現場の苦労が通販に負ける
雀鷹サイド
「耐圧作業ポッド。ドローンからの誘導信号と同調」
「降下開始」
モニターには荒れ狂う空というか、濁流みたいな景色と、時折きらめく稲妻っぽい光が見える。
「コース外れます。手動サポートは無理かも」
「嵐がすごいね。雀鷹、耐圧ポッドのAIを補助して」
「了解しました。ポッドの補助を行います」
「ギリギリまで急降下。それ以降は軟着陸モードにしてはどうかな」
「それ採用。雀鷹。ギリギリまで急降下。そこから急制動からの軟着陸で」
「了解しました。高度1万。高度5000。高度1500。高度500。制動開始」
画面がふらついて。着地の振動で画面が揺れた。
「着陸成功、ダメージ軽微。行動に支障なし」
「よし。トロリー乗り場に向かって前進」
「トロリー乗り場に到着。入り口の破損大。このまま掘り進めると相当な時間が予想されます」
「とりあえず、掘ってみて。ダメそうなら横に回ろう」
「というわけで10時間経過したのですが、200メートルくらいしか進めてません。トンネルの破損がひどいし。これは近くまで採掘ビームかなにかで新しいトンネルを穿って、そこから横穴を掘ったほうが早いかも。ということご相談なのですが。狐雨の装備に貫通系のものはありませんか?」
「私の得意なのは広域殲滅系で、細い穴を穿つというとあれしか無いか。ちょっとシミュレーションするから、ここまでのデータを頂戴」
狐雨サイド
「うーん。ただ穴を開けるだけなら良いけど。手持ちの装備と術式だと、要救助者を巻き込む可能性が高い」
「母さんは大量虐殺系傭兵だったもんね。精密貫通系の術式を異世界通販で買うほうが早いんじゃないだろか」
「向こうの船には話せない内容だね。あ、これが良さそう。即配指定してポチッとな」
「で、こちらが購入した術式のパッケージとなります」
とCDっぽいパッケージを取り出す美月。
「眼の前の数キロの壁が進めないで悩んでるのに。異世界からの通販が即届くのに、やるせない思いが」
「よし、お前にもインストールするよ。こっち来て」
「了解。マム」
「というわけで。貫通魔法の術式を使いますが。これはうちの一族の秘匿魔法なので、記録と口外は御無用に願いたいのですが」
「了解しました。雀鷹、術式使用開始から終了までの記録を抹消予約」
「この環境だと穴が長時間持たない可能性があるので、こちれで示す予定地点まで作業ポッドの移動をお願いします」
「了解、作業ポッド移動開始。到着予定時間は?」
「移動終了予定時間は1時間40分。プラスマイナス10分です」
「お聞きになったとおりです。作戦開始は2時間後で」
「了解。では2時間後に」
2時間経過。
雀鷹の船外に、簡易宇宙服を着て浮く二人。
「こちらは準備よし。そちらの状況はいかが?」
「作業ポッド。予定地点で待機中。貫通はじめてください」
「了解。発動まで少し時間がかかりますが。これよりの記録は抹消願います。ナムり、やるよ」
「アイマム」
しばらくは二人の宇宙服が浮かんでいるだけだったが。やがて小さな光が走った。
「作業ポッドの眼の前に穴が空きました」
「すごいな。爆発とか閃光もない。作業ポッド突入」
「作業ポッド突入します。また、術式使用時の記録を消去しました」
1時間ほど経過。
「作業ポッド、予定深度に到達。これより横穴を掘りつつ目標に向かいます」
「近づいたら慎重に。要救助者のシールドに傷を付けないようにね」
2時間ほど経過。
「要救助者のものらしきシールドを確認」
「ありがとうございます。私は、山田祭様所有の汎用端末SD-22型です。そちらのシールドに同調しますので。ゆっくり接近をお願いします」
「シールド同調。ポッド内に回収完了。転送ロックいけます」
「転送」




