とある世界の伯爵領にて
第二部は登場人物と世界観がガラリと変わります。
-----------とある中世ファンタジー風味な伯爵領にて-------------------------
「お館様、少しお耳を」
わざわざ小声で報告するというのは面倒ごとか。この言い方だと緊急性はなさそうだが。
「実は雑兵どもが避難民の母子をてごめにしようとして……」
普段から規律を徹底していたつもりだったが、足りなかったようだな。避難民にしてみれば、助かったと思ったのに。助けに来てくれたはずの兵士に襲われたら、心身ともに耐え難い。
「母子には手厚い保証を。兵士たちは拘束。処分は追って--------」
と、言いかけて気づいた。この程度のこと、こいつ独自の裁量で片づくはず。わざわざ報告する意味がない。
「で、まだなにかあるんだな?」
「はい。実は襲った兵士たちが返り討ちに」
不甲斐ない。訓練が足りなかったようだ。帰ったら訓練を倍増にしてやる。
「それで、見直して気づいたのですが、その母の方にシロ様の面影が」
何だと。フルローラ伯爵夫人の面影というと、ミツキか。いや、幼馴染の私がこの年になっている事を考えれば、その娘か孫か。
幼い頃はぜひ許嫁にと思っていたのに、ほかの男にとられたか。と、思えば少々複雑な気分だが。過ぎ去った年月を考えれば是非もなし。
「わかった。会おう」
と、案内されて中庭に出てみれば。
「おや、ルディじゃありませんか。久しぶりですね。それに、ずいぶん老けましたね」
まさかのミツキ本人か。それにしては若過ぎるんだが。まだ18の娘と言っても通用するぞ。
それに、俺は壮年と言っても良い見た目になっており、幼い頃とはだいぶ様変わりしている。なぜ俺だとわかった?
「気配でわかりますよ。これでも魔術ではソコソコのものなので」
こいつ、心が読めるのか?
「心までは読めません。気配とか感情のゆらぎ程度。他心通まではいきません。せいぜい、察相、観相程度」
また意味不明な単語が。こいつは口説こうとすると謎の言葉で煙に巻くのが得意だったな。
「その子の父親はどうした?」と、聞いてみる。幼い頃の想い人がどんな男と一緒になったのか気になる。
「両親ともに死んだと思います。放置できずに拾ってきた子なので」
実子ではなかったか。安堵している自分がいる。
「お前の家族は?」
「まだ独り身ですよ。魂まで捧げられる男には巡り会えなかったので。」
ここれは。この年で昔の想いが蘇ったか。頬や胸の中に熱が湧き上がる思い。
「相変わらずわかりやすいですね」と微笑むミツキ。
そうだ、こういう奴だった。この年になっても手球にとられるのか。
「まあ、ちょっと疲れましたし。この子を放り出すのも不憫なので。少しの間、お世話になっても良いですか?」
「お、おおお」と、なし崩しに、二人の世話をすることになっていた。
前作(転生回数が百回を超えたので異世界転生してみる)と前々作(マンドラゴラで始まらない異世界転生?)とのコラボ。前作で異世界にとり残された娘ミツキと、その娘が拾った子供が第二部の主人公。異世界に行く行く詐欺だった前々作を踏まえて。今度は異世界に行くかな?




