気で喧嘩っ早くて乱暴なあんたでも好きな人が出来るのね......。」
「おい今さり気なく俺をdisらなかったか?」
短気で喧嘩っ早くて乱暴なのは神凪のほうだろ。
「って魔王さま!魔王さまにも遂にその"好き"って人が出来たんッスか!?」
「好きな人ねぇ...俺があいつの事を...あいつを!?」
「魔王さま!顔が赤くなっているッス!風邪でも引いたんッスか!?」
あかんまた血圧が高くなってきた!やつめ!アウトレンジ攻撃とは卑怯な!
一体どこから攻撃を!?
まさか攻撃されてない!?
自分の体の異常!?
いやこの特殊な生理活性を伴う心理状態を好きというのか!?そういうことなのか!?
「こりゃ参ったわね...。それでその子はなんて子なの?」
「小姫 有栖っていうんだが」
部室は静寂に包まれた。
応寺原は知らかいだろうから黙ってしまうだろうが、なぜ神凪も?
「お、おう........。よりによってあの子ね......。」
神凪は何故か眉毛をピクピクさせている。
「その小姫って人、どんな人なんッスか?」
それはもう可愛いくて寡黙で真面目な...
「沙汰以上のコミュ障よ。」
「なんだって!?小姫さんも俺と同じ病気に!?」