2話 魔王さまとテレパシー①
「じゃあ先ずはこれを身体につけて」
神凪は自身のバックから何やら怪しい御札を取り出して俺と応寺原に渡した。
バックの中には他にも巫女装束などが入っている。
こいつ、いつもそんなもの持ち歩いてたのか?
「御札を付けるのはどこでもいいわ。直接身体に触れるなら。」
どこでもいいとは言え、外から見える場所にこんな御札を貼っておくのも気が引ける。
.......よし!腹にでも貼ろう。
先ずは制服のYシャツをめくって.......
「ちょっと!あんたはもっと恥じらいなさいよ!」
神凪は俺の腹が見えると咄嗟に目を隠した。
「別に腹くらい見られたって気にしねーよ。」
「私が気にするのよ!」
神凪は駄々をこねるから仕方なく、応寺原と一緒になって、二人の身体で隠し合いながら札を貼りきった。
「終った?じゃあ今度は私が貼るから。」
「おう!」
「私もお腹に貼るからさ。」
「どうぞご自由に。」
どうぞやって、と言っているのに神凪は動かないどころか眉毛をピクピクさせ始めた。
俺は試しに「どうしたんだよ、早くやれよ」と言ってみたら
「お腹に貼るから目を伏せるか廊下に出ろってことよ!」
神凪は一回転して勢いをつけると膝蹴りをかましてきやがり、見事に俺の腹に命中した。
「グヘエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ」
その後の意識は暫くない。
起き上がると神凪は既に札を貼り終えた様子だった。
こいつ...!俺が気を失っている間に...!
《いつまで寝てんのよ。小姫さんを待たせちゃうわよ!》
誰のせいだと思ってんだ!
...ってなんだこの違和感........
《は!?神凪の台詞が直接俺の頭の中に!?》
《ふっふっふっふっふ。気付いたようね。これで札を貼っているもの同士でのテレパシーが可能なのよ!》
《ということは応寺原もか!?》
《はいッス!》
す、凄い.......!これが東洋魔術なのか!?
《これを使って私達がアドバイスを伝えてあげるから、あんたは大船に乗った気持ちで小姫さんと帰りなさい!》
神凪の声はいつとなく抑揚がついていて誇らしげだ。
《おお!ありがてえ!俺、頑張るよ!》
俺は部室を出て廊下に出た。小姫さんとはこれから校門で待ち合わせだ。
廊下の窓は新しい空気を入れるために開いていた。俺はその新鮮な空気に包まれて、戦いの舞台へと足を運ぶのであった。