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三十八

「明日は畑仕事を手伝うてやったらどうだ?

そろそろ豆の収穫時期だろうから、楽しみにしている。

橋のほうでも人手が欲しいと聞こえてきたから、弥勒が力を貸したら皆の大きな助けとなるだろう?

そうそう、あの里山の田んぼで、稲の世話も

、、、」



静かに話す鈴の目は書から離れない。


控える弥勒は跪いたまま、じっと聞いている。



どうやら一通り話を終えた鈴は、下がって良いと言った。


それを待って、弥勒は静かに口を開いた。



「明日はこちらのお屋敷で広次様とともに剣術指南をうけることとなりました。

また厨のほうでは薪が足りないとかで、裏の切り株を掘り起こすよう頼まれております。

橋の方は人足を村の若者と足軽の家が担うことで事が足りるそうです。


また、先日いただいた西の茅野様からの文に、お鈴様の足は、歩く練習を重ねれば、立てるようになるかもしれないと。


ゆえに。


わたくしがその練習のお手伝いをいたします。」



鈴は驚いて、ここしばらく見る事ができなかった弥勒の目を見た。


あんまり大きな目で見てくるから、目玉が転がり落ちるのではないかと心配になる程だ。


弥勒はにっこりと笑った。




鈴はすぐに気を取り直し、書を閉じた。


「だが、あの野菜を運びにくる親子に手伝いを約束したのだが。」


「はい。私はその後でお断りいたしました」


「でも、あのナツメとやらは」


「先だっての薬草は、堀川様の馬のために必要だったので案内役をお願いしましたが、それだけです。

私はそれでなくとも忙しいのです。なにせお鈴様の足ですから」


「もう足ではない」


「では、それを証明して見せてください。歩く練習をして立てるようになったら私が必要ないと言えるでしょう?」


「、、、わかった」



「でも、あの桜の前でお話ししたように、私はいつでも貴女様を背負ってまいりますので、どうぞご安心ください」



いつからこんなにやり込められるようになったのだろう?


悔しい気持ちもあるが、だが今はなにより、冷え冷えとした心持ちが急に温まった。


また立てるかもしれないという希望も出てきた。


弥勒が下がったあとも、鈴はしばらく弥勒の言ったことを思い出して、一人微笑んでいた。





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