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第2話 ようこそ異世界へ



女神に異世界へと送られ、ふと気が付けば草原に横たわっていた。


俺は起き上がり辺りを見渡す。

草原や木々が生えている以外は何も無い場所だった。


本当に異世界に来たのだろうか?


さすがに元いた場所とは違うのはわかるけど、異世界に来たという実感は全然ない。


せめて人や建物を見れば実感が沸くんだろうけど・・・


さて、これからどうしよう・・・


と途方にくれていると、足元に袋が置いてあることに気が付いた。


中をあけてみると、多少のお金らしき物と、これは回復薬かな?と、三角形の手のひらより少し小さいチーズらしき物が5つほど、そして最後に手紙が入っていた。


手紙を開いて読んでみると・・・


『ハロー、Dearマモル君!君の愛しの女神アフォーディアさんですよ!』


と書かれているのを見た瞬間に、くしゃくしゃにして捨てたくなった・・・

が、なんとか抑えて続きを読む事にする。


『さすがに、何も持たずに異世界に放り出すのも酷だし、そのままだと2,3日でまた戻って来ちゃいそうで面倒・・・ごほっごほっ・・・じゃなくって、可哀相だから、必要最低限のお金と怪我した時の回復薬と小腹が減った時ようのチーズを渡しておくね♪』


このアホ女神は!

本心ぶっちゃけすぎだし、手紙で咳払いってなんだよ!

しかも、誤魔化しきれていないし!


『アホ女神じゃなくて、アフォーディアだってば!』


おおう!

俺がアホ女神という事を予知していたのか?

手紙で反論してきやがりましたよ?


『ってわけで、異世界生活頑張ってね~!これ以降、一切君の事に関与する事も気にかける事もないけど、応援してるからね~!チャオ~!見目麗しき女神アフォーディアより』


関与もしない気にかけもしないとか・・・


応援する気ゼロじゃん!!


そして最後の文面にもイラッとした俺は、手紙をくしゃくしゃにして遠くにポイした。


ふぅ~、これであのアホ女神と関わった痕跡は何もないだろう。


と思っていると、俺が手紙を投げた方向から何かがやってきた。



狼だった・・・

狼の群れだった・・・


しかも俺が知っている狼より大きいし、凶暴性が高そうだ・・・

これがマンガなんかに出てくる魔物というやつか?


俺の投げた手紙が狼に当たってしまったらしい・・・


どうしよう!


そういえば戦い方を聞いていない!

俺は戦えるのかすら知らない・・・

そして武器もないじゃないか!


そうだ!

さすがにあのアホ女神と言えども、武器くらい袋に入れてくれているだろう?


急いで袋をガサゴソ探したが、入っている様子はない・・・

その代わりに、もう一枚の紙を見つけた。


『あ、ちなみに・・・武器、入れ忘れちゃった!許してね~、てへっ♪』


もう速攻でビリビリに破きましたよ。



そうしている内に、徐々に狼が距離を詰めてきている。


やばいやばい!

どうにかしないと!


あ、そうだ。

異世界なんだし、魔法はどうなんだ?


俺は直ぐに魔法を試そうとしたが、魔法の使い方がわからない・・・


もう無我夢中で、火!火よ出ろ!と心の中で叫んだ。


すると手の平の上にボワッと火が出た!


やった火が出た!


と喜んだのもつかの間・・・


火が出たのはいいが、その火はライターの火くらいの大きさしかない・・・


どうしろと!!!


とりあえず、さっきビリビリに破いた手紙を燃やしておいた。


やばい、どんどん近づいてきている!


どうしようどうしようと、右往左往していると、狼たちが俺に向かって一気に襲い掛かってきた。


俺は意味が無いと思いつつも、頭を手で抱え込んでその場に蹲った。


ああ、1年所か1日も持たずにまた死ぬのか・・・


と諦めていたのだが、いつまで経っても狼が襲ってくる事がない。


おかしいなと、様子を見るために顔を上げてみると・・・


そこには、一人の男が立っている。


その男の前には、俺に襲い掛かろうとしていた狼の群れが全部横に倒れていた。


しばらく頭の理解が追いつかず、呆然とその男を眺めていると。


「ヘイ、ブラザー!大丈夫かい?」


その男がこちらに振り向き声をかけてきた。

かなり筋肉質の大男で、髪型は金髪のリーゼント風で前に伸びた前髪はボサボサにしている。


その男が俺に近づいてきて、手を伸ばして起こしてくれる。


「あ、あの・・・貴方が助けてくれたんですか?」

「ああ、そうだぜブラザー!ブラザーがピンチになっているのを見つけて、飛び出したんだぜ!」


見た目から喋り方から、特徴がありすぎて困惑してしまう。


「あ、ありがとうございます。ところで、何で俺の事をブラザーと呼ぶんですか?」

「ブラザーはブラザーだぜ!よくわからんが、ブラザーにビビッと来たんだぜ!」


・・・え?


