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STAGE3 心の力

第3話 心の力




「はぁっ!?死ぬ!?何で!病気!?」


達喜は叫ぶ

納得出来ないから、あんなに優しい彼女が死ぬと言うことを聞いたから


「残念だけど、違うよ」


「じゃあ何で……ッ!」


「それがこの村だからだよ」


「は!?」



「リンエルの村、この村の名前と俺らの名前聞いて、気がつかなかったか?」


「あ………、名前が」


「そう、それがこの村の決まりだ」


エルは続ける


「この村では、10年に一度、エルという少年を、それから2年後にリンという少女をそれぞれ名付けなければならない

そして、エルが12歳、リンが10歳になると、どちらかが死ななければならない」



「ちょっと待てよ!どうしてそうなるんだよ!」


「村の平和、豊作などなどを願う『生贄』にされるらしい」



「生…贄……?」


「彼女……リンはね、俺を庇ったんだ」



***


『ダメだ!リン!』

『エルは、才能がある

エルには武術がある』


『だからって、なんでリンが!』


『私はいいの、私は死んで、貴方は生きる』


『俺が……死ぬから』


『私は、他人が死んでしまうのが嫌だから』




***



「……リンは、自分から死を選んだんだ

生きる道はあるのに」


「絶対、なのか?」


「ああ」


達喜は顔を悔しそうに歪めると


「お前は、どうするんだ?」


「俺は、リンを助けるつもりだ」


「だったら……」


「だけど、生半可な気持ちでやるつもりはない

お前が本気でリンを助けたいなら、連れてってやる」


達喜は俯く


(……コイツも、ダメか)


エルがため息をついた、その時


「………ははっ」


達喜は笑った


「本気で助けたいか?当たり前じゃねぇか!そういう覚悟はとっくの昔に出来てんだよ!」



エルはニヤリと笑うと


「お前は、そういうやつだったな

リンを助けるのは一週間後、儀式の日だ」




――物語の歯車は、廻り続ける2



「行くか」


「ああ」



日が落ちかけ、暗くなり始めた頃

達喜とエルは丘の上で夕日を見ながら呟く


2人の手には真剣が握られている


(絶対助けて、またここで夕日を見るんだ)



「準備は出来てる

リンを、助けようか」


エルがそういうと、2人は暗くなり始めた道へと走り始めた



目指すは村の一番奥、神の祭壇




***




歩法、と呼ばれるこの移動法を使い、達喜とエルは走る


歩法とはこの世界の古武術の一種らしい


修行が始まったときもジンバ(達喜とエルの師匠)に一番最初に教えられたものだ



正面から付近の近衛兵が走ってくる



「エル、殺さずに」


「分かってる、最初っから峰のつもりだ」


近衛兵が武器を抜いたと同時に刀を振るい、走り抜ける


ドサリ、という崩れ落ちる音が後ろから聞こえた




神の祭壇まで、あと少し



***



「楽しかった、な」



村の一番奥、神の祭壇でリンは呟く


特に最後の1ヶ月、達喜が来てからとても楽しかった



「ありがとう、達喜」


その場にいない達喜を想い、リンは悲しげに、それでいて優しく呟いた




***



「……達喜、いつの間にこんなにお友達が出来たんだ?」


「バカ言え、お前の歓迎だろ」


「そりゃ愉快な歓迎だな」



2人は軽口を叩き合っているが、笑える状況ではない



三十数人の兵に囲まれているのだ



しかし、2人は怯えない







たった三十数人だけ、という余裕から






「さて、どうする?エル」


「背中合わせ、とやってみたかったけどリンが危ない

正面の敵だけ蹴散らして先に行け

俺もあとから必ず行く」



「分かった、必ず来いよ?」


「当然だ、こんな雑魚には負けない」


「そうだな」


言うが早いか、達喜は走り始める

刀を抜き、峰で2人をなぎ倒す

左右から同時に攻めてきた刀をかわし、右を薙ぐ


そのまま左を蹴り飛ばす


更に正面からきた3人を居合いで吹き飛ばし、達喜は包囲網を抜け、歩法で走り始めた



――喜劇が、始まる3



「エル、貴様は裏切るのか?」



達喜が兵を蹴散らし進んだあと、兵の一人がエルに話しかける



「さぁね」


刃を鞘に収めながらエルは呟く


「俺の『目的』を遂行するためなら、誰であっても裏切るさ」



エルは兵達を見据えると、目の色が微かに変わった


それは誰にも見せなかった力







「これで少しは戦いやすくなる」









***



「着いた」


走りながらぼそりと呟く


まず最初に目に飛び込んだのは連なった鳥居

軽く千はあるだろう


その鳥居の列を駆け抜ける



七百程過ぎた頃に数人の兵がいたが、全員に峰打ちを打ち込んで先に進む



残る鳥居はあと三百強


達喜が儀式の場に到達するのはあと少し




***



「準備はよろしいか?」


仮面をつけた神官風の男が言う

手には大鎌が握られている


「準備は、出来てる」


リンの服装はいつもと変わらない


しかし首には小さな紫色の宝石がついた首飾りを掛けている


「さよなら、お父さん

さよなら、エル

さよなら………達喜」


振り返り様に一粒、頬から何かが飛んだ




***


「間に合えッ!」



リンは大鎌を持った男の方を向いて、空を見上げている


しかし、この距離ではリンを助ける前に首が飛んでしまう



「ッらぁっ!!」


掛け声と共に刀を抜き、思い切り鞘を投げる


「ぐっ」


鞘は男の手首に当たり、鎌が手から離れた


その隙に一気に間合いを詰め、一閃


もちろん峰でだ


そしてすぐにリンを抱えると宙を舞っていた鞘を掴み、歩法を使って林の中に駆け込んだ



「た、達喜」


「どうした?」


走りながら、リンが話しかける



「どうして私を助けたの!?

私が死ねば!村の平和だって保証されたのに!」


「…………」


「覚悟だって決めたのに!エルを死なせたくないから!私が死ぬって決めたのに!!」


それは彼女が選んだ最もみんなが幸せになる方法


10歳の少女が必死に悩んで、覚悟して決めた選択


それはきっと達喜にはできない選択


だから、達喜は理解しようとしなかった


だが



「お前がエルを死なせたくないように、俺だってお前を死なせたくないんだよ!」


「っ……!」


「いいか、死にたいなんて言うな!何が何でも必死に生きろ!事故犠牲で何もかも片付けてんじゃねぇよ!」


「でも………」




「ここからは文句なんて言わせない

言いたいならYESかNOで答えろ

生きたいなら俺と一緒に来い!」


「……生き、たい……生きたい、よぉ」


ボロボロと、リンの目から涙が零れる



達喜はため息を一つつくと



「YESorNO?」



「……YES」

涙を拭い、ニコリと笑ってリンは答えた




まだまだ廻る、運命の歯車

何人たりとも、止めることは出来ず

そして進む、時の針

毎度毎度見てくださっている優しい方、最新作、如何でしたか?


今回はバトルの要素が強め


2.5話とか言ってましたが、ブログの方に公開中です(1しかできていませんが)



さて、今回の話で少しいろいろな語句が出てきました(神の〜やら千の〜など)

その点はブログの方に説明していこうと思っています(笑)



ちなみに3ー2の夕日の記述は番外編1を見れば分かります



それでは、今回はこの辺りで筆を置かせて頂きます♪



また皆さんと会えますように








ラノベのあとがきっぽくしてみた(殴

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