表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/19

魔王さまのQ.E.D.

 唐突ではあるが「大は小を兼ねる」と聞いたことはあるだろうか。


 俺はこの世界に来て初めて聞いた。


 なにせ元いた世界では俺が最強だったからだ。俺が"大"だった。


 いや違うな。"大"だと勘違いしていたんだ。


 話を戻そう。俺はその「大は小を兼ねる」を実践しようとしている。


 "ビビッ.....こちら応寺原ッス。コード106257は、推定15秒でそちらに到達すッス!どうかご武運を.....ッス!"


 トランシーバーが戦いの開始が近いことを知らせる。


 「はぁ...はぁ...はぁ...こちら沙汰。了解...!」


 全く...この世界は恐ろしいぜ。かつてはひとりで世界を支配したこの俺をここまで追い込むとはな...!


 やがて足音が聞こえてきた。それはどんどん大きくなりドアの前で止まる。そしてドアノブが動き...


 ーガチャッ...ガチャガチャガチャガチャ


 「あ、あの...それ引き戸です。」


 ーガチャ


 対象、つまりコード106247がこの薄暗い部屋へ入って来た。


 心拍数が高くなるのを感じる。


 「これ、引き戸だったんですね...エヘへ...」


 ぬおおおおおおおお!なんだその微笑みは!胸が!胸が痛い!これは最後の戦いの時、勇者一行のプリーストが放った【女神之息(ゴーダスブレス)】をまともに喰らった時よりキツイぞ!


 ここまで胸部が圧迫されているのになんの攻撃を受けているのか分からない。。一体どこから攻撃してきているんだ!数多くの魔法を見てきた俺でも全く理解できない!


 ...!?まさか!このガキがこの世界の勇者だとでも言うのか!


 「あの...お話って........?」


 こいつ!?この俺を急かすとは!いい度胸してんじゃねえか!


 「あ...あ...あの...小姫さん...!」

 「は、はい!?」

 「おー...、俺と、と、えーっと」

 「.......?」

 「えー、つ、付き合ってくださいっ!」


 こんなに心臓がバクバクしたのはいつ以来だろうか......だが.....よしっ!任務をやり遂げてやったぞ!どうだ!


 しかし、そうやってソワソワしている俺をよそ目に、ここ、体育館裏の物置では暫しの沈黙が流る。


 そして...


 「い、いい...ですよ...!」

 「.......なに.....!?」


 俺は少し間を開けた。そして小姫さんにちょっと待ってくれと言って後ろを向いてトランシーバーを口に近づける。


 「こちら沙汰!応答してくれ!こちら沙汰!想定外の事態が起きた!」


 本当にこの日本という世界は何が起こるか分からない。


 俺の焦る顔には窓から差し込んできた夕日が当たっていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