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番外編: 長女も大変です。

4番目に生まれた長女です。


鈴と弥勒は、どんな子育てをしてるのやら。



弥勒がどんどんヤンデレになっていくので、ここらで終了しないとダメかも(笑)




今年、十になった。


私には兄が三人、妹が一人。


その兄の一人、長兄が明日婚儀をあげる。


おめでたい日に備えて、今は家中がばたばたと準備に明け暮れている。


手伝いを、といえば、明日の主役である兄上より私たち兄弟姉妹に何もするなと釘をさされたので、皆、暇で仕方ない。


庭に植わっている梅と、猫と戯れている妹をぼんやり見ていた。





兄上が十六になったら、許嫁と夫婦になることは決まっていた。


許嫁となる方は、私たちも幼い頃からよく知っている姉様で、兄上よりも二つ年上。

でも、兄上は父上様に似て大柄なので、小柄な姉様はどうしたって年上には見えない。


姉様は年上であることを気にしているらしいけど、兄上はどこ吹く風で、


年齢それって、そんなに大事なことですか?

私には姉様が私の妻になってくれることが大事なんですが。」


としれっと惚気ている。


そう。


兄上は、姉様のこととなると何事も一大事。

いつもの穏やかで静かな佇まいが、他人から見たら少し崩れ、いつになくにこやかになり、なにやら肩のあたりに僅かに緊張が見られる。

ただ、この様子は、彼を知る者からしたらそれはたいへんな浮かれ具合で、ふだんの兄上とはまるで別人。


兄上の姉様に向ける気持ちは、私たちが考える以上に大きく深く甘い。



兄上は、姉様がこちらにいらっしゃっているときには一時も側から離れないから、夫婦になる前からすでにおしどり夫婦の佇まいに見える。


姉様にあれこれと世話を焼いて、風をも当てさせない甘やかしぶりで、正直、周りの者はその様子を直視していられない。


それは、もう、金平糖を口いっぱいに頬張って、ドロドロに甘くて、胸焼けしているような気にさせられる。





許嫁とは、親が決めた相手である。

でも、兄上にとってはそんなことはどうでもよいらしい。


初めてお会いしたとき、姉様を妻にと望んだそうだ。


姉様はのんびりとした話し方をする、優しい人で、私たち皆大好きだ。

目はトロンとしたたれ目で、ニコニコ笑うと、福の神様のような気がする。



姉様の名前は、くま、と言う。

なぜ、こんなにも柔らかな印象の姉様に男らしい名前の「くま」なのだろう?

どう聞いて良いのかわからないため聞かず終い。


でも兄上は、


「よいではありませんか。

くま。

美しく、良い名です。

姉様・・・いえ、妻がこの名を気に入らぬと言うのなら、私が名を差し上げても良いと思っていますしね。」


と、ニコニコ笑う。


いえ、それはやめたほうが、と口の中でモゴモゴと2番目の兄様が言っているのを、兄上は笑顔のまま足を踏みつけて「何か?」と言っていた。


長兄は、私たちの兄弟姉妹の中で一番父に似た穏やかな人柄で、弟妹にとても優しいが、怒らせると一本筋の通った母に似て、それはそれは恐い。

なにせ私たちは皆、足が悪く動きのままならない母よりも、兄上に育ててもらったようなものだ。

その兄上には、だれも逆らえない。






姉様は、この家にご用でいらっしゃると、兄上から想定以上に甘やかされるので、気恥ずかしく、ご用が済むとそそくさと帰ってしまう。


でも、兄上のことを大切に思ってくれているので、いらっしゃるときには、兄上の好物を差し入れて、皆さんでよかったら、と恥ずかしそうに渡してくださる。


兄上の手に渡すと、一瞬ではあるが、誰にも分け与えたくないという顔をする。



なんと言ったら良いか、とにかく、早く夫婦になっていただき、兄上のこの溺愛ぶりを見納めにしたい。

明日が待ち遠しい。


そう思っていたのに。







「あの子、貴方によく似てる」


「そうですか?

私なら、妻をもっと甘やかしますけど。」


「甘やかすって・・・」


「私には、貴女が大事で大事で、これほどにないほど愛おしいのです。

今考えたら、たぶん初めてお目にかかったあの日から、貴女を守りたい、ずっと背負っていきたい、この腕に包んで、温めて、何ものからも守りたいと、そう思ってきたのですよ。

それは今も変わりません。

ええ、貴女が何とおっしゃっても。

それに・・・」


「ああーっもういいから。」


真っ赤なお顔の母上様を膝に抱き上げて、額と額をつけて話す父上様。


母上様も、父上様の両頬を小さな手で包んで、


「私も貴方が大事」

と小さく呟いた。


父上様は嬉しそうに、母上様を抱きしめていた。




ーーああ、見ていられない。

金平糖が豪雨となって降ってきそう。






でも。


そうか、と納得する。


兄上が姉様を構う姿は、実は私たちにとってはあまり珍しい光景ではなかったことに気付いた。


なぜなら、実の父母がいつもこんな有様だから、夫婦とはこのようなものだと思ってそだっている。


特に。

兄上は、父上様に一番似ているから、父上様から母上様への溺愛ぶりはそっくりそのまま受け継がれている。


だからなんの疑いもなく、兄上の夫婦(仮)ぶりを見ていられるのかもしれない。






世間では、このように慕いあう夫婦は珍しいと私が知るのは、ずっとあとのこと。





今も目の前でやたら金平糖を降らせている父上様に、


「母上のように、素晴らしい女人になりなさい」


とにっこり笑って言われ、母上様の真っ赤なお顔を見るにつけ、これ以上同じお部屋にいるのは耐えられないと妹の手を引き、速やかに退室した。



私もいつか誰かと夫婦になるだろう。

その夫となる方とはどんな方かはまだまだわからないが、どうかお手柔らかにと願うばかりだ。


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