1話 魔王さまの想定外
「では次の恐怖郵便を読んでくれ。」
「はい!ごろうさん!
......これは俺が高校2年生の初夏に体験した話です。.......
もうひとりの住人
(仮名) 魔王
「なんですってええええええええええええええええ!」
体育館裏から一度部室に戻ってきて事情を説明すると、神凪が叫んだ。
「おい。いくらなんでも驚きすぎだろ。」
「そうッスよ!神凪さんが魔王さまの魅力に気付いてないだけッスよ!」
「ま、まぁ.........コミュ障同士で惹かれ合う所でもあったのかね、それともコミュ障同士チョロかったのかね.............。」
何があったか説明しよう。
先ず、色々あって俺は神凪にコミュ障じゃないことを認めさせるため、小姫さんに告白しに行った。
神凪も、そして実は俺も、結果は爆死しかありえないと思っていた。そりゃそうだ。一度きりしか話したことないし。
が、結果はOK
と言うことで神凪はこんなにビックリしている訳だ。
「もう私の負けだわ..............。2つの意味で。」
神凪は信じられないという顔で頭を抱えながら蹲っている。
実は問題はここからだ。
「それで魔王さま。この後どうするんッスか?」
「それがな.........」
俺は一度ツバを飲んでから続ける。
「なんも考えてなかった!どうしよう!取り敢えず一緒に帰るって言っちゃった!」
そう、後先考えずに行動してしまったのだ!
「どうすればいい!誰か!誰かカップル経験者は!?」
俺は廊下に出て誰か知り合いがいないか探す。
するとすぐ目の前に成島がいることに気付いた。
「おい成島!」
「おん?沙汰やん!どうかしたんか?」
「お前、彼女居た歴とかあったりするか?」
「え?ないが?」
この童貞が!クソッ!
俺はまた部室に戻って応寺原に聞いた。
「そう言えば、俺って魔王の時、女とも面識あった...というか婚姻していたような気がしたが、何してたっけ。」
「あー........えっと確か魔王様がビチャビチャにされていたような覚えがあるッスね.......」
「え!?俺が受け!?」
「はいッス。それはもう粘液まみれに..........。」
「粘液!?」
「確かトードの娘に」
「女じゃなくてメスじゃねえか!」
因みにトードとはカエル系のモンスターだ。
「でもでも確か神凪さんって1日1ラブレター貰ってるって聞いたことあるッス!」
ん?なんだって?
なんか神凪がどうとか言っていた気はするが恐らく俺は何か聞き間違えた
はずだ!
「すまん。ちょっともう一回言ってくれるか?」
「ですから、神凪さんって1日1ラブレター貰ってるって聞いたことあるってことッス!」
「なんだと!?あの神凪が!?まさかそんなわけ!?おい神凪!それは本当か!?」
神凪はまだ半泣きで項垂れていたがそれを聞いて
「まあ.........違うと言ったら嘘になるけど...........。」
マジかよ!?
だが、となると恐らく神凪は彼氏を持っていたことも...?
「おい神凪!お前、誰かと付き合ってたことあるのか?」
「え!?そ、それは........あるかもしれないしないかも.......」
「いや、そこまでラブレター貰ってんなら男の一人や二人、手駒にしたことくらいあるに決まってるッス!」
「ええ!?いや、あの、それは、えー........」
なんか神凪は煮えきらない様子だがもう神凪しか頼れる人間は居ない!
「神凪様ぁ!お願いします!この後どうしたらいいのでしょう!もう俺はコミュ障!俺はコミュ障でいいから!認めるから!教えて下さいいいいいいいいいいいいいい」
俺はスライディング土下座を成功させて必死に頼み込む。
神凪は初め引いていたが、少しするとはぁ.......と大きくため息をついて
「ったく仕方ないわね」
と片目を閉じて仕方ないなぁと言わんばかりの表情を作って言った。
「ありがとうありがとうありがとう!」
俺は何度も感謝を述べた




