6話 魔王さまは祓いたい②
俺は6畳間の自室に有栖を招き入れた。勿論異性を自室に入れるのは初めてだ。
言われてみれば俺の部屋って確かになんか暗い。いや、電気の光も充分だし、太陽の光もちゃんと入ってくるんだが、雰囲気に重みがある。
有栖は俺の家に寄るから帰りが遅れる、と両親に電話をかけていたが、電話が終わると俺の部屋をグルリと見渡した。
「部屋、キレイにしてるんですね。」
整った部屋に有栖は感心してくれた。
ほんとは散らかすほど物がないだけなんだけどな。
「両親はどちらにいるんですか?」
「あー、一人暮らしだよ。」
「え!?高校生で一人暮らししてる人って現実に居たんですね。」
帰路では話すことすらままならなかった俺達だが、幽霊の一件ですっかり普通に話せるようになっていた。こればかしは幽霊に感謝だ。代わりに今日死ぬのかもしれないけど!
「あー、夕飯作るからちょっとテレビでも見て待っててよ。」
「夕飯!?いいんですか?頂いちゃって。」
「他人を部屋に入れといて何も出さないってのも気が引けるだろ。」
「...では遠慮なくそうさせてもらいますね...!」
今日の夕食は焼き肉にしようとしていた。
が、焼き肉しにたら元々有栖を部屋に入れるつもりだったのでは?と思われそうな気がする。
そんな気で焼き肉にしようとした訳じゃないがそう思われるのは恥ずかしい。
だって一人で焼き肉ってするのか?
いや、俺はする気だったんだが、なんか世間様では友人とかと複数人でいるときにやるような物と思われているのでは?って思え始めた。
焼き肉以外に作れそうなもの.......卵ならあるな。
卵焼き?目玉焼き?..........いや、朝御飯じゃあるまいし。
あとは.......野菜炒め?.........いや地味だろ。
ケチャップあるし、オムレツ?.........でも作ったことないしなぁ失敗したらどうしよ
焼き肉、朝御飯、野菜炒め、オムレツ........どうする。4択だ......
ここはテレフォンを使うときが来たようだな。
《もしもし?もしもし?沙汰だが!》
俺は神凪に授けられたテレパシーを使って聞く。
《え?沙汰?ちょっと待って!...あ!コラ応寺原!何サボってんのよ!》
《ヒイッス!もう充分キレイじゃないッスか!僕の部屋!》
《これのどこがキレイなの!?一体何匹潰れたゴキブリの死骸が出てきたことか!》
《うぇ〜んッス!神凪さんの鬼ぃッス!》
応寺原の部屋、どんだけ汚かったんだ。
《悪いわね沙汰。》
《お、お前も大変そうだな...》
《冗談抜きに大変よ。...で、何かあったの?》
《実は......》
俺は夕飯の悩みを全て話した。
《焼き肉でいいでしょ!》
《え?でも焼き肉にしたら》
《考えすぎよ!そんな変な考えてしてたら永遠にコミュ障卒業出来ないわよ!》
《そ、そうか...普通は気にしないか。.......ありがとう。参考になったよ!》
《お役にたてて嬉しいわ。》
焼き肉でファイナルアンサーみたいだな。




