旅行にはカネがかかる
川面を渡る風は少しだけ潮の香りがする。海が近いので、あげ潮のときは海水が上がってくる。所謂汽水という奴だ。海鳥も数羽舞っている。
俺がいるのはお屋敷から一番近い港町の桟橋近く。異世界に行くつもりで盛り上がって母に告げたら。現実の厳しさを教えられた。
「何を言ってんの。別世界への渡航費用は高いのよ。近くに片道で行くだけの費用で、この世界を豪華1周旅行ができるくらい。と言えば、わかるかな」と母に告げられた。
「それに。あんた、お屋敷の周り以外は、隣の町くらいしか行ったことないでしょ。まずは近いところを周って。資金をためて、旅に慣れてから世界渡りを考えなさい」
と説得されて。餞別に、母からは新しい情報端末を、お館様からは当座の旅行資金をもらい旅に出た。3日目にようやく港町に到着。この資金の減り具合だと、他の大陸どころか、首都に出るだけでもギリギリ。異世界に行くどころではない。まず、旅行資金を貯める算段をせねば。
と、迷走している間に三年が過ぎ去った。
小さな船問屋に見習いとして雇われ。他の奴らよりは仕事ができたので早めに出世して小番頭になったが。目標は異世界旅行なので、とーてい足りない。そのくせ、他の奴らには出世をひがまれるので、店に居づらい。結果として、小舟を預かり船頭兼行商として近場を回る毎日。
そんな折におふくろから連絡が来た。遭難者の捜索と救出の依頼。
異世界からこの世界を訪問していた人と連絡がつかない。端末にも反応がないので位置を特定できず世界渡りもできない。一番近いのがこの惑星なので、捜索に協力してほしい。捜索用に超光速宇宙艇を出すので、現地協力者として同行して欲しい。
ということなので。むしろ渡りに船と、即了承。
大旦那さんに引き止められたが。「母の友人が行方不明なので探すように頼まれて」と断ると。惜しまれつつ、「戻ってきたら、また勤めてほしい」と送り出してもらえた。
異世界の前に宇宙旅行とは。遭難した人には申し訳ないが。わくわくしつつ船を待ちます。
誤字修正適用させていただきました。ありがとうございます




