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弥勒がここへ落ち着き、そろそろ一月になる。




弥勒の朝は夜明け前から始まる。


起きてすぐに身支度を済ませ、手水盥に水を満たし、鈴の部屋の前に置く。


その後、そこから3里ほど離れた山の祠へ走って行くのだ。たいてい黒犬ークロが付いて来る。


側に流れる湧き水を祠の前にお供えして、見晴らしの櫓に登り、日の昇るのを見て、そこからの一望で問題や怪しい気配を見渡す。


なにか不審な動きがあれば狼煙を上げる手はずになっている。


そうして、清水を竹筒に水を汲み、またクロとともに走って帰る。


滞りなく帰れたときは、たいてい鈴が起きて身支度を整え終わる頃だ。



裏の垣根を抜けたところで、一旦止まる。

朝出がけに汲んでおいた水で顔や手足を清めてから、鈴の部屋の前にいく。






ー弥勒、ただいまもどりました。


と外から声をかけると、ご苦労、と声をかけられ、板戸が開けられる。


板間をズルズルといざって、端近に来た鈴は、弥勒から竹筒を受け取り、一口飲む。


そして、朝の勤めに変わりがなかったか、不審な事や人はなかったかと聞く。


報告が終わるまで、クロは庭先にじっと座っている。




朝餉ですと、声をかけられると、弥勒に竹筒を返す。


「クロ、褒美じゃ」


と、前の日に取ってあった菓子の残りをクロに放り、パクッと上手に咥えるのを楽しそうに見やる。


クロはこれが欲しくて、大人しく待っているのだし、鈴はこれがやりたくてクロを連れて来いと言う。






「朝餉の場所までお運びしますか」


と聞くと、


「よい。自分で行ける。

弥勒も朝餉をもらってきなさい」


と拒まれる。


「朝餉が済んだら、馬じゃ。

楽しみだな、ロク。」


鈴に寄り添う弥勒の猫ーロクーをひと撫でする。


ロクは今ではすっかり鈴の飼い猫のフリをして、寝所番と朝の警護を担っている、らしい。



ロクは、ニャーアと鳴くと、さっと庭の木に登り、ちょうどよい枝の間に陣取り、弥勒を見下ろす。


ーあんたが食べ終わるまで護衛はまかせな、そう言っているように。


やれやれと弥勒は朝餉をとりにその場を下がった。





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