この人、いろんな意味でやばい人なんじゃ・・・


そう思った俺は、少しだけ腰が引けてしまった。


「OH、そんなにビビらなくていいんだぜ!おっと、自己紹介がまだだったな」


なんていうか・・

かなり自由な人なんだな・・・


「俺の名は・・・カノウ・ジョーだ!」


・・・はっ?

い、今なんて?


「す、すみません、よく聞き取れませんでした。名前をもう一度教えてもらってもいいですか?」


「OH、今度こそちゃんと聞いておけよ!俺の名は・・・カノウ・ジョーだ!」


ま、まさか・・・


「あ、あの、つかぬ事をお伺いしますが、俺と一緒に付いて来るとか言ったりしませんよね?」

「それは愚問だぜ、ブラザー!さっき言ったじゃねえか、ビビッと来たってな!もちろん付いていくぜ!」


OH NOOOOO!!


あんのアホ女神がああああああ!


やらかしやがったなあああああ!


彼女を付けるって言っていたが、カノジョじゃなくてカノウジョーじゃねえかよ!!!


このくされ〇〇〇女神があああああああ!!


(ちょっと~~~!!何勝手な事言ってくれてるのよ!〇〇〇なんかじゃありませ~ん!)


おわっ!

なんだ、急に声が頭の中に響いてきた!?


(私です~、愛しの女神アフォーディアです~!)


なんだどうしたんだ?

これはどうすればいいんだ?


(君の頭の中に直接話しかけているから、考えている事がこっちに伝わるよ~)

(こうか?なんで急に話しかけてきたのさ?俺に関与しないんじゃなかったっけ?)


(サボっておやつを食べながらベッドにころが・・・職務に勤しんでいたら物凄い不快を感じてね、君を見たらまたアホ女神とか言っているじゃない!しかも〇〇〇とかまで!私はアフォーディアです~!)

(今さらっとサボってたって言ったな?誤魔化しきれてないし)


(言ってませ~ん!)

(言ったよ!っていうか、カノウ・ジョーってなんだよ!俺は彼女が欲しいって言ったんだよ!)


(え?同じでしょ?)

(うがああああああ!!全然違うだろがあああああ!!しかも魔物がいるところに転生させておいて武器を忘れるとか、どれだけアホ女神なんだよ!)


(あ~、またアホって言ったぁ!それにちゃんと手紙を残しておいたでしょ?テヘペロッって)

(ペロまで書いてねええええ!しかも書いたから許される問題でもねえ!!ああ、もうこうなったら何度でも言ってやる!このアホ女神!アホ女神!「アホ女神があああああ」)


頭の中で叫んでいるつもりが、思いっきり口に出して叫んでしまった。


すると俺の目の前に魔法陣が現れて輝きだした。


(え?え?ちょ、ちょっと何!?)


するとアホ女神がうろたえ始めた。


(ちょ、ちょっと待ってよ!い、いや!いやあああああああああああああ)


アホ女神の叫び声に何事かと思っていると・・・


その光出した魔法陣から、当の本人が現れた。


「はっ?」

「え?え?え?」


俺とアホ女神は、二人で呆然としていた。

その間、カノウ・ジョーは何か知らないけど、次々に変なポージングを決めているだけだった。


「ちょ、ちょっと~!どうしてくれんの~!?私が召喚されちゃったじゃない!」

「はっ?そんなの知らんがな」


といいつつ、俺に召喚魔法が使える事を思い出していた。


「そういえば、俺に召喚魔法を使えるようにしていたんだったっけ」

「こんな事の為に使えるようにしたわけじゃないよ~!」


「本当だよな・・・こんな使い道のないアホ女神が召喚されるくらいなら、まだ犬や猫の方が可愛さに癒される分ずっとよかった」

「ちょっと、私を畜生と一緒にしないで欲しいんですけど~!私の方が何倍も役に立つしぃ!」


「犬・猫を畜生と呼ぶのは止めてもらいたい!そして犬・猫とアホ女神が一緒?はっ!それこそ片腹痛い!犬・猫とアホ女神が一緒など、犬・猫に失礼だ!」

「むきぃいいいいい!じゃあどれだけ私が役に立つか、一緒に付いて行って証明してあげるよ!」


「おお、望む所だ!やれるもんならやってみな!」

「ふん!後で、愛しのアフォーディア様なくては生きられません!ってなっても知らないんだからね」


誰がそんな事言うか!


