3話 魔王さまは異性と話せない③
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」
「おい神凪。何がおかしい。」
コミュ障だと思うか?の質問に、急に神凪が笑い出した。
「何ってそりゃ!あんた自覚ないの!?」
表情を崩し大笑いする神凪。
こいつ殴ってやりたい!いや、殴れたことないけど!
「つまりやはり俺はコミュ障だというのか?」
「そんなことはないッスよ魔王様!魔王様はコミュ障というより寡黙でクールな御人なだけッス!」
「応寺原.......お前というやつは......」
こんな日本とかいう恐ろしい世界にまで付いてきてくれた秘書オーデント。俺はなんて素晴らしい部下を持ったんだ!
「いや、あんたは正真正銘のコミュ障よ。」
「テメエ!人様が感極まってる時にゴチャゴチャと.......!」
神凪はもう少し空気を読んでほしい物だ、ヤレヤレ。
「いや、だって、今日だって前の席の女子に消しゴム拾ってもらった時、あんた、凄い挙動不審だったでしょ。」
「見ていたのかアレを.............だが、俺は大体との男子となら話せるぞ!」
「まぁコミュ障にも種類があるからね。あんたは女子と話せない型のコミュ障。クラスではそういう共通認識があるわよ。」
なんだって......皆、俺の事そんな風に思っていたのか。確かに成島に言われたのと同じようなこと言ってるしな。
「でも魔王さま」
「おう。なんだ?応寺原」
「神凪さんとは普通に話しているじゃないっスか。」
「応寺原ぁ...お前何を言っているんだ?俺が会話出来ないのは"女子"であって神凪は男だから気軽にはなああああああああああああああああ痛い!腕が!腕が絶対に曲ってはいけない方向に!タンマ!ギブ!ギブ!ギブ!」
神凪は俺の避ける暇を与えずに右腕で肩を抑えて、もう片方の手で俺の左腕を鷲掴みにし、関節と逆方向に折り曲げようしてきた。
「誰が男ですってぇ!?」
「すみません!神凪様は清楚な女性!お美しい!神凪様可愛い!」
「へ!?可愛いなんてそんな簡単に言うなしっ!」
神凪は急に力が緩めて顔を真っ赤にさせた。
いや、こんな暴力女に清楚さがあるわけないだろ。
.........これは口に出すのは辞めておこう。
ーキ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン
鐘がなった。この収容所ではこの謎の鐘の音に従って動いているらしい。
この鐘は部活を終わらせ、全員下校しろという合図だ。
「結局今日も歴史の"れ"の字もなかったッスね」
そう、この歴史研究同好会はこの世界の歴史について文献やらを読んで知識を深めようという部活(正確には部活ではなく同好会という部類らしいが)なのだ。
元々神凪が入っていた部活だったのだが、3年生が引退したことで部員が神凪1人になり、廃部の危機に陥ったらしい。
それで俺達が数合わせにと半強制的に入れられたのだが、
「俺が入ってから一度も歴史についての活動をしてないな。」
「う、うるさいわね!あんた達はいつも来るのが遅いからそれまで私は歴史について調べてたんだからね!」
そういうと神凪は自慢げにスマホを取り出しそのサイトを見せてきた。
"『なんJ世界史部』 第一次大戦で「セルビア33-4オーストリア」だった事実wwwwwwwwwww"
「おいゴラ。俺もこっちに来て2ヶ月、そろそろそういうネット界隈のことも分かってきてんだからな!」
「てか神凪さんもスレッド立てたりするんスね。」
「ほんとだ。これ神凪のたてたやつなのか。ってコメント0件じゃねーか!ギャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハははははあああああああああああああああああああああああああああああああああ指が!指が手の甲にくっつくううううううううううううううううううううううううううう」
神凪は、今度は俺の指を人質にとると、関節と逆方向に曲げようとしてくる。
こいつ...魔王より魔王してやがる。
「ほら帰る時間よ!帰るわよ!」
「分かった!帰るから!帰るから手を離せ!」
明日は土曜日。今週も学校で精神をすり減らした。俺は疲れた、と肩を落として帰途についた。
因みにだが、俺の住処は関東大震災も耐えて来た見たいな風貌のあるボロアパートの一角だ。
一応、何故か色々面倒を見てくれる神凪家から月5万が支給されている。
しかし、バイトは学校があるから沢山は出来ない。つまりはリッチな場所には住めないってこった。
ってことで神凪家から紹介された、立地◎(駅まで徒歩5分、学校まで10分、スーパーまで2分)、ネット無料、敷金礼金無し、月1万の格安物件に住んでいる。
勿論魔王城での暮らしとは天と地との差だが、調べてみると俺の住処はコスパが異様なほど良すぎることに気付き始めた。そこは流石神凪家、で済ませて本当にいいのだろうか.........。
いやだって、部屋は6畳、空調完備で、外装はともかく内装はリニューアルされたばかりで綺麗。IHもあってバストイレ別ですよ?
なんか備考欄に、汚い外装のためか『心理的瑕疵あり』って書いてあったがそれ以外に気に留める点はなかった。
まあ、俺はこの世界でも恵まれた方みたいだ。そう思い聞かすことにして今日もボロアパートで寝泊まりするのだった。