裁判と判決が早かった
地球というか日本だと、裁判には何年もかかる。社会科見学に行った裁判所や、新聞の記事などでも、そう聞かされていた。だが、汎銀河の裁判はまるで違った。
まず裁判所の作りが日本と違う。遠い惑星の間で起こる訴訟を解決するのに。わざわざ一箇所に集まるのは現実的ではない。なので、我々が座ってるのは空中に浮かぶ複数のスクリーンのある15畳くらいの部屋。他の人たちは、全て別の場所にいる。複数画面のそれぞれが、被告、検察、弁護士なんかに相当するのだろう。さしずめ、この部屋は証人席ってところか。
言葉の問題は、事前に学習装置で頭に詰め込まれていた。まず汎銀河語、続いて俺達を助けた(と、主張している)アチャラ星雲の公用語であるアリュート語、犯人とされるストール厶共同体の公用語であるストトリッシュ。ちなみに語尾のリッシュが語に相当する意味なので、ストトリッシュ語というと語がかぶってしまうのだそうな。
各勢力は複数の恒星系を内包しているので。現地を訪れるなら、さらに多くの言葉を修得する必要があるらしい。
翻訳機もあるが、微妙なニュアンスは誤訳される危険がある。観光客程度なら問題ないが、裁判のように正確さを要求される場合は、語学習得が望ましい。と、説明されて、学習器による詰め込み教育を受けることにしたのだ。
とはいえ、ただの小中学生が政治の駆け引きに加われるはずもなく。質問に答えた程度の参加で、AIの裁判官により判決は下された。
要約すると。犯人の研究員と所属団体は有罪。だが、生き残り五人の保証人になるため、拘束と処罰は五人が成人して独り立ちするまで執行猶予。また、我々五人は失われた地球文明の正統後継者として地球を含む太陽系を相続。賠償金は、焼かれて消失した文明と資産に慰謝料を上乗せして計算され、犯人たちの所属する星系の利権から補填される。
ということで、分校の全員がとんでもない額の財産を所有することになってしまった。フォーブスの長者番付の一位どころか、歴史上の皇帝でも及ばないレベル。自家用巨大宇宙船も軽く買える。と、聞かされた。