・・・

・・・・・・

・・・・・・・・あれ?


ちょっと、待って!


なんでアホ女神まで俺に付いてくる事になってるんだ?


あれ?


何がどうなって・・・?


・・・・・・


もう、どうでもいいや・・・


たった1年しかない異世界生活、充実して過ごす事が出来るのかなぁ・・・



っと、カノウ・ジョーをほったらかしにしていたのを忘れていた。


「あ~っと、カノウさん?すみません、ほったらかしにしてしまって」

「いや、何か取り込み中だったみたいだからな。気にしてないぜ!それと、俺の事はジョーでいいし、敬語なんて堅苦しい事はしなくていいんだぜ!」


白い歯をキラーンと光らせながら、サムズアップをしてくるジョー。


「ああ、うん、わかったよ。俺はマモル、宜しくジョー。それとついでに紹介しておくけど、これはなんだか知らないけど、付いてくる事になったアフォーディア。頭はアレだけど、よろしくしてやって」

「ちょっと、これとかあれとか酷くない?紹介するならちゃんと紹介してよ~!」


「ヘイ、頭はアレな姉ちゃん、これから宜しくだぜ!」

「いやああああああああああああ」


折角ジョーに紹介してやっているのに、文句をつけてくるアフォーディア。

それに止めを刺すジョーだった。



「どうしてくれんの?どうしてくれんの?私の可憐なイメージが台無しじゃない!」

「あ?そんなの知らんし。お前が彼女じゃなくてカノウ・ジョーを付けた事が原因だろ?」


もうこんなアホ女神を敬う必要性はどこにもない。

アホ女神のせいで前途多難だよ!


ああ、人のせいにしたって駄目な事くらいわかってる。

でもアホ女神のせいにしないとやっていけないんだよ!!


こんな事ばかり考えていても仕方がないので、とりあえずこれからの方針を決める事にした。


「それで・・・ここはどこで、これからどうしたらいいんだろう?」

「そんなの私は知らないよ」


「はあ?お前が俺をここに送ったんだろ?」

「私は人の魂を導く存在だからね。送った世界の事なんて知るわけないじゃん」


このアホ女神使えなさ過ぎ!

こんなの連れて行く必要があるんだろうか・・・?


「ここはフェルデル草原だぜ!ここから少し南に向かうと、アウラリオという町があるぜ」

「そうなんだ、ありがとう。ジョーが居てくれて助かるよ。じゃあ、とりあえずそこに向かってみよう」


本当にジョーが居なかったら、どうなった事やら。

アフォーディアに皮肉を込めて、ジョーに礼を言った。


「ちょっと、なんか引っかかるんですけど~?」

「気のせいだろ?アホ女神が使えないとか、そんな事は思っていないぞ」


アホの子のくせに思ったよりも勘がするどいな。


「ちょっと~!またアホって言った!」

「そもそもお前の名前長すぎるんだよ。アホの方が短いし言いやすいからいいじゃん」


「ちょっと人の名前にケチつけないで欲しいんですけど~!仕方ないわね・・・じゃあ特別に、可愛くディアちゃんって呼んでもいいよ」

「わかった、ディアって呼ぶわ」


後ろで「ちょっといきなり呼び捨て~?」と騒いでいるが、気にしないようにしよう。



ディアのことは放っておいて、街に向かうべく歩き始めた。


ジョーの教えてくれた方向に進んでいるのだが、何せ全くわからない場所にいるのだから、自分がどこに居てどこに向かっているのかもわからないという事が、こんなにも不安になるのだと初めて知った。


はあ・・・


「ヘイ、ブラザー!どうした、元気ないな?」

「はあ・・・そりゃあ元気もなくなるよ・・・」


ジョーが居てくれたお陰で、ある程度はなんとかなりそうだけど・・・


「はあ・・・とりあえず前向きに考えるしかないか」


前向きに考えるといいつつも、これまであった事を思い出し、現状を再認識する事でさらに落ち込み溜息が出てくる。


せめてアホ女神がチート能力をくれていれば・・・


「溜息ばっかりついていると、幸せが逃げちゃうんだよ~」


くっ、この!

元凶が勝手な事をいいやがって!


だめだ、だめだ・・・

異世界生活を満喫する為にも、いちいち気にするんじゃない!

過去の事を考えるよりも、初めて見る異世界の風景やこれから起こる事を楽しみにしよう 。


そう、自分に言い聞かせ、先を急ぐのであった。





お読み頂きありがとうございます。


他のメイン作品を書いている途中で書いているので

更新はそんなに早くは無いと思います。


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