七
力の差は歴然だった。
戦を知る者とは、一旦命のやり取りを始めたら、血をすするがごとく、相手の命を奪うもの。
躊躇は、すなわち、自らの死を招く。
猛者揃いの精鋭部隊と奇襲部隊が集い暴れている。
たかだか、土地を荒らす賊風情とはわけが違うのだ。
鈴の周りに血まみれの屍が増えていく。
まるで、供物のように、捧げられた生贄のように、そして、まるで物のように、さっきまで人だったモノが積み上がっていった。
佐渡川はすぐに鈴のそばに走り、切られた足を止血しながら各部隊に指示を出し続けた。
この騒ぎは、大事にする前に撤収しなければならない。
ここ、国境での争いごとは、やっと同盟を結んだ隣の国との関係をあやうくしかねないのだ。
迅速に制圧、かつ、ひとりの取りこぼしなく討ち取る。
隣の国の間者がこの事態に気付く前に。
佐渡川が、鈴を抱えて立ち上がる頃、全ては終わっていた。
ーーー
国境の問題はこれにて一掃された。
姫を救い、国の頭痛の種だった問題は解決し、鈴は一躍英雄になった。
殿様から直々に礼を賜った。
親子ともども、その忠義天晴れと、褒め称えられた。
姫も、見舞いにわざわざ足を運んでくれた。
あの丘はなかなかの急勾配だった、よく転げたぞ、と、手の擦り傷を見せて、鈴に何度も礼を言ってくれた。
しかし、代償は計り知れない。
腱を切られた足では、傷が塞がっても、もう歩くことはできない。
少女の心に深く刻まれた恐怖。
代わりに得た誉れなど、何ほどのものでもない。
屋敷の奥に住まい、もう姫と過ごすこともなく、親兄弟の他に人を寄せ付けず、ひっそりと静かに生き、気づけば3年が過ぎていた。
佐渡川は部下に命じた。
鈴を助ける者を探せ、と。




