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三十三

もうひとりのお父さん、お疲れさまです。

堀川も悩んでいた。


日差しも柔らかな昼下がり、自室の前庭に降り立ち、ぼんやりと其処此処に咲く花を見ながらため息をついた。



堀川にとって同盟国の佐渡川とは、主君は違えど考え方の似た、互いを認める仲だと思っている。


今は、鈴という、人質という名の大切な預かりものを間に、よい関係を築いているつもりだが、此度の長野の一件で鈴を危険にさらしてしまった。


また、長野の一派を長らく泳がせていたが故に、このような内乱へと発展させてしまったのは、ひとえに自分の甘さ故だと、佐渡川にも家臣にも、さらには主君にも詫びたい気持ちである。



すこしは長野を抑える布石になろうかと娘=お葉を長野の次男に嫁がせたが、なんのことはない。価値も何も、なにほどの者でもないとあっさりその存在を切り捨てられ、結果、あっと言う間に夫をなくさせる羽目になった。



添う相手をきめるときに、お葉に幸せをと願いはしたが、先に、鈴の武士の娘らしさ、戦国の女の生き方を目の当たりにしていたがために、お葉にもそれを求めてしまった。


幸いにして、お葉は鈴からの影響を濃く受けていたため、今も気丈に振舞っている。

また、本来なら哀しいことだが、「上手く命を諦める」というのも、どうやら理解しているらしい。


ーーーわが娘ながら、知らず戦国の世を生き抜く女の強さを身につけたものよ。

次に嫁ぐ先を決めねばならぬが、はてさて、、、






堀川は離れの方を見やり、またため息をついた。




あらから広次は、暇さえあれば弥勒につきまとい、西国の話や寺で育った話、鈴から聞いてずっと憧れていた朝駆けの話を繰り返し聞きたがった。


弥勒は口の軽い者ではないから、ゆっくり言葉少なに話す。

その所作も、口うるさい側仕えとは違い新鮮なのだろう。

身分が上であるのをいいことに、断れない弥勒の元に来ては長居するのである。



それがまた悩みの種なのだ。



基本的には弥勒は鈴の近くに控えているため、端からみれば、広次が鈴の元に通いつめているように見えるのが悩みどころなのである。





佐渡川に使者をだしたが、返事はまだない。


早く首尾を整えなければ、周りの者が、そんなに執心ならば、広次と鈴を娶せてはいかがかと、差し出口をしてくるだろう。




ーーーだから、急ぎ弥勒を養子にするか、また他の家臣に頼んで養子にして、鈴と夫婦にと思うのに、あの男は、何をグダグダと悩んでいるのか。


こんなに急ぎ考えねばならないというに、返答が遅いとは、それでも同じ娘を持つ父親か?


佐渡川だって鈴の相手は弥勒だと思っているだろうことは、この儂でさえ分かるというのに。まったく、、、







「広次を呼べ」


堀川が命じ、すぐさま庭先を回って広次が顔を出した。


「お呼びにございますか、父上」


「埒があかぬ。

お前が使者となり、急ぎ佐渡川に面会せよ」





自分だって、娘の婚礼に失敗しているのだから、父として大きなことは言えないのだが、今はそれは脇に置き、すぐさま広次を使者に立て、同盟国への街道を急ぎ行くように準備を進める。


広次は、なぜ自分が使者なのか疑問に思いながらも旅支度を進めた。





広次が、堀川の元によい返事を携えて帰ってくるまで、堀川の悩みは続くのであった。







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