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10 リビングアーマー・バラバラ事件

 ううう……。

 ダンジョンの坂道を転がり落ちて、頭がクラクラだ。


 ようやく止まったので身体を起こす。

 と言っても上半身しかないんだけどね!


 巨大カマキリの鎌で胴がぶっ壊されて、下半身とは泣き別れ。

 それで坂道を落ちてきたもんだから、完全にはぐれてしまった。

 なんだこのシュールな状況……。


 まずは周りがどうなってるのか確認しよう。

 俺は腕で身体を動かしながら周囲を見回す。


 そこは、これまでの通路みたいな場所と違い、かなり広い空間だった。

 奥のほうには、池みたいのも見える。


 ざっと見た感じ、モンスターはいないっぽい。

 まあこれまでダンゴムシといいカマキリといい突然現れたし、油断はできんけど。


 さて、周りの安全確認ができたところで、次は俺自身の状況だ。


 まず、今いろいろとものを考えてる上半身。

 これはある程度パーツがくっついたままでいてくれてる。

 頭パーツ(つまり兜)。

 首回りのパーツ。

 右腕パーツと左腕パーツ。

 左右の手甲。

 そして、胴体パーツが、真ん中あたりで破壊されてる。

 細かく分けるともっと分解できそうだけど、まあそんなところだ。


 問題は下半身のほうだ。


 転がり落ちて上半身とはぐれたすえ、なんかバラバラになってしまったっぽい。

 なんとなーく感覚でわかるのだ。

 これは不思議だな。

 離れてても、ちゃんと自分の身体の一部として認識できている。


 まず、腰パーツがどこかに落ちてる。

 なんて名前かわからないけど、エプロンみたいな前ガードも、それにくっついている。


 右脚はまとまって、それとはべつの場所にある。


 左脚のほうはやっかいだな。

 太ももパーツと膝パーツと脛パーツと足パーツの四つに分かれてしまってる。


 胴体パーツの下半分は完全に壊れてしまって、感触がない。

 胴体はあきらめたほうがいいか……。


 あ、あと冒険書と、コインが入った布袋もどこにあるかわからないな。


 困った。

 どうしよう。

 

 ……と悩んでも仕方ない。

 とりあえず、パーツを集めることを目標にしよう。

 そのためになにをすればいいか考えるんだ。


 うーん……。

 よし、ちょっと、パーツ単体で動けないか試してみよう。


 俺のステータスのなかに、『スキル:霊体感覚」ってのがあった。

 そこからの推理だけど、俺の身体の本体は鎧じゃなくて霊体だ。

 魂的なものが鎧に取り憑いて、動かしてるってこと。

 だからこそ、各パーツを交換しても操ることができるのだ。


 で、バラバラになっても、俺は各パーツを認識できる。

 ってことは、それらのパーツにも霊体が残ってるってことだ。


 じゃあ、その霊体を動かそうとすれば、鎧パーツも動かせるんじゃね?


 というわけで、レッツトライ!


〈ぐぬぬぬぬ……!〉


 あ……!

 なんか、動きそうな、感じが。

 しないでもないぞ!


 難しいのは、バラバラになったパーツが動くイメージを描きにくいってこと。

 上半身だと、腕を動かして這って移動って感じでわかるんだけど。


 腰パーツとかさ。

 普通に考えて動きようないじゃんって思っちゃう。


 だからイメージを切り替える。

 人間の身体じゃない。

 各パーツが磁石で引き合うみたいなイメージをしてみる。


 お!

 なんか動いた!

 言葉にすると、こんな感じだ。


 ももももももももも……。


 なんだろうな。

 空気のなかを泳ぐみたいな感覚。


 ん?

 なんか、ついさっきもそんな感覚があったような。

 似てるというか、真逆って感じだったけど……。

 …………。


 …………まあいいや。

 いまはパーツを動かすことに集中集中!


 各パーツがどこにあるのか、はっきりとはわからない。

 けど、なんとなく、上半身に近づいてるか遠ざかってるかはわかる。

 それを頼りに移動させる。


 お!

 腰パーツがこっちに来るのが見える。

 …………目で見ると、めっちゃ不気味だけど。


 あ!

 右脚も!

 おお、左の腿パーツ! 脛パーツ!

 膝パーツに、足パーツも!


 みんなおかえり!


 なんとか全部集まった。

 次は、これを組み立てないとな。


 とはいえ、各パーツを動かすコツはだいたいつかめた。

 もう、盗賊さんの手を借りなくても、自分でできるはずだ。


 いくぜ、合体!


 ガションガションガションガション!


 完成!

 やったぜ!


 …………ん?

 なんかやけに視界が低いな。

 しかもなんかグラグラする。


 …………。

 ああ、そうでした。

 胴パーツがぶっ壊れてるんだった。

 上半身のほうに、その壊れたパーツが残ってるから、安定が悪いんだ。


 仕方ないな。

 これならないほうがマシだ。


 俺は上半身を浮かせて、胴パーツを外す。

 そして、首回りパーツと腰パーツを直接合体させた。

 だいぶ慣れてきたな。


 今度こそ完成!

 めっちゃ視界低いけど、安定はした。


 ……うん。

 鏡とかないからわからんけど。

 いまの俺、たぶんめちゃくちゃ間抜けな外見だよな……。

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