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五
4日目の朝。
武装していない、殿様の側近が二人してやってきた。
1人は鈴の父、佐渡川だった。
交渉は翌日。
国境の丘でと決まった。
交渉の場に、姫と鈴も連れ出された。
後手に縛られ、後方に立たされた。
幼い少女ゆえ、足元は拘束されなかった。
それが幸いした。
鈴は、この丘の向こうに窪みがあることを知っていた。
父に何度か馬で連れてきてもらい、この丘での武勇伝を聞いたからだ。
父は戦となれば参謀だ。
武装している者を配置しているにちがいない。そう予測した。
ーもう時がない。
ー姫を救うには、これしかない。
交渉の最中、自分たちへの注意それた瞬間を狙った。
父の目を見た。
うなづいた。
ー今だ。
「この役立たずめっ影武者が聞いて呆れるわっ」
と姫に罵声を浴びせ、そろいの着物を着る対の少女を容赦なく蹴り飛ばして、坂を転がり落ちるのを冷たい目で見下ろした。
その場にいた者はみな呆気に取られ、動けなかった。
ーこれで一先ず、姫様は無事だ。




