異世界転生かと思ったら違った
気がついたら白い大広間っぽい空間。周りには見たことのない植物が茂っている。状況を考えると異世界転移して森の中。
と、一瞬思ったけど。この植物は自然に生えてるにしては整い過ぎている。これって、ホテルやホールにある観葉植物だ。見たことないのは外国産の植物だからに違いない。異世界転生とか言い出して痛い人になるところだった。危ない危ない。
女の子達は、かたまって何やら話し込んでいる。「異世界転生」とか「アプダグション」いう声が聞こえる。女の子にもオタク知識のある子がいたとは予想外。
「いや、これって珍しい観葉植物だから……」
と、口を挟もうとしたところで、上の方から声がした。
「皆さん、お目覚めのようですね」
見回しても姿は見えない。しかたないので、次の言葉を待つ。
「落ち着いて聞いてください。皆さんの住んでいた惑星は、恒星の異常活性化による輻射熱と放射線にさらされ絶滅しました。」
「偶然近くを通りかかった我々の宇宙船で救助できたのは。皆さんがた五名だけです」
えっ、何事。この状況はハード過ぎる。
まだ、異世界転生のほうがマシだった。異世界転生なら他のみんなや街は無事で、いつかは帰れるというアテがあったけど。人類全滅では帰る場所さえない。もう、あのシリーズの続きは読めないし、ジャンクフードも食えないのか。
俺も衝撃で思考停止していたけど。女の子達の顔色が悪い。わなわなと、震えている。これはパニックになるか?と、他の人が先に狼狽えると自分は落ち着く理論で、絶叫に備える。
「嘘」、「いやー!」、「お母さん」
という声がしばらく続き。すすり泣きとともに沈静化した。その間、謎の声は黙ったままだった。俺の方は、周りが騒いでくれたのに加えて。家庭環境がドライになっていたせいで冷静になれた。
仕事のストレスでおかしくなった親父とお袋の会話は夫婦喧嘩というレベルを超えており、八つ当たりされる俺のストレスもマッハで、家族間の愛情など消し飛んでいた。親父が田舎で仕切り直そうと思ったのは最後の手段だったのだろう。
おかげで、両親が死んだらしいと言われても。冷静に他人の死のように受け止めている自分がいた。
「落ち着かれましたか」
やがて、先程の声が説明を再開した。
「恒星の異常活性化は、我々の敵対勢力による無計画なエネルギー収奪によるものです」
「この非人道的な暴挙は罰せられねばなりません。皆さんの今後の生活の保証もさせるために。どうか証言にご協力いただきたい」
要約すると。我々を助けてくれた宇宙船と敵対する勢力が太陽からエネルギーを奪った影響で太陽が異常な活動を始めてしまい。地球の表面がこんがりと焼かれてしまった。
俺たちの見た山の頂きの光は、太陽からの強烈な光で焼かれている最中で。俺たちが助かったのは、山間で光が届くのが遅れたからだそうだ。
偶然と通りかかった宇宙船が事態に気づいて接近したときに、たまたま見つけて救助。小型の宇宙船だったので、他の人の救助まではできなかった。
ついては、犯人たちの罪状を確定するために証言に協力してほしい。俺たちの今後の生活費などは、その犯人たちに支払わせる。と、言うことだ。
胡散臭い。とくに、偶然にそんな場所を通りかかったというのが嘘っぽい。犯人が敵対勢力ということから、わざわざ犯行現場に来て待ち構えていた。と、考えたほうが筋がとおる。宇宙戦争をテーマにした小説やアニメで見たことのある設定だ。今こそ乱読で身につけた知識の活かしどころ。
と、思ったが。主導権は向こうにあるし。今後の生活保証は必要だ。
「すこし相談させてください」
と、答えてから。女の子達に混じって作戦タイム。素直に信じるには情報が足りない。でも、当面は、この声に協力する方向で様子を見よう。と、まとめた。
唯一良かった点は、女の子達の俺を見る目が変わって。俺を頼りにする感じになった事。これが分校の平和な生活だったら、どんなに嬉しかったことか。
とはいえ、浮かれている余裕はない。状況は余談を許さない。責任重大。気を引き締めて行こう。
俺は親父やお袋みたいな間違いはおかさない。この娘達を守って見せる。そして、ちゃんとした温かい家庭を築くんだ。
重たい話はあまり好きではないのですが。主人公がパニくらない人格形成に矛盾が出ないようにしてたら、こんな背景になってしまった。
温かい家庭に憧れているだけで、まだ恋愛感情はありません。
逃避も兼ねて、鬼のような乱読をして、普通の人の一生分くらいの本は既に読んでしまっているので、年齢の割に大人びて頭でっかち。という感じ。