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ニコイチ商会

ヴェルダ・ブリ商会。中古船舶取扱業者というより、ニコイチ商会と言ったほうがわかりやすい。中古や廃船を引き取って解体。使える部品を集めて組み合わせて再生する専門業者。


眼の前にある船殻は、600年前の戦争で使われた軌道降下強襲突撃艇。軌道上に直接ワープアウトし、敵の対空砲火に耐えながら強引に大気圏に突入、地上に兵員や兵器を送りつける。というコンセプトで開発された小型艇。と言っても、全長40メートルほどあるのだが。


ほぼ使い捨てなので、船殻の頑丈さだけに予算を向け。航法システムや動力部をケチったのが裏目に出て。目標の惑星まで到達できた船は3割を切り。残りは終戦まで宇宙空間を彷徨さまよっていた。なので、「傷一つない。新品同様」なのだそうな。


「再生業者の間では出物と言われている船殻。頑丈さでは中型艦に迫る防御性能」


ということなんだそうな。なを、問題のある動力部や航法システムは当然外し、別の船のものに入れ替えてある。動力部は150年前の駆逐艦に使われていたもの。船殻に比して大きすぎるので、兵員を詰め込んでいた居住区画に大幅に食い込み、搭乗員数は往時の1/3まで減っている。


まあ、空挺部隊を送りつけるわけではないので、これで良し。それより、小型艇に駆逐艦のエンジンというピーキーなところが厨ニ心をくすぐる。ミレニアム・ファルコン的な高速と高機動を期待したい。船のサイズも近いしね。


「航法システムは哨戒艇に使われていた95年ものだが、ソフトと航法データは最新のものにアップデートしてある」


居住区画は個人用ヨットに使われていたユニットで。150年前に小金持ちの間で流行したベストセラー商品。中古品が大量に出回っているので、性能の割に安いんだそうな。


食事関係のデータは前のオーナーが設定したままなので。日本の料理が食べたければ、自分たちでカスタマイズする必要がある。異星人の中古業者に地球のレシピを再現しろ、というのは無茶なので。レシピに関しては自分たちで試行錯誤するつもり。


そして、唯一新型に近いのは船全体を司る統合AIシステム、まだ現行でも売られているモデルだそうな。動作モードは汎銀河語なので、日本語を学習させねばならないのだが。ニコイチ屋に日本語の教材があるわけもなく。こちらも自分たちで教えながらカスタマイズ。ということになった。


「命名。雀鷹ツミ


ちなみに雀鷹ツミっていうのは鷹の一種で絶滅危惧種にされていたんだけど、ハイキングに連れてってもらったときに、一度だけ見たことがあるのだ。野鳥の会に入っていた従兄弟いとこが教えてくれたのが記憶に残っている。その、雀鷹ツミは地球まるごと、ほんとに絶滅してしまったわけで。その名前と従兄弟の記憶を留めるために、こう命名することにした。


「命名承認。私はツミです」


「俺の名は田山繁たやましげる。君の船長になる。本来の言語は日本語だが。それは、おいおい学習してもらうことにして。当面は汎銀河語を船内公用語とする」


「了解しました船長。船内公用語を汎銀河語に設定しました」


さて、それでは完熟航海前に、船内の最終点検と引き渡しの書類手続きをせねば。

ミレニアム・ファルコンより少し長めだが涙滴型るいてきがたに近い形状、キャプテンフューチャーのコメット号(原作版)や星詠み号(宇宙英雄物語)に近い、往年の空想科学小説時代のアメージングなイラストを彷彿とさせる。


レストアされてるので、ぱっと見には新品同様。目立つ汚れはありません。

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