4話 魔王さまとテレパシー③
「あの........小姫さん.........これから有栖.......って読んでもいいかな........?」
俺は顔を赤くしながら小姫さんに恐る恐る聞いた。
「え!?..........も、もちろんです.........!あ、じゃあ!.......私も沙汰君のこと、麻央って呼びます!」
ほんとに名前で呼び合うことになってしまった.......!
今日から小姫さんじゃなくて有栖って呼ばないと行けないんか!
有栖有栖有栖有栖有栖有栖有栖有栖有栖有栖有栖有栖有栖有栖有栖有栖有栖有栖有栖有栖有栖有栖有栖有栖!!!!!!!
「あの.......麻央....くん。」
「なんだい?.........有栖.......。」
俺も有栖も恥ずかしさで耳を赤くし、気を取り直す為に横を向いた。
そしてそのせいで会話が途切れてしまった。
《くっ.........イチャイチャしやがって.........!》
《おい!お前のせいで変な雰囲気になっちまったぞ!次はどうする!?》
《次......ねぇ......実は私、あの子のことよく分からないのよねぇ........何を話すべきかしらね》
《はぁ!?お前、部室出るときに大船に乗った気でいなさいとか言ってただろ!?》
《わ、分かってるわよ!今考えるからちょっと待って!》
その後も神凪に言われたように、学校の話とか、時事ネタとか色々な話を振ってみたがどうにも盛り上がりにかける。というか向こうが楽しんでいるようには感じられなかった。
俺の話に対して笑いを返してくれたりはしたが、溢れ出る作り笑い感。
《神凪。これほんとに大丈夫なのか?心配になってきた。いや、はじめから心配だったけど。》
《私もちょっと混乱してきたわ........》
《魔王さま!頑張るッス!》
《頑張るもなにも頑張っているんだが...》
そして遂に話すことがなくなった。
今まで気にも留めなかったが、気がつけば夕日が出ていた。スズメとカラスの鳴き声が響き渡り、夕方の冷たい風が二人の間を吹き抜ける。
そして気まずい雰囲気のまま俺の家の前まで来てしまった。
《このままじゃ不味いわね。仕方ない。この手は使いたくなかったけど。》
《なんだ!?まだ打開策があるのか!?》
《えぇ...まぁ...。老若男女、大体の人間が興味を惹かれる話題。それはホラーよ!ってことでちょっと『ここら辺で奇妙な噂聞いたことない?』って聞いてみて?》
《お、おう!やってみる!》
「........あの.......も、もう俺の家の近くまで来ちゃったんだけどさ......」
取り敢えず、自然な流れを自分で考えて話を切りだそうとする。
「っっっっ!?すみません!私......全然話せなくて.........」
いや、君の隣に居るだけで何故か幸せになれるよ!!!
っとそうじゃない。
「い、いやいや!....俺の方こそ会話.......に慣れてなくて.....ってそうじゃない......あのー......ここら辺で奇妙な噂聞いたこと......とかな.........い?」
まだ話しがぎこちないが何とか言い切った。
有栖は「奇妙な噂......?」と口ずさむと顎に手を当てて考えるポーズをした。
そして暫くたって思いついたように言った。
「そ、そういえば聞いたことありますっ!確かここら辺のアパートの一室で、2年くらい前に自殺した女性がいるとかっ!それでその女性の入居期間が70日とかで、その後、その部屋に入室した入居者達は全員70日後に不可解な死を遂げているとか...!」
有栖は興味ある話題だったのか、今日の会話の中で一番流暢に話した。
俺も負けちゃいられねぇ!
「へ、へぇ...。それでそのアパートの一室ってどこら辺にあるの...?」
「えっと確か......」
有栖は周りをキョロキョロして見渡したあと、あるアパートの一角を指差して言った。
「あ、あそこです...!」
へえ、こんな目の前に。..........って
「俺の自宅じゃねえかあああああああああああああああああ!!!!!」
「えええええええええええええええええええええええ!?!?!?」