勇者 ルイ の物語
勇者 ルイ の物語
ルイはホーテーの森を歩いていた。
ルイはカゲンタウンの住人である。このスーガク国では、どの街の住人でも15になると数学の術を極めるために旅に出なければならないという決まりがあるのだ。
そしてルイは15になったこの冬、数学の勇者になるためにとうとう旅に出ることに。
今、ルイの持物は3つしかない。1つはお母さん手作りの『加減のマント』。もう1つはお父さん譲りの『乗除の紐靴』。そして街を旅立つ時に渡される、『勇者の剣』。
その勇者の剣には『イコール』が内蔵されていて、ほかに今のルイが覚えている技は『タッスー』と『ヒックー』だけである。
これらはルイがスーガク立加減学校で覚えた唯一の技。
これからどんどん技を覚え、スキルを上げ、数学の勇者になるのがルイたちスーガク国の若者の夢だった。
さて、街を出てホーテーの森を歩いているルイは、夕方近くになってやっと野営場所を決めた。しかしまだテントがない。仕方なく焚き火を焚いて手頃な岩に腰掛けていると、背後でガサガサっという音がしだした。
「何者だっ?!」
ルイは立ち上がり様に勢いよく振り向き、少しよろけた。
「くはははは!俺様は森の魔霊だ!その剣、おぬしカゲンタウンの者だな!この森を通るということは、大方旅に出たばかりの子童か。よし、数学の勇者になってしまう前に俺様が食ってやろう!!」
「何だとっ、まて早まるな!」
「受けてみろ、『ホーテシッキ』【x+6=12】!!」
森の魔霊は初級数魔術の『ホーテシッキ』を繰り出してきた。
しかしルイは小級数魔術の教育を終了したばかりである。
「くっそう、初級数魔術を発動してくるなんて、卑怯なやつめ!」
森の魔霊の繰り出した『ホーテシッキ』は、じわじわとルイの体を拘束していった。
しかしルイは落ち着いていた。―頭を回転させるんだ。僕には頭脳がある。x+6=12……ハッ!!分かったぞ!!―
ルイは勇者の剣を振り上げ、『イコール』を発動させた。
「x+6=12からイコールによる符合変換をもって式変換し、x=12−6。『ヒックー』を発動させてx=6!!答えは6だぁぁあ!!」
加減のマントを翻し、『ヒックー』を発動したルイが、出された 【解】 を森の魔霊に向けると、魔霊は絶叫を撒き散らしだす。
「おのれぇえ、子童の癖に、よくも、よくもぉお!!」
やがて森の魔霊は木の葉となり風に攫われながら消滅した。
「ふぅ…。初めて魔霊を1人で倒せたぞ。しかし強かったなぁ」
ルイは今先の闘いで消えてしまった焚き火を直し、また岩に腰掛けた。ところが、ふと目を先程まで魔霊がいた場所にむけると、大きなアイテム袋がついている。
「お、さっきの魔霊、アイテムもってたのか!おっしゃw『憩いのテント』だ。丁度いいや、今日からこれを使おう」
ルイは早速テントを組み立てると、そそくさと中に入り、マントを毛布代わりにして寝入ったのであった。
ルイ
HP:5→3
レベル:1
今回覚えた技:無し
MP:3→1
パーティー:ルイ
所持金:1コール2セト(現代変換にてコール1000円、セト5円)
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