4話 魔王さまは証明する①
休日が明け、月曜日の放課後。
今日も「歴史関係ない同好会」へ足を運ぶ。
なぜ、同好会に入れられたかってのは、廃部の危機にあったからが一番の理由なんだろうが、俺や応寺原が神凪家の監視対象にあるからってのもあるのだろう。
そんなことはどうでもいい。早く気の合う応寺原と話したい!
ーガラガラ
部室のドアを開けると、
「よう沙汰!」
「あっ!魔王様!チーッス!」
今日は応寺原が俺より先に来ていた。
「ちーっす、応寺原。今日は少し暑いな。」
ーバンッ
机を叩く音がする。
「ちょっと......なんであんたは私には404 NOT FOUND状態なのよ!」
「いや、お前が見えてない訳じゃないんだが、応寺原と話したかったというか.......。」
「魔王様...!このオーデル!感謝感激ッス!」
「ちょっ、応寺原!前世の名前出てるから!」
そう。俺達はなるべく前世の名前を使わないようにしている。なんか前世の名前を使うと第三者から気の狂った人間に思われるから辞めておけと神凪から言われているのだ。だが、応寺原にとっては、俺を魔王様と呼ぶことだけは辞められないらしい。可愛いやつだ。
「まあいい。今日の俺はそんな話をしに来た訳ではない!皆聞いてくれ!」
「どうしたのよ改まって。」
「なんッスか?魔王様!」
「実は.......この休日ずっと考えていたんだが、俺はやはりコミュ障ではないと思う!」
俺は高らかに宣言してやった。
応寺原はそーだそーだ!と相槌をうっているが神凪はジト目でこっちを見てくる。
「それだけ?」
「それだけとはなんだね!大切な事だろ!」
「もしもあんたがコミュ障じゃなかったらきっとどれだけの人がコミュ障で無くなるのかしらね..........へっ...」
「なにシミジミ語ってんだ!よく考えてみろ!ここはこの前現代文の先生が言っていたコペルニクス的転回だ!俺がコミュ障なのではなく、周りの皆がコミュ障なのでは........!そうだ!俺じゃなくて周囲のやつがちゃんとコミュニケーションが取れないから俺が困惑してるんだ........そうか........そうだったのか!」
「コペルニクス先生に謝れ!」
「はっ...ッス!?今初めてこの部活で歴史上の人物の名前が出たんじゃないッスか!?」
神凪は全く理解してくれている様子がない。ならば...
「じゃあお前の考える、この世で最も難易度の高い会話はなんだ?」
「難易度の高い会話?」
「そうだ。コミュ力お化けのやつでも心臓がバクバクになっちまうような最高難易度の会話だよ。俺はその会話を成功させてコミュ障じゃないことを証明してやる!」
俺は拳をグッと握って神凪の方を真剣に見る。すると...
「..........何!?あんた誘ってんの!?」
急に神凪は慌てた様子で取り乱した。
どうした。様子がおかしいぞ。もしかしてこれは
「なんだ!?心当たりがあるんだな!」
「え!?い、いや.......あるけど.........ちょっとそれは...」
やがて神凪の顔はみるみる赤くなり、彼女は足をジタバタさせながら両手で顔を覆い隠した。
なんか苦しそうだが、今はかまっている暇はない!
「どうした!?言え!」
「言わないとダメなの!?」
「言え!!!」
「え、えっと...こ.........」
「こ?」
「こ、こ、こ、こ、こ、こ、こ、告白とか!」