2話 魔王さまは異性と話せない②
放課後。
生徒達は帰ることも出来るのだが、何やら生徒同士で親睦を深めたいのやら、部活動なるものをする生徒もいる。
俺はそんなものに興味はないのだが、無理矢理「歴史研究同好会」とやらに入れられた。
「おう沙汰!遅かったわね。」
そいつは長い黒髪をふわりとさせながらの振り返ってこちらを見て来た。この女はクラスメイトであり、クラス委員でもある神凪 紗千とかいう魔術師だ。色々あってこいつとだけは気軽に話せる。女子だけど。いや、俺の中でこの暴力の塊は女子じゃない。
周囲の人間は魔術師だとか信じていないようだが、こいつは確かに魔術師で、「東洋魔術師」という派閥に位置しているらしい。
そして、俺が転生してきて早々、俺の魔力を封印して、何やら彼女の家族の持つ"国家権力"というらしい強大な魔力を使って俺は高校生にさせられたのだ。
だが、こいつを殺せば俺の魔力の封印は解かれ、晴れて俺は魔力を取り戻せる!
「よう神凪。実は顧問の先生がこれをって」
俺は徐に封筒を神凪に渡した。
「なんだ沙汰、そういうことね。中身は...ってなにこれ白紙じゃない!?」
「ふんっっっ!油断したなあああああ神凪いいいいいいいいいい!この俺が顧問なんかのパシリに付き合うと思ったかあああああああああ!喰らええええええええええ!魔王式超ウルトラハイパーサイヤ最強最悪ドリルサイクロンパァンチイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ」
よし渾身の右フックが決まった!これであの神凪もひとたまりもないだろう!...........
と思ったが、
ースカッ
俺の拳は空を切る。
「消えた!?」
いや、消えたのではない。神凪の野郎は咄嗟にしゃがみこんでいたのだ。
そして俺の空をきった腕はガッシリと神凪に掴まれ..........
「あんたも懲りないわねえええええええええええええええええええええ」
「ぎゃあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"」
俺は背負い投げをされ部室の壁に思いっきりぶつけられた。
こいつ、なんて力してんだ........やはり見た目は女で華奢な身体をしているが、魔法で女の顔形を作った男に違いない!
これで2桁はこの野郎に戦いを挑んだが全敗だ。くそっ!
「これで未だにあんたの勝率は0割!ソフトバンク相手の菊池雄星より勝率悪いじゃない!」
こちらを見てくる神凪の顔は勝ち誇った顔。窓から入る光の逆光にもなってラスボス感が半端ない。
俺が歯を食いしばって悔しがっていたその時、部室のドアが開いた。
「チースッ。補習で遅れたッス。」
この男はオーデントだった男だ。軽い男だが以前は俺の秘書としてよくやってくれていた。俺が倒される時にこのオーデントも勇者カスによって"ついでに"殺され、この日本に転生してきたのだ。現在は応寺原 日所と名乗っている。
「あれ?魔王様、またやられたんスか?」
「お......おい、オーデ...応寺原...肩貸してくれないか.....た.....立ち上がれない.......」
俺はピクピク身体を痙攣させながら応寺原に頼む。
俺は彼に立たせてもらうと、今日ずっと聞こうとしていたことを口に出した。
「なあ、応寺原。俺はコミュ障だと思うか?」