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14か15になったころだろうか。

弥勒を貰いたいという話がまいこんだ。

それは和尚も弥勒も驚くほどあちこちから手が上がっていた。


働き者で正直者、身体が丈夫とくれば、下男や足軽に持ってこいだからだろう。


だが、そんな中で、和尚も思わず唸ったのは、この国の殿様の腹心、佐渡川氏の三女の側仕えとして召し抱えたいとの話だった。


佐渡川氏の三女、鈴は、足が悪く歩けない。


だから、いざという時、彼女を背負って逃げることができる力自慢で忠義者の男を探しているという。



訪ね廻った先々で皆に言われたそうだ。



ーそりゃあ、この国では弥勒ってやつが一番さ。



ーーー



弥勒が鈴の側仕えとして召し抱えられる話はすぐに広まった。


それから屋敷に行く日まで、弥勒に別れを告げにくる者、餞別を持ってくる者が後を絶たなかった。


いつも子どもの面倒を見てくれたお礼に、と、小夜の母からは着物を贈られた。

死んだ旦那の古着を仕立て直したんだ、と、恥ずかしそうに言われた。

弥勒は嬉しくて何度もお礼を言った。


力仕事を手伝ってやっていた老夫婦からは、わらじを何足も贈られた。

細かく丁寧に編まれたわらじは足にぴったりだった。

孫の旅立ちだなと言われ、照れた。


太助は「みろく」という字を、紙にびっしりと書いて持ってきた。

習ったばかりの字はたまに左右が逆だが、弥勒を慕う気持ちが紙いっぱいに溢れていた。



極めつけは和尚だった。


誰にも言うなと、悪戯っぽく笑い、朱塗りの長槍を弥勒の前に置いた。


ー自分が若い頃は人に説教なぞできぬほど暴れ者じゃった。その頃の愛用品だが、負け知らずの槍ゆえ、弥勒を守ってくれるだろう。


クスクスと笑いながらも、目に涙をため、知らぬ間に大きゅうなった、さびしくなるのう、と、弥勒の頭を撫でた。


弥勒は、和尚の前でわんわん泣いた。

親はなくとも、和尚は親以上だった。





夜更けに寺中の仏像を拭き上げた。


そうして、弥勒菩薩のもとに正座し、これからどのような世になろうとも和尚やこのあたりの大事な人たちが平穏無事であるよう祈った。


夜明け、弥勒は寺を出た。

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