赤髑髏
まるで完成された絵画のように静かな夜の荒野。
そこに絵の具をぶちまけるかのように轟轟とエンジンを吹かし砂塵を巻き上げ2台のモービル(発明者であるドルトスタイン大先生曰く人類1億万人の夢を乗せた鋼のゆりかご)が走っていた。
一台は灰色のモービル、軍のお下がりなのだろうか便所の黄ばみのように今は無き亡国の紋章が霞ながらもその最後の意地を見せている。
そしてそのやや後方から迫る一台。
それはこの荒野には似合わない『赤』だった。
都市部のカジノ街に行けばいくらでも見れるだろう成金趣味の真っ赤なモービル。
悪趣味な金の髑髏のおまけつきだ乗っている奴のおつむは言わずもがなであろう。
どうやら先ほどから赤のモービルが軍用崩れを追い回しているらしい。
『お前らさっきから何なんだ!!そんなにケツが掘りたきゃ男娼館か便所裏にでも行ってろインポが!』
灰色のモービルから拡声器だろうか大音量で酒焼けした男の声が響く。
相手の返答を待たずにモービルが加速。
赤髑髏の正面に移り機体の両側面のハッチが開く。
『しゃぶりたきゃこれでも咥えてな!ケツ穴野郎!!』
月光を受けぬらりと光るのは30mm口径。
2丁のガトリング砲が轟音とともに暴力の嵐を穿った。
あまりの銃撃の苛烈さに濛々と砂ぼこりが立ち込める。
近距離かつ対軍用モービル用に備え付けられたガトリングによる一斉射撃。
気取った赤のモービルは一瞬で荒野の奇妙なオブジェと化す。
それが当たり前のはずだ。
然して砂のカーテンを突き抜け赤のモービルは未だ爛々とその髑髏を輝かせていた。
灰のモービル、鷹の目の夜盗団は狼狽を隠せていなかった。
モービル内部で怒号と悪態が飛び交う。
唯でさえ男だらけで熱気が篭る車内はまるでサウナのようだ。
「なんなんすかあのモービル!!」
「うるせぇ!てめぇがクソエイムだっただけなんじゃねぇのか!!」
「使えねぇ包茎野郎!!!」「喋ってる暇があったら撃ちまくれ!!」
「そ、そんなこと言ったって!!」
仲間内から無能の烙印を押された射撃手は必死の形相でもう一度狙いを定めようと背後を睨む。
が、その時何よりもはっきりと見えてしまった。
常人が動かしているとは思えぬ動きのそれを。
銃撃をワルツでも踊るかのように躱し尚且つ段々と確実に距離を詰めてくる赤い赤い髑髏の悪魔。
赤のモービルの窓が開く。
男
射撃手が散り際の刹那に見たのは眩い閃光、宙を四散するモービルそして暗闇に光る髑髏の下卑た笑み
けたたましい笑い声のようなエンジン音を残し荒野は再びシンとした静寂に包まれた。
ノリと勢いで書いたので続きはそのうち出します