セカンド・コンタクト
真理を教えると宣言されて1年ほどたった、謎の言葉と思っていたものは異世界共通語のひとつで、「正確には私の両親が所属した国の宗主国の言語と聞いてます」だそうだ。これも叩き込まれて覚えた。
世界がひとつではなく5桁以上も存在し、死後に別の世界に転生することがある。その際に技能や記憶を持ち越す人が稀にいて。母がお世話になった豪商がそうだったそうだ。残念ながらその人はすでに亡くなっているそうなので、会えないのが残念だ。
「案外、父さんや母さんと同じ世界に転生してるかもしれませんね」と母は寂しそうに微笑んだ。
そんな修行のさなかに、また例に気配が現れた。母が呪文を唱えると、唐突に箱が出現して、"ポン"と軽い音を立てて足元に落ちた。持ち上げてみると厚紙でできた箱に見え、大きく会社のロゴっぽい文字が印刷されていた。
母が開けると。箱の中はスカスカで、半透明な蛙の卵みたいな物につつまれたカードと小さな薄い箱みたいな物が入っていた。母がカードを取り上げて文字を確認、横から見たら母の小さな絵姿と母の名前と身分が書かれていた。
続いて薄い箱を取り上げると、「初期設定」と共通語でつぶやいた。箱の片面が薄っすらと光り。母はしばらく集中して共通語でつぶやき続け。やがて「よし」と、こちらの言葉で言った。なにかの作業が終わったらしい。
唐突に箱から光が飛び出して空中に映像が映し出され。声が聞こえた。
「はじめまして、我が友人シロの娘ミツキ。私はヤミです」
長い話が続いたので要約する。伯爵と伯爵夫人の安否を聞いて。伯爵が暗殺されたと知ったヤミが激怒していた。なんでも、伯爵が転生する前にヤミを作ったらしい。生みの親を殺されたが、婦人が敵を討ったと知り、「よくやった」とつぶやいていた。
その後のカリキュラムは大幅に変わった。母さんの知識は祖母ゆずりだが。一部は時代遅れだそうな。二人して仮想加速空間という場所にこもり。母さんも最新知識に更新するため勉強を始めた。俺の方は初等教育というのを受けさせられ。「終了したら、貴方にも準市民証を出すよう手配しますね」と言われた。
そんなこんなで一年が過ぎ。俺は異世界の準市民権を獲得。渡航権利までもらってしまった。
母さんが育てた子は、母さんが一人前と確かめると独り立ちして。傭兵団に所属するか旅に出ることが多かったそうだ。今、その傭兵団は存在しない。団長のカリスマでまとまっていたので、団長の死後に後継者候補が複数乱立して崩壊したんだそうな。
ということは、このままお屋敷の兵士になるか旅に出るかの二択。
今、俺の手には異世界への渡航権がある。チャンスは活かさないと駄目だよね。
厚紙の箱。黒猫ではなく密林的な何か。この手の未来の話で実在企業を出すのは難しい。"2001年宇宙の旅"の上映時に、パンナムが潰れると思った人はいなかったんじゃないだろか。




