9話 魔王さまは証明する⑥
「そうね、勝手にクラスのコミュ障の順位をつけるなら」
「つけるなら?」
「沙汰は3位ね。」
「下に2人もいるのか!!」
なんか自分以下の人間がいると聞いてとても嬉しい!安心した!
「2位が小姫さんかしら。」
小姫さんが!?あの小姫さんは俺よりコミュ障なのか!?
「魔王さまと小姫さんのコミュ障の何が違うんッスか?」
応寺原が不思議そうに神凪に聞く。
「そうね。沙汰は過半数の同性と話すことは出来るけど。小姫さんは同性ともあんまり話せないのよね。仲のいい友人が少し居て、その子と話すことは出来るみたいだけど。」
「その仲のいいやつってのは同性か!?異性か!?」
「なに慌ててるのよ.......ちゃんと女の子わよ...。」
ふう。安心した。
「で、1位はどんな人なんッスか?」
「1位は陰 暗氣っていう人で」
「誰だそれ。そんなやつ居たっけ。」
「いるわよ!可哀想に!」
「わりいな。特徴を言ってくれれば俺も分かるかもしれない。」
「特徴ねぇ........特徴がないのが特徴.........みたいな」
「一番辛辣なのはお前だ!」
それにしても陰なんて見たことない気がする。学校来てるのか?
まあそれは今はいい。それより
「おい神凪。さっき俺が小姫の事を好きって言ったな!」
俺は神凪をスバリ指差して言った。
「まあ言ったけど........まさか!?」
神凪は目を見開いた。
ふっ。気付いたようだな。
「そう、そのまさかだ!俺は明日の放課後、小姫さんに告白してくる!」
「なんですって!そんな無茶な!?」
神凪は必死に止めにかかって来た。
「やめろ!俺を止めてくれるな!」
「いくらなんでもそれは無謀よ!あんたが小姫さんと話してるところ、私見たことないけど、教科書の1件以来話したことあるの!?」
「ない!」
「ないならやめなさい!告白して承諾して貰えるわけないでしょ!爆死するわよ!」
「お前は何か勘違いしているようだな!いいか?俺はコミュ障じゃないことを証明するために告白してくるのであってガールフレンドを作るためにやる訳じゃない!大は小を兼ねるって言葉をこの前聞いたが、そういうやつだ!告白出来れば他の会話も出来るってね!」
「............まあ、あんたがそれで納得するならいいけど........ショックを負っても知らないわよ!」
「ショック?この俺がそんなことで?まあいい。この戦いが終わったら、神凪、貴様にも言いたいことg」
「やる前から死亡フラグ建てるな!」
神凪はツッコミ疲れたのか、ゼーゼー息を吐いている。
俺はそれをよそに応寺原の方を向いた。
「応寺原。手伝ってくれるな!」
「はい魔王様ッス!魔王さまの為ならなんでもするッス!」
「ではこれを」
俺は応寺原に何処ともなく取り出したトランシーバーを手渡した。
「二人の専用チャンネルは206だ。」
「ちょっと待って!そのトランシーバー何処から出したの!?」
ーキ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン
帰宅のチャイムがなった。俺達は急いで荷物をまとめて学校を出る。
前世では単に自分単体の孤高の強さをして魔王になれた。
しかし、魔力を封印された今、それは難しい。
この世界でまた、魔王と同等の地位を得るならコミュニケーション能力を認められなければ駄目みたいだ。
俺はコミュ障じゃないことを証明して、晴れて魔王として再起の機会を伺う。
そう心に決めた。
22時間後、俺は魔王時代にすらやらなかった一世一代の大任務をこなすことになる。